#8 親友のいない日は、何かのイベントが発生するわけです

月曜日。皆さんごきげんよう。涼宮です。

今日は珍しく、私の好きな人、悠真さんは早く来ていました。


「おはようございます、悠真さん」

「はやっ…おはよう、涼宮さん」

「悠真さんも、どうしてこんな早い時間に?」

「実は、さ」

「はい」

きょろきょろと周りに人がいないことを確認し、彼は息を吸った。

「謝りたくて」

「えっ?」

「この間さ、僕は君のことを振ったじゃん?」

「はい」

「あの時、言い過ぎたって後から気付いて。ごめん」

「いいですよ、そんなこと」

私は笑う。

「だって、私も謝りたかったので」

「謝ることなんてあるか?」

「傷つけてごめんなさい」

「…」

「私、実は颯太さんから話を聞いていたんです」

「僕が人間不信になった理由?」

「噓告白の連続だって」

「それをわかっていながら、私は噓告白をしてしまったんです」

「もういいよ」

「えっ」

「だって、涼宮さんはほんとうに、僕と仲良くなりたいだけなんでしょ?」

「あっ…」

彼は笑う。

不覚にも、ドキッとしてしまった。

「反則…っ」私は顔をそむける。

顔が熱い。

「どうした?」

「…別に、なんでもないですよ」

「そっか」

「まあ、そういうことだから。これからも友達として、よろしく」

「私は友達じゃ嫌なんですよ…」

「えっ?隣人さんのほうがよかったか?僕、やっぱりうぬぼれてました?」

「そうじゃないの…」

「じゃあ…下僕?」

「私は…恋人がいいの…」

「…」

しばらくの沈黙。

「じゃあさ」

「?」

「もっと、お互いのこと、よく知ろうよ」

「えっ?」

「その、さ。僕、まだ君のこと、あまり知らない」

「だから、もっと互いのことを知ってから、付き合うかこのままかは決める」

私は少し泣きそうだった。

好きな人にチャンスをもらえたんだ。

「うん、私、悠真さんの事もっと知りたい」

「じゃあ、そういうことで」軽く微笑んでくれた。


そんな会話をした僕、悠真です。どうも。

現在、2時間目が終わった後でございます。

「でですね、悠真さん」

「何でしょう?」

「今日颯太さんはお休みなんですか?」

「そうだね。朝、今日は家の都合で休むって言って…」

「おい陰キャ」

はいどーも。DQN参上すか。

「何、涼宮さんと楽しそうにしてんだよ」

「え?僕ってホントに人権ないの?」

「陰キャに人権なんかねぇよ」

「おお、直で言われると傷つく」

「今すぐ涼宮さんと話すのをやめろ」

「なぜ僕は君にそういうことを指図されなきゃならない?」

「痛い目を見たくなきゃ、離れろ」

「痛い目に遭うのはこの人のほうじゃないかな…」

涼宮さんがぼそっと言う。


「涼宮さん、こんな陰キャとじゃなくて俺らと話そうよ」

「あ、え?えっと…」

「どうせ弱みでも握られてるんだろ?だからこんな陰キャと…」

「誰が弱みなんか握るかボケ」やば、つい言ってしまった。

「ああ?なにいってんだ陰キャ」

周りの人は僕のことを見てクスクス笑っている。

「俺の恋路を邪魔すんな、陰キャ」

「あー…君も下心丸出しで涼宮さんに話してるクチか」僕は嘲笑してやった。

「いい加減にしろ陰キャが!俺に口答えするな!」

「沸点も低いね、君」

「ううっ」

「俺は涼宮さんが好きなんだよ!だからお前が憎い!」

「じゃあ、まず君の性格から直したほうがいいと思う」

「…くそ」


「なら決闘だ!」

「いや、なんでそうなるんだよ」

「力を証明するんだよ!俺が勝ったら涼宮さんと俺が付き合うってことで」

「どうする?」

「別にいいですよ。この人に勝機がないと思うので」

「まあ、僕の意識が吹っ飛ばなきゃ、ね」

「そのことを忘れてました」

「まあ、サクッと片付けるから」

「はい」

「じゃあ、放課後にやってあげよう、決闘」

「逃げんなよ?陰キャ」

「お前がな」

「ちっ、なめやがって…」


放課後。

「陰キャだから、来ねえと思ったわ」

「チキンハートがよく言うよ。だいたい」

あいつの周りにいるのは、観客と…

「仲間を呼びでもしないといけないレベルのチキンハートだとは思わなかった」

「ふん。これは作戦だよ、作戦」

「悠真さん、大丈夫?」

「涼宮さん。ううん、問題ない」

「んじゃ始めるぞ!みんないけ!」

「陰キャ君は勝てないでしょw」

「ご愁傷様w」

うるせーな。

僕はメガネを取った。

メガネがなければ、僕の視力は元に戻ってくれる。

それに、ある程度の腕力と脚力はある(運動はまあまあできるほうである)


敵はざっと13人。

一番最初に殴りかかってきそうな奴のこぶしの方向を見た。

ストレートか。僕は姿勢をかがめる。

そしてそいつの懐に潜り込み、男性の一番大事なところにアッパーを入れる。

おつかれした。ご愁傷様。

一人目はうめきながら倒れている。

「はい、1人KO」

すぐに後ろを確認。

そして後ろから蹴ってこようとする奴にタイミングを合わせて蹴りを入れ、防ぎつつ…

その勢いで左足を使って脇腹を蹴る。


「これで2人…」


数分後。

「はぁ…はぁ…」

やばい…まじで意識飛びそう。

いつもなら大抵4分ぐらいで済ませたりするのだが、8分もメガネなしで視力を使ったことは無い。

とりあえず、13人は全員KOした。

あとはあのDQNのみ。

「あっ…ありえねえ!こんな陰キャが...!」

「さて、次はお前だ…」

恐怖で動けないDQNに近づく。

「あっ…ああ…!」

「百篇くらい反省しろ」

僕は横っ面に一撃を入れた。

DQN、撃沈。


「ぐっ…!」

やばい。意識が持たない。

「涼…宮…さん」

「ゆ、悠真さん!?」

「結構やべえかも…意識…これ以上持ちそうにないや」

僕の体は、僕の視力についていけなかったらしい。

僕は膝から崩れ落ちた…んだと思う。覚えていない。

「地面…ひんやりして気持ちいい…」

僕は目を閉じた。




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