第52話 対魔将軍戦
すぐに、リンとエリーシェを連れて砂漠遺跡へと向かった。
このまま魔王軍が攻めてくれば街に甚大な被害が出る。その前に何とかしなければならない。
リザードの手綱を握って砂丘を走らせる。
しばらくすると、地平線の先に黒々とした集団が見えてきた。
「ご主人様、あれは……」
「アンデッドの群れだ」
スケルトン兵、ゾンビ兵など、武装したアンデッドが駐屯している。
その先頭に、ひときわ目を引く黒い甲冑の騎士がいた。甲冑からは紫の炎が迸っており、顔はない。スケルトンの馬を従え、軍を率いている。
「リンとエリーシェはここにいろ。俺が話をつけてくる」
「はい、お気をつけて」
「何かあったら、すぐに助けに行きます!」
「大丈夫だ。俺一人で何とかする」
相手に声が届く範囲にリザードを止まらせる。話の通じる相手だといいが、と思いながら俺は言った。
「お前が魔王軍の大将か?」
「いかにも」
黒騎士はどこから声を発しているのかわからないが、低い男の声で言った。
「我が名は魔騎士ヘルダー。魔王様の命により、この世界を蹂躙しに来た。この先には交易都市ディバンがあるはず。まずはそこを陥落させる」
「ちょっと待ちな。そんなことより、俺と一騎打ちしないか?」
「一騎打ち?」
ヘルダーは疑問形で返した。敵の数は少なく見積もっても千はいる。まともに戦ってもこちらが消耗する。
「そう、一騎打ち。この先には強い冒険者や騎士が多くいる。俺程度に勝てないと指揮官として兵を率いていくのは無理だぜ?」
「ほう、お前が我の相手をすると言うのか、面白い」
「その代わり、負けたら魔界に兵を引いてもらう。お前が勝ったら、これをやろう」
アイテムボックスから虹色に輝く宝、貴金宝石を取り出す。
「これは売れば高値がつく貴重なものだ」
「ほう、いいものを持っている。魔王様への献上品に相応しかろう」
ヘルダーは剣を抜いた。禍々しくオーラをまとった黒い剣。
「よかろう、その賭け、乗ってやる。負けても文句は言うなよ」
夕陽の差す砂漠。俺とヘルダーは対峙し、砂の上に長く影法師を落とす。
――来る。
ヘルダーが騎馬に乗って向かってくる。そこに、ブラックリボルバーの銃口を向けた。
『マグナムブラスト!』
銃声が鳴り響き、徹甲弾がヘルダーの鎧にぶち当たる。
しかし、弾かれる。徹甲弾程度では魔将軍は倒せない。
ヴン、と魔剣が振るわれる。俺はそれを左にかわし、回り込む。
炎晶石弾!
弾丸は鎧に当たり、炸裂するが、相手は無傷。
バックステップで距離を取る。
「ほう、貴様、面白い武器を使う」
ヘルダーはこちらに向き直り、スケルトンホースをいななかせる。
そのまま突っ込んでくる。
氷晶石弾!
氷の弾頭をヘルダーの右手にヒットさせる。弾は炸裂し、剣を持つ手を凍らせる。
「むん!?」
そのまま剣を振るうヘルダー。しかし、手が凍っているせいで狙いが定まっていない。
軽くかわし、攻撃の隙をつく。
『聖弾・マグナムブラスト!』
ダンデからもらったなけなしの銃弾。それを相手の頭、顔のない部分に向けて放つ。
当たると同時、相手の体が光に包まれる。
「ぐ、あああああああああ!」
聖弾の効果はアンデッドに対しては抜群。ヘルダーは落馬し、その魔力も弱まっていく。
「がああああああああっ!」
鎧も剣も弾け、紫の幽体だけになったヘルダーが吠える。
「よくも、よくもこの私を……」
「勝負あったな。約束通り兵は引いてもらうぜ。あんたも騎士なら、わかってるよな」
「おのれ、認めぬ、認めぬぞ……」
幽体になったヘルダーとアンデッド兵たちは遺跡から魔界に戻っていく。
ぞろぞろと動くアンデッドたちを背に、俺はリンとエリーシェの元へ向かう。
「勝ったのですね」
「ああ」
「クレドさん!」
エリーシェが駆け寄って抱き着いてくる。
「これで、一旦平和は守られた。だが、まだ安心はできないな」
「いえ、クレドさんが無事で良かったです」
エリーシェがぎゅっと抱き着く。リンも、俺の右手を取って体を預ける。
「早く帰ろう。皆に報告しなければな」
ヘルダーを倒したことで俺のレベルは40まで上がった。この分ならブロンズかシルバーくらいの冒険者にはなれたんじゃないかと思う。
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