第二章闇の中へ①

 “ロード・シーカー”というロゴが表示されたローディング画面が、プレイ画面に切り替わる。


 〈冒険者〉たちの前に現れたのは、“ロード・シーカー”の主な舞台である、「大陸」の地図であった。そのグラフィックを背景にパーティメンバー四人の顔グラフィックが表示される。そして、彼らの本拠地である「王都」と目的地であるトーラン村の位置が黒い点で示され、そこまでの道程が街道に従って白いラインで表示される。


[〈冒険者〉たちは、「王都」を出発し、

 一路、

 トーラン村までの道程を急いだ。]


 彼らの現在地が赤い点で示され、徐々に赤いラインが、「王都」からトーラン村まで伸びて行く。


 トラッド――[ニヤリ]と笑いながら、

「何かあるかな♪ 何かあるかな♪ 何かあるかな」


 フェレス――“クール”に、

「歌うな」


 トラッド――[ニヤリ]と笑い、

「えっ!? 聞こえたっ?!w」


ニオ――[ニヤリ]として、

「マイク、オンにしてた?w」


 リメア――[苦笑]して、

「このゲームに、音声会話機能って

 ありましたっけ?^^;」


 トラッド――[苦笑]で答えて、

「今は、まだない、はずっ!w」


 フェレス――“クール”に、

「今後のアップグレードに期待だな」


ニオ――[笑顔]を浮かべて、

「実現するといいね~~(*^o^*)」


 そんな“会話”をしながらも、プレイヤーたちの視線はマップに注がれていることだろう。途中で“アクシデント”でもあった場合はすぐに対応できるようにしておかなくてはならないためである。


 だが、


[一日目]


[二日目]


[三日目]


 リメア――[驚いた]顔をして、

「あらら?^^;」


 トラッド――[苦笑]を浮かべて、

「速いなーw」


 ニオ――[苦笑]して、

「すっごい省略されてる~~(笑)」


 トラッド――[ニヤリ]として、

「あんなことやら、こんなことやら、

 いろいろあったのにw」


ニオ――[ニヤリ]と、

「あんなーこぉ~とぉ~~♪

 こんなーこぉ~とぉ~♪

 あ~った~でしょうぅ~~♪」


 フェレス――“クール”に、

「ニオも歌うな」


ニオ――[ニヤリ]と、

「(*^o^*)www」


[〈冒険者〉たちは、トーラン村のすぐ間近にまできている。

 道中、さしたるモンスターやアクシデントにも遭遇せず、

 いたって順調な旅であった。]


 フェレス――“クール”に、

「アクシデントのひとつでもあった方が、冒険評価点が高くなるのだがな」


 リメア――[苦笑]を浮かべて、

「また、失敗しないとも限りませんし^^;;」


トラッド――[ニヤリ]として、

「今度は成功しようぜ! 失敗ばかりしてちゃ、経験にならねーw」


 ニオ――[ニヤリ]と笑い、

「そうだね~~(笑)」


 ニオのセリフと同時に赤いラインが目的地まで到達し、大陸のグラフィックの代わりにト―ラン村のグラフィックが表示される。


 フェレス――“クール”に、

「このグラフィックは、中規模の村だな」


 リメア――[微かな笑み]を浮かべ、

「もっと、大きな村を想像してました」


 トラッド――[普通]の顔に戻って、

「なんで?」


 フェレス――[フッ]と笑い、

「報酬の金額が大きかったからだろう?」


 リメア――[驚いた]顔で、

「良く分かりましたね?」


 フェレス――[普通]の顔に戻り、

「ふむ。まあ、な」


トラッド――[ムッ]とした顔で、

「うっわ――。ちょ~かっこつけ~~。みたいなーーw」


 フェレス――“クール”に、

「貴様が、鈍いというだけだ」


トラッド――[ムッとした]顔のままで、

「やァーーな、かんじィ~~w」


ニオ――[苦笑]して、

「あんたはどっかの女子高生か~!(笑)」


フェレス――[フッ]と笑い、

「そんな言葉を使っているのは、ほんのごく一部だ。

 おそらく、高校生以外のやつの方が多い、な」


 ニオ――[驚いた]顔をして、

「へぇ~~、そ――なんだ~~」


トラッド――[苦笑]を浮かべ、

「なんで、お前そんなこと詳し~んだ?w」


 フェレス――[普通]の顔に戻り、

「そういうものだからだ」


 ニオ――[驚いた]顔のままで、

「そういうもんかねぇ」


 そこで、ようやく“会話”が途切れ、コンピューターがシナリオを進めることができるようになる。


[〈冒険者〉たちがさらに村に近づくと、

 村の入り口に立っていた二人の見張りが身構える。]


 トラッド――[苦笑]して、

「おい。警戒されてんぞ?w」


 リメア――[苦笑]を浮かべて、

「ひょっとして、

 モンスターと疑われてるんじゃないですか?」


 ニオ――[ニヤリ]と笑い、

「特にトラッドが(笑)」


 トラッド――[苦笑]のままで、

「なーーぜーーだーー!w」


[見張りA――警戒の表情を浮かべ、

「おい! 貴様ら何者だ!」]


[何と答える?

 ①「通りすがりの旅人だ」

 ②「仕事を依頼された〈冒険者〉だ」

 ③「ただのモンスターだ」


 トラッドは、五秒以内に選択肢を選べ!]


 三秒ほどで、選択肢が選ばれ、画面に表示される。


[>②「仕事を依頼された〈冒険者〉だ」]


 ニオ――[ニヤリ]と笑い、

「良かった。ギャグに走らなくて(笑)」


トラッド――[苦笑]を浮かべ、

「いくらなんでも、なあ?w」


 フェレス――[フッ]と笑い、

「いや。トラッドならやりかねん。この前の」


トラッド――[苦笑]を浮かべたまま、

「W あ、あれは、」


ニオ――[普通]の顔に戻して、

「なんか、話長くなりそう~~」


トラッド――[普通]の顔に戻って、

「……やめます」


ニオ――[ニヤリ]と笑って、

「よろしい♪」


[見張りB――笑顔になって、

「! そうでしたか、失礼しました! こちらへどうぞ!」


[〈冒険者〉たちは、見張りAの案内で村の中へと入って行く。]


 フェレス――[フッ]と笑みを浮かべて、

「ほう」


 トラッド――[普通]の顔のままで、

「ん? なんだ?」


 フェレス――[普通]の顔に戻って、

「いや、なんでもない」


(何か、気が付いていることがあんなら、言ってくれればいいのに……)


 「もったいぶりやがって!」とモニタ――の前で悪態をつく『トラッド』の思いなど知らぬげに、シナリオは続いて行く。


[村の中に入った〈冒険者〉たちを見て、村人たちが騒ぎ始める。]


 村人A「〈冒険者〉だ! 〈冒険者〉が来たぞ~!」

 村人B「これで、村も救われる」

 村人C「ありがたや。ありがたや」


 トラッド――[苦笑]しながら、

「まだ、何にもしてねーのにw」


 ニオ――[ニヤリ]として、

「そんなことないよ~w 僕らが来た時点で、

 村人の身は取り敢えず安心だから」


 リメア――[驚いた]顔で、

「何で?」


ニオ――[ニヤリ]としたまま、

「僕らが怪物を倒せるかどうかは

 ともかくとして、

 次のエサになるのは

 自分たちじゃないから(笑)」


トラッド――[苦笑]しながら、

「うっわー、めっちゃ、ブラック!w」


 フェレス――[フッ]と笑い、

「縁起でもない」


[ここで、“感覚判定”!

 五秒以内に、『意志力・精神』を選べ!]


(うおっ! いきなりかよ?)


 油断していた『トラッド』は、慌てて手札を見る。プレイヤーの緊張感を保つために、このような突発的な“判定”は、シナリオ中にちりばめられている。さっきより、制限時間が短いということは、その分、難しい行為だということなのだろう。


(《防御を固める 2Lv》(《戦士系スキル》防御力+4)

 《不屈の闘志 1Lv》(《共通スキル》セットしたスキルは捨て山に移行しない)

 《守りの盾 SP》(〈騎士〉のSP。防御力+1。抗魔力+1。全ての攻撃と魔法はこのキャラに命中する)

 『意志力・身体』

 『意志力・精神』

 ……あったあ!)


 危うく、『意志力・身体』を選びそうになりながらも、『トラッド』は、何とか正確なカード、『意志力・精神』を選ぶことに成功した。


[全員成功! 〈冒険者〉たちは、村人の様子に何だか違和感を感じた]


 トラッド――[苦笑]して、

「今度は全員成功かよ!w」


 ニオ――[苦笑]を浮かべて、

「しかも、あんな馬鹿なこと喋ってたのに(笑)」


 フェレス――“クール”に、

「どんな違和感なのか、いまいち分からんな」


 リメア――[微かな笑み]を浮かべて、

「確かに、村人さんたちの反応は、ちょっと変ですね」


 フェレス――“クール”に、

「ただ単に、興奮状態というだけかもしれないが、な」


 ニオ――[普通]の顔に戻って、

「キャラクターがどんな違和感を感じたのか、

 プレイヤーには分からないもんね~~」


リメア――[普通]の顔に戻って、

「取り敢えず、何かを感じたということだけは

 覚えておきましょう」


[村人たちの熱烈な歓迎を受ける〈冒険者〉たちの前に、

 依頼者であるカスター〈司祭〉が現れる。]

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