第3話

 二層へと進むためには二層へと続く特殊なゲートを探さなくてはならない。しかし、ここはすでに攻略されている迷宮なので門の場所は公開されているのだ。


「えっと……たしかこっちのほうだったはずだけど……」


 地図データを頼りに進んでいく。その場所まで大体あと5mというところで、急に門らしきものが出現する。


「うわぁっ! ってこれが……」


 なるほど、近づかないと見えない仕組みになってたのか。若干不安になってたけどそういうことならちゃんと調べることが大事なんだな。


「は、入るぞ……」


 奏多が先行して門へと足を踏み入れた。門の先には一層と似たような平原が一帯に広がっている。変わったところと言えば聞いていたことではあるのだが足元に生えている草が薬草などではなくすべて雑草になっていたことと出現モンスターにコボルトも加わっていることだな。


「コボルトかぁ……強さ的にはゴブリンと大差ないっていうけど、大丈夫かな?」


「まあとりあえず一体なら倒せはするだろ。ダミーでもやったしな。でも怖いのは複数体になってから、だよなぁ……」


 コボルトとゴブリンが違う点、それは数は少ないもののコボルトは連携をしてくるという点だ。人型の犬ということで仲間意識が強いのだろうか? その辺は詳しくしらないがとりあえず連携してくることを知識として知っている。だから、複数体以上のコボルトをゴブリンと同列で考えてはいけないのだ。


「おっと、お誂え向きにコボルト二体が近くにいるようだ。行ってみようぜ」


「うん、そうだね」


 俺たちは移動を開始する。モンスターの出現は迷宮内ならどこでも起きかねないので周辺の警戒を怠ってはいけない。そして、コボルトの近くまでたどり着いた。


「よし、じゃあいつも通り俺が先に行くから援護よろしく!」


「わかった!」


 そして、それぞれが駆け出す。その音でこちらに気づいたコボルトは持っていた棍棒のような武器を構えて奏多へと近寄る。


「連携するって言っても反応出来なきゃ意味ねーだろっ!」


 MAXスピードで敵の背後に回り込み、コボルトが奏多の方を向いたところでコボルトをジャンプで飛び越える。コボルトは俺と同じか少し低いくらいだったゴブリンよりもさらに低い。それくらいなら余裕で飛び越えられる。


「その棍棒、壊させてもらう!」


 自分に創り出せる最大の武器、竜剣へと持ち替えてJobの効果を発動する。竜剣の力のすべてを解放すると、SPが少しづつ吸い取られていく。その分、竜剣から感じられるパワーが増していくのがわかった。


「やっべ! はぁぁぁ!!」


 SPが吸われていくのを見て急いで武器を壊し、いつもの単なる鉄の双剣に切り替える奏多。武器がなくなったコボルトたちは素手で応戦しようとするが、素手では武器のリーチに敵わない。


「紅、今!」


「ハッ!」


 俺の掛け声で紅が飛び出し、最後の一突きを決める。これでコボルト戦、終了だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レベルが1上がりました。

戦闘経験を集計中……完了しました。戦闘経験に応じて能力値ステータスの上昇を始めます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 お、久しぶりに聞いたな。レベルアップの音。最初は迷宮にもつれていってもらえてたからレベルアップの音は聞いてたけど、最近は専ら薬草採取に専念してたからなぁ……これで俺のレベルは13か。


「俺レベル上がったぞ! 紅はどうだった?」


「僕も上がったよ。今は……確か15だね」


 うおっ、レベル負けてるのか……ちょっと悔しい。


「僕のSPがもっと多くて、もっと魔法が撃てたらレベルももっと高くて、いろんな迷宮に行けてたのかなぁ……なんてね。今は柊くんと会えたから全然気にしてないさ。僕も、柊くんに負けないくらい強くなるから」


「……おう!」


 それから、二人は二層の敵を相手に倒して魔石を回収する作業を続けた。そして、奏多のレベルが15を超え、紅のレベルが18に到達したとき。ある変化が起こる。


「魔法が……二発撃てる?」


 そう、魔法を撃てる回数が増えていたのだった。魔法の撃てる回数が増えた……ということは、SPの増加を意味する。普通の量のSPの持ち主であれば自然回復などで魔法を撃てる回数は変化するから一概に何発撃てるようになった! が目安になることは少ないが、SPの少ない紅だったからこそ気づいたことであった。


「モンスターを倒すとSPが増える……?」


「いや、レベルが上がれば、だと思う。レベルが上がったときに能力値を上昇を始めますって声が聞こえるでしょ? あれにSPも含まれてるんだと思う。もちろん、確証はないんだけど」


「そっか……なるほど。レベル上げ、ね。……おっしゃいくぞーー!!!」


 それがわかったならやることはただ一つ。モンスターを、狩りつくす!


♢♢♢♢♢♢


「っはぁ……はぁ……はぁ……はぁ……どう、だ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レベルが1上がりました。

戦闘経験を集計中……完了しました。戦闘経験に応じて能力値ステータスの上昇を始めます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれから約1時間ほど、現れるモンスターたちを次から次へと倒しまくっていった。体力的に持ちそうになかったからちょこちょこ休憩は挟んだけどな。そして、俺たちのレベルは俺が20、紅が21になっていた。


「っしゃぁ!! ようやくレベル20!」


「ふぅー……そろそろ限界かも……」


 もともと魔法使いで、最低限の体力しか持たない紅がついてこれたのはレベルアップで体力も向上していたからだろう。しかし、それももう限界が来てしまったみたいだ。二人がぱっと振り返るとたくさんのモンスターの死体が散らばっていた。


「これ、回収しなきゃだよなぁ……」


 モンスターの死体は倒されてから5時間が経過するか、魔石を抜き取られてから10分で消滅する。つまり、一番早いものでもあと4時間ほどはかかるということだ。その間はどうしても邪魔になるし、魔石はお金にもなるので回収を選択する。


「うがー……これの方がよっぽど大変だー!」


 叫んでみるが、反応はない。紅はもう死んだような目で魔石を回収していっている。これが終わらないと帰れないだろう。そのことがわかっているから文句をたれながら作業を続けていたのだった。


♢♢♢♢♢♢


「終わっ、た……」


 ばたり、とその場に倒れこむ。魔石を回収している間もモンスターは出現するので倒していった。すると、さらに死体が増えていくことに気づき、感情が乏しくなっていった。しかし、そのおかげで紅はもう一レベル上がったのだった。


「もう知らない。一層なんて全部無視して突破してやる。帰ろ、紅!」


「うん、そうだね。柊くん」


 調子に乗って狩りをしないという教訓を胸に刻み、二人の初めての迷宮攻略は幕を閉じたのだった。


♢♢♢♢♢♢


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