よくある転生モノかと思ったのですが、本格的な知識で書かれた作品で驚かされました。
前半に出てくる紙の作り方から印刷技術、さらに作成した本を売るまでの流通など経済を絡めて考えているのが凄い。
また、特筆すべきは洗練された文章だと思います。
言葉選びが上手いというのか、読みやすいけれど印象的な文章で不思議な感じがします。
この文章が世界観にも合っており、独特な雰囲気があります。
少ない文章なのに大事な情報は伝わる、お手本にしたい文章だと思いました。
レビューを書いている現在は30話まで読んでおり、まだ前半ですが盛り上がるバトルシーンや日常シーンの配分なども巧みで楽しんで読めます。
この先も楽しめる内容であることは保証できる作品です。
まずは1話を読んで貰えれば、この物語がこれまでの転生モノと一線を画していると分かるはずです。
主人公ジェオの転生前はとある国の第二皇子。継承権争いに敗れて追い詰められ、自刃の際に彼が思ったのは己の不甲斐なさ。そして自分を取り巻く者たちへの懺悔でした。
概ねの転生者は個人の後悔をバネに「やり直し」ますが、ジェオの根底にあるのは立場ある者としての後悔なのです。
どうです?面白そうでしょう?これが実際面白い。
チート能力も女神ではなく、意識世界で触れ合った他者の人生から得た技術や知識というのが斬新ですし、派手な戦闘とモノづくりパートも著者の工夫が盛り沢山。サラリとした描写の中に深い設定が隠れています。
これが上手い。否、旨い。
古風な文体の一人称なのに舞台は西洋風世界。この感覚は他では味わえないオリジナリティです。
とにかく1話。取り敢えず2話。どうせならイッキ読み!
是非ご一読下さい。
主人公の一人称で進められるストーリーにおいて
その主人公のキャラクター性を最も顕著に表すのは地の文だ。
本来なら言動や行動によって発揮されるキャラクター性だが
練られた一人称においては地の文そのものがキャラクター性を発揮する。
主人公が使う少々難しい言い回し等々が、主人公の能力、行動に強い説得力を持たせる。
それは同時に読者に強い納得感を与える。
つまり違和感を感じさせないのだ。
設定がごく自然に主人公を物語っている。
また出てくる登場人物のキャラ立ちが素晴らしく上手い。
これも作者の文章力のなせる技だろう。
キャラクター各々の行動や言動を読者にすんなりと受け入れさせている。
ここでもごく自然に設定がキャラクターを物語っているのだ。
物語が設定を語り、設定が物語るので、文章力の高さも相まってグイグイと読み進めていける。
このレビューを読んで、少しでも読んでみようと思った人がいたらぜひ読んでみて欲しい。
好き、嫌いはあれど、読んで後悔する事は無い事だけは保証できる。
本レビューは本作品のネタバレをしないよう、書いているが
一点、作品の内容についての言及を許してほしい。
ドS師匠キャラは最高である。
最高なのである。