第二章闇の中へ④

 トラッド――[苦笑]して、

「ありゃ、また、行き止まりだ」


 [苦笑]しながら、トラッドは、[>分岐点まで戻る]を選択する。


 あれから“判定”や戦闘もなく、パーティは洞窟の中をさまよっていた。


(結構、複雑な洞窟だなー)


 そんな感想を『トラッド』が持ち始めた矢先、突然目の前に、大穴が口を開けているグラフィックが表示された。


[パーティの前に、クレバスが現れた。

 どうする?

 ①飛び越える

 ②回り道を探す

 ③諦める]


 トラッド――[苦笑]して、

「どうするったって、なあ?」


 ニオ――[苦笑]して、

「③は例外だとしても、ねぇ?」


 フェレス――“クール”に、

「しかたあるまい、飛び越えるか」


 リメア――[顔を曇らせ]ながら、

「迂回路は、ないのでしょうか?」


 トラッド――[普通]の顔に戻り、

「うーん。ぶらついてみた感じだと、

 なさそうだけど」


 リメア――[顔を曇らせ]たまま、

「できれば、身体系の“判定”は

 避けたいのですが……^^;」


 トラッド――[ニッコリ]と笑って、

「オレたちがフォローするから、挑戦してみてくれないか?」


 フェレス――“クール”に、

「俺“たち”とつけたのは、俺も数の内に入っているからか?」


 トラッド――[ニヤリ]と笑って、

「そのとーりっ!w」


 フェレス――[フッ]と笑い、

「仕方がないな」


 ニオ――[ニヤリ]と笑って、

「頼んだよ~~」


 トラッド――[ニヤリ]として、

「何だよ、失敗する気なのか?w」


 ニオ――[苦笑]して、

「いちおうね、いちおう(笑)」


 トラッド――[ニッコリ]と笑って、

「というわけで、どう? リメア?」


 リメア――[ニッコリ]と笑みを浮かべて、

「はいっ! 失敗したら、

 フォローをお願いしますっ!」


 その発言を確認して、『トラッド』は、選択肢の[①飛び越える]を選択する。


[“跳躍判定”! 誰から飛ぶ?]


 トラッド――[ニッコリ]と笑いながら、

「隊列順でいいかな?」


 全てのキャラクターが“うなずく”のを確認して、『トラッド』は、飛ぶ順番を入力して行く。


 トラッド――[ニヤリ]と笑って、

「それじゃあ、行くぞ!」


 “発言”の後、自分の番を始めるべく、決定ボタンを押す。


[トラッドの行動! 十秒以内に、『意志力・身体』を選べ!]


(十秒もあるなら、失敗するわきゃない。

 《全体攻撃 3Lv》

 《防御を固める 3Lv》

 『意志力・身体』

 《メジャーヒーリング SP》

 《アンチクリティカル 3Lv》

 ……ね。ふむふむ)


 トラッドは十秒以内と言われたにもかかわらず、三秒とかからずに手札から『意志力・身体』を選びだす。比較的余裕を持って選んでこの秒数なのだから、さすがに熟練の〈冒険者〉を自負するだけはあるといえよう。


[成功!

 次のキャラクター、ニオの行動!

 十秒以内に、『意志力・身体』を選べ!]


(まあ、なんだかんだ言ってても、大丈夫だろう)


 見守る『トラッド』の目の前で、ニオも、六秒半ぐらいで成功して見せる。


[成功!

次のキャラクター、リメアの行動!

 十秒以内に、『意志力・身体』を選べ!]


(さて、問題の“お姫様”の行動だけど)


 何があっても、フォローできるように身構えた『トラッド』の目の前で、


[失敗!]


(やっちまったか!)


 助けようとして、フォローに備えた『トラッド』だが、


[フェレスのフォロー!

 フェレスは、三秒以内に、『意志力・身体』を選べ!]


(何だと!)


 リメアは余程酷い失敗をしたとみえ、向こう岸にいるトラッドたちではなく、一人残っていたフェレスのみにフォローの機会が与えられたということらしい。


(頼むぜ、フェレス!)


 祈りながら、画面を見つめる『トラッド』の目に、[成功!]の文字が飛び込んで来る。


[穴に落ちかけたリメアの手を、フェレスはがっちりと掴んだ!]


 トラッド――[ニッコリ]と笑って、

「おおっ! やるじゃん、フェレス!」


 ニオ――[ニッコリ]と笑って、

「ナイス、フォロー!(*^o^*)」


 リメア――“ぎこちなく”[ニッコリ]と笑い、

「ありがとうございますっ!」


 フェレス――[フッ]と笑みを浮かべて、

「礼には及ばない。そういう約束だったからな」


 リメア――“嬉しそうに”[ニッコリ]と笑って、

「はいっ! ありがとうございますっ!」


 フェレス――[普通]の顔に戻り、

「ケガがなくて、良かったな」


 リメア――[ニッコリ]と笑いながら、

「はいっ! フェレスさんのおかげですっ!」


 フェレス――“クール”に、

「当然のことをしたまでだ」


 トラッド――[ニヤリ]と笑って、

「うっわー! めっちゃ、キザーーっ!w」


(ふう、よかった)


 茶化しながらも『トラッド』は、モニター前で胸をなでおろしていた。もし、フェレスがフォローに失敗していたら、リメアは大ケガをしていたことだろう。体力のない〈魔術師〉だから、下手をすると“気絶”していたかもしれない。


 ここで行動の結果、「大失敗」していたら今後の冒険に支障をきたさないとも限らなかった。行動することを選択して失敗してしまったという事実はオンライン初心者のリメアを萎縮させ、その行動を消極的にしてしまい、“ゲーム”をつまらないものにしていたかもしれないからだ。そして何より、“跳躍”することを提案した――しかも、自信たっぷりにフォローすると断言した――トラッドの立場がない。


 フォローに成功してくれたフェレスには本当は感謝してもしたりないぐらいだが、照れもあって、ついつい『トラッド』は茶化してしまうのだった。


 フェレス――“クール”に、

「フン」


 トラッド――[ニヤリ]として、

「うわナルシストっぽーーい!」


 ニオ――[ニッコリ]と笑って、

「まあ、いいじゃん! キメたもん勝ちだよ~~」


 トラッド――[苦笑]して、

「うっ! ……まあ、いっかーーw」


(サンキュ――、ニオ!)


 ニオの絶妙のとりなしを受けて、『トラッド』は、話を切り替える。


 トラッド――[ニッコリ]と笑って、

「さあ! 頑張って、もう一度飛ぶんだ、リメア!」


 リメア――[ニッコリ]と笑みを浮かべ、

「はいっ!」


(萎縮は、していないようだな)


 トラッドの読みどおり、リメアは今度はなんとか成功し、続いてフェレスも、トラッドに勝るとも劣らないほど“軽く”――三秒フラットぐらいで――“跳躍判定”に成功して見せた。


 トラッド――[ニヤリ]と笑って、

「じゃあ、先に進もう!」


 無事に難関を突破したパーティは、さらに洞窟の奥へと進んでいく。


「長い一本道だなー」

「そうだね~~」

 トラッドとニオが[ニヤリ]としながらそんな会話を交わした後に、それはやってきた。


[“感知判定”!

 三秒以内に『意志力・精神』を選べ!]


(おおっ! はやい!)


 さすがに熟練の冒険者と言えども、なかなかにこれは厳しい条件と言えた。


(『意志力・身体』

 《威力強攻撃 3Lv》

 《全力攻撃 2Lv》

 『意志力・身体』

 《聖なる剣 SP》

 ……か)


 意を決して、手札を引き直した『トラッド』だったが、


(《心機一転 1Lv》

 《防御を固める 3Lv》

 《全体攻撃 3Lv》

 『意志力・身体』

 《威力強攻撃 2Lv》

 ……ありゃ?)


 手札には、必要なカードは来なかった。


[全員失敗!

 後ろに人影を見たような気がしたが、

 どうやら気のせいだったようだ。]


(あっちゃー)


 トラッド――[苦笑]を浮かべて、

「また、失敗しちまったなーw」


 フェレス――“クール”に、

「こんなに失敗しているのも久しぶりだな」


 トラッド――[苦笑]のままで、

「何か、後ろにいんのかぁ?w」


 フェレス――“クール”に、

「ふむ。おそらくはな。俺たちに確かめる術はないが、な」


 トラッド――[普通]の顔に戻し、

「ごめんな。ニオ、リメア。失敗ばかりして」


(フォローするなんて大口叩いといて、これだもんなー)


 申し訳なく思って、『トラッド』がそんな“発言”をすると、


 ニオ――[ニッコリ]笑って、

「気にしないでよ!

 僕らだって足引っ張りまくってるんだしさ~~」


 リメア――[ニッコリ]と笑いながら、

「そうですよ。これから、挽回しましょう!」


 オンライン初心者二人が“気にするな”と“笑ってくれた”のが、『トラッド』の心にじわりと染みた。


 トラッド――[ニヤリ]と笑ってみせ、

「あんがとよ!」


 本当は、素直に頭を下げるべきかもしれないが、まじめに振る舞うだけが感謝の方法ではないし、それに、ヒジョーに恥ずかしいので、トラッドはわざと“軽く笑って”見せる。


 ニオ――[ニッコリ]と笑って見せ、

「めげずに、ガッツでいこ~~!」


 リメア――[ニッコリ]と笑みを浮かべて、

「ガンバりましょうっ!」


 フェレス――[フッ]と笑い、

「まだまだ、序盤だからな」


 トラッド――[ニヤリ]と笑い、

「そうだな! さあっ、行くぞっ!」


(仲間がいるって、いいなぁ)


 などとしみじみ思いつつ、パーティリーダーは、[>先に進む]を選択したのだった。


 ……“冒険”は、まだまだ、始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロードシーカー~ミチの探究者~ @nanato220604

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ