第2話

 とうとうやってきた。俺たちが今いる場所はE-12迷宮。


「ゴブリンの魔石五個……まずはゴブリンから探すか?」


「うん、それがいいと思うよ。後々焦らなくてもいいしね」


 ひとまず、ゴブリンから倒すことにした。平原の迷宮だからか辺り一帯が開けていて探しやすい。とても助かる。


「右に二体、左は五体。前に三体と一体が別々にって感じだね」


 視認できる限りではそれだけだ。後ろは俺たちが入ってきた門があるから誰もいないぞ。それにしても、人気ひとけがない。Eランクの迷宮なんてこんなもんか?最近はEランク冒険者でも上のランクのパーティに引っ付いて……っていうのが一般的らしいしなぁ……


「なら、まずは二体のところからいこう。一体のところは、少しもたつくと合流されそうだし」


 俺たちは周囲の警戒を続けながら右のほうへと進んでいく。大体10mちょっとくらいのところまでたどりついた。そこから俺たちは武器を構えて一気に飛び出した。一体なら奇襲でもよかったかもしれないが、ゴブリンたちは完全に向かいあっているわけではないもののお互いを見るような感じで座っていたため見つかる危険性が高いと踏んだのだ。


「はあああ!!!」


 まずは足を中心的に狙って攻撃する。俺が前衛を務めるということは、俺は二体分の攻撃を防御する必要があるというわけだ。まあ、そんな防御技術がない……わけではないが、回避の方が得意だし楽なのでしっかりと相手の攻撃を見て、回避してから一発入れるヒット&アウェイの攻撃方法を用いている。

 そして、生まれた隙に紅も槍で少しづつ攻撃を入れていくって感じだ。SPが増えるのかはわからないけど、今のままなら魔法は最後の手段っていうことになるだろうな。


「まずは一体!」


 足を削り、移動をしにくくしたあとはまず一体を倒し切ることに集中する。そして、二分ほどで一体を倒すことが出来た。あとは簡単だ。回避する回数が単純に二分の一になったのだから、攻撃できる回数も増えるというもの。ものの30秒ほどでもう一体も倒し切った。


「えっと……魔石の回収はっと。ここをこうして……取れた! 紅、そっちは?」


「僕もいけた。これであと三つか」


 魔石っていうのはモンスターの体の中に必ず入っているエネルギーの塊のようなもの。新たなエネルギー資源として確立されてるらしく、需要は尽きない。Eランクのモンスターの魔石なんてたかがしれてるけどな……


「じゃあ次は……一気に五体の方、行ってみるか!」


 さっきので大体ゴブリンのスピードとか、力の強さとかがわかった。これなら多分、五体相手でも行ける気がする。でもさすがに囲まれるとやばそうだから、双剣一本じゃ無理かなとも思う。ぶっつけ本番だけど……やってみようか、戦闘中の連続武器チェンジ。


♢♢♢♢♢♢


 ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりとゴブリンの群れへと近づいていく。集団でまとまって行動している。連携っていう概念がないのか、全員が前を向いているのでこちらには気づいていないようだ。なら、奇襲を仕掛けよう。


「(『武芸ノ達人』使用……一発がでかい武器っていったらこれだろ!)」


 紅には魔法の使用を頼んで、俺は足音を完全に消して走り出す。持っている武器は大剣。体と同じくらいの大きさだが、持って振ることさえできれば技術だけはついてくる。それが、俺の特異技能の力。


「ッ!!」


 声を出さないように気を付けながら全力で大剣を振りかぶる。振りかぶった大剣はゴブリンの脳天を一発で砕き、倒した。


「威力たっけぇ……でも真正面じゃ振れねぇな。っと、これしまって次はこれだ!」


 と、その瞬間に後ろから回避の指示が飛ぶ。すぐにその指示に従って横にずれると、後ろから火の球が飛んでくる。その火の球はゴブリンに当たると勢いを増した。そのゴブリンはなんとか火を消そうともがくが、倒すには至っていない。


「さぁて、行くぞ!」


 両手に短剣を構えて走りだす。相手の数は三体と炎上中なのが一体。炎上中は一旦置いておいて元気な方から、だな!


「おらおら、当ててみろよ! はっ!」


 避けていきながら攻撃をするヒット&アウェイ戦法。それに加えて今回は……


「おっと残念。『武芸ノ達人』使用!」


 双剣で攻撃を受けたとき、『武芸ノ達人』で新たに武器を生成し、頭上から落とす。視野がそこまで広くないであろうゴブリンなら気づくことなく食らう!


「はははッ! この能力は『武器生成』、作るだけなんだから持ってわざわざ使わなくてもいいんだよ! そんで追撃ィ!」


 落とした大剣を食らったゴブリンに、斧を創って持ち替えて追撃をする。これが、俺の戦い方。隙を作ってでかい一撃を叩き込む!


「あと二体!」


 まだあと二体とは若干距離がある。ということでピストルを創り出してパン、パンと一発ずつ発砲する。これで多少の隙ができる。から、片手剣を創って足を切り裂く!


「これで終わりだよ。オラッ!」


 炎上していたゴブリンに近寄り、鎌に持ち替え、切り裂く。もうほとんど瀕死状態だったからほぼ紅が倒したようなものだったな。これで、ゴブリン五体撃破だ!


「ふぅー……ごめん、最初で動けなくなって」


「いいって! 俺が魔法使ってって言ったんだからさ。もう動ける?」


「ああ、魔石の取り出し作業くらい手伝わせてよ」


 その後、俺たちは魔石を取り出す作業を行った。合計七個になったので、もうクエストはクリアだ。なら……


「目指すよな、次の層!」


 今いるのは一層、そしてEランクの迷宮は大体三層まである。Dランクは五層ある、といった感じでランクに応じて迷宮の規模も大きくなるのだ。そして、最後の層には迷宮主……所謂ボスがいる!ボスは大体迷宮のランクの次のランクのモンスターがなっている。基本的にはそのランクの冒険者が四、五人いれば倒せると言われてるな。

 ボスの魔石は同じモンスターの魔石よりも大きく、ボス魔石なんて呼ばれてたりする。その分金になる! ……実は、今のままだとあとちょっとでお金が尽きるからな。金を稼がなきゃなんだよ!


「そうだね、次の層に行くこと自体は僕も賛成だけど……ちょっと採集もやっていこうか」


 俺たちは紅のSPが普通に動けるくらいに回復するまで薬草なんかの採集を行うことにした。回復薬ポーションの原材料となる薬草に解毒薬の原材料になる毒草、珍しくはあるが食料にもなる野菜の種など平原、草原など草のある迷宮の一層は採集ポイントとなっている。ここは最下級の回復薬しか作れない薬草しか取れないから人気がないのだ。


「そういえば、Jobってどうなったの?」


「ふっふっふ、聞きたい?」


「あ、じゃあいいや」


「えぇー! 教える、教えるから聞いてー!!」


「あはは、ごめんって。聞く聞く」


「ふっふっふ……なんと、特異職業ユニークジョブの武芸ノ達人だ!」


 俺の言葉に?を浮かべる紅。


「技能名とおんなじ……ってこと?」


「そういうこと! 効果はねー……すごいぞ!」


 そういいながら紅へと冒険者カードのJobの詳細欄を見せる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Job:『武芸ノ達人』 Rank:Unique Level:1

Effect1:ありとあらゆる武器の効果を最大限引き出す

Effect2:Error

Effect3:Error


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……これもやばいのか」


 紅がつぶやく。それもそのはずで、まずはランク。特異なんてのは聞いたことすらない。そして、次は効果。一つ目もやばいけどあと二つあるってのもやばい。そして最後。Jobのレベルだ。普通のJobにはないものだ。つまり、これはJobのレベルが上がれば上がるほど強くなる……つまり、まだ伸びしろが大量にあるということに他ならない。


「これで、俺はもっともっと強くなる!」


「はーいそれはいいから採集してねー」


 立ち上がって夢を叫ぶ奏多を窘めるように言う紅。しかし、内心はめちゃくちゃ焦っていた。


「(やばい、やばすぎる……これもバレると色々面倒なやつ……すごいなぁ、柊くんは)」


 そして、数十分後……


「意外と夢中になっちゃった」


「そうだねぇ。でも結構集まったし」


「そうだな! ……それじゃあ、レッツゴー、だ!」

 

♢♢♢♢♢♢


読んでみて面白いな、と思っていただけたら、★3やフォロー、♡などよろしくお願いします! 更新の励みになります!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る