第7話
次の日、先に目覚めた紅は、奏多の布団が散らかっていたのを見てそっと直し、外に出る。外はまだ日が昇ったばかりで肌寒く、人通りは普段に比べてもかなり少なかった。
紅は、歩道を歩きながら手を握っては開くを繰り返す。そして、誰にも聞かれていないところで呟いた。
「過ぎた力は身を亡ぼす……柊くんは、僕が絶対に守るんだ」
その後、少しだけ風にあたりながら涼んだ後、部屋へと戻る。まだ奏多は寝ており、起こすことのないようそっと座った。
♢♢♢♢♢♢
「おはよう、柊くん。」
「ふにゃ? ……ああおはよ、紅」
まだ起きたばかりで意識がふにゃふにゃしている奏多に対してそっと水を差しだす。奏多は、差し出された水を受け取り、ゴクッゴクッと一気に飲み干した。
「ぷはーっ! 一気に目が覚めた気がするな」
二人が完全に覚醒したところで、二人は今日の予定について話始める。
「今日は……D級迷宮に行こうと思うんだ」
そう話を切り出したのは奏多だった。奏多の主張は、E級迷宮をクリアしたのだから、D級迷宮に行ってみてもいいのではないかとのこと。その主張に対し、うーんと唸ってから紅はこう返した。
「……まあ、それもありかもね。僕たちの実力を測るって面でもいいことだろうし、しっかり逃げ道だけ確保しておけば……うん、大丈夫そうだ」
二人は、早速本部へと向かう支度を始める。いつもの荷物を背負って、服を着替える。近めの宿が取れたので、本部は歩けばすぐだった。
「E級の迷宮よりもD級の迷宮の方が近いんだな。これなら、あそこ通ってすぐ着く。早く行こうぜ!」
二人で最初に迷宮に潜ったときと同じように資料をざっと集め、迷宮の位置を軽く確認してから目標を定めた。今回向かうのはD-3迷宮。以前まで行っていたE-12迷宮よりも近く、交通の便もまあまあいい場所だ。
今までに行ったことのあるD級迷宮はすべて星夜たちがモンスターを倒して俺は薬草採取とか素材集めしかしてこなかったから……とても楽しみだ。
♢♢♢♢♢♢
「ここが……D級迷宮か……」
今、俺たちはD級迷宮の入り口に立っている。入る前に再び覚悟を決め、足を迷宮へと踏み入れた。
迷宮の中は、一見E級迷宮と特に変わりはないように見える。E-12迷宮と同じ平原の迷宮だから余計にだ。しかし、E級の迷宮と明らかに違うのが、魔物の量だ。入って数分も経たないうちにぞろぞろと魔物が周囲に集まってきている。
「ざっと数えて7体……ちょっとまずいね、どうする? 柊くん」
「いや、これくらいならいけるはずだ。分断して一体ずつ素早く処理していくぞ!」
魔物一体の強さというのはそこまで大きく上昇しているわけではない。なんならほとんど一緒と言っても過言ではないほどだ。しかし、単純に数が大きく増えるのと、連携をしてくるようになる。それが、星夜についていっていた椿には気づくことができなかった。
「ふっ! っとくぅっ!」
一体のゴブリンを攻撃して生まれた硬直を狙ってか、ほかのゴブリンが攻撃を仕掛けてくる。もう一本の短剣で応戦するも、態勢を整えきれておらず、若干押されている。押し切られていないのはレベルによる基礎能力の影響だろう。
「危ない! 《火球を顕現させ目の前の敵を焼き払え!》『ファイアーボール』!」
紅は、奏多が押されているのを見て、
紅の魔法は、いつもなら倒し切れるであろう攻撃だが、
「ごめん! 助かった!」
「それは後! 一旦集中!」
すぐに次のゴブリンと戦いながら、紅へと感謝を述べる。しかし、二人とも……特に、紅は段々と対処できる
「はっ、はぁっ、はぁっ……一旦っ、離脱ッ! 『瞬閃』!」
まだまだ現れてくる魔物を見て、さすがにまずいと判断した奏多は、移動と攻撃を両立させることのできる技を発動して紅を回収し、その場を切り抜けた。そして、すぐさま迷宮の外へと出る。
「なんっだよ……あのモンスターの数……」
そう、D級迷宮の特徴はE級迷宮と変わらない強さのモンスターをE級迷宮のときの何倍もの速度で生み出すことができるという点なのだ。一体一体に時間をかけているようじゃD級迷宮を抜けることはほぼ不可能と言ってもいいだろう。だから、実力が圧倒的でない場合以外はパーティを組んで攻略するのだ。
しかし、二人でパーティを組んでいる奏多と紅にとって、一体一体は容易に対処できても物量で押されてしまう。それを覆せるだけの実力がまだ備わっていなかった。
「紅! レベルだ、レベルを上げよう! もっと強くなって必ずリベンジに来よう!」
奏多が、そう宣言したあと、二人はその足でE級迷宮へと向かった。
そして、それから一か月が経った―――
♢♢♢♢♢♢
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無能がいきなり最強に?~ある日手に入れたスキルが最強だった件~ 辛味の視界 @yozakuraice
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