裏切り
#4 学校一の美人が、陰キャへの猛攻を開始してきました。
涼宮さんと屋上で遭遇した次の日。
「おはようございます、新堂さん」
「おはよう…ございます?」
訳が分からない。
だって、昨日まではしゃべりかけられなくなって、僕自身もちょっとほっとしてたんだけど…
「あの…気でも狂いましたか?」
「いや?私は正常ですよ?」
「だって、僕にしゃべりかけることなくなったのに…」
「急に話しかけてくるからさ」
「別に?理由なんてないですよ」
「目的は?」
「仲良くしたいだけですが…」
んー。考えられるのは…
気狂ったのかな。それくらいしかない。
「しばらく傍観と行きますか…」颯太が何か言った。
でも聞き取れなかったけど。
「あのー…僕に話しかけるの、やめてもらえませんか?」
「なんでですか?」
「いや…それは…」
とにかく嫉妬の視線が痛いんだよ。
あと、最近ちょっと絡まれるようになってきた。
その原因は80パーこの人のせい。
残りの20パーは僕自身が陰キャだからって理由。簡単。
「周りの目が…さ?分かる?」
「そんなの気にしなくていいんですよ?」
「そういうのを気にするのが陰キャなんだよ…」
「むぅ…」
「頬、膨らませんな」
「なんであんな陰キャに喋ってんだろ、涼宮さん」
だから俺が知るわけねーだろ。
「ウザいな」
お前がな。
「横槍入れてやろうかな」
お前のチキンハートでできるわけねーよ。
「俺たちのマドンナを…」
いやこいつモノじゃねえから。
「涼宮さんにあいつの悪印象刷り込んでやろうかな」
余計なお世話や。
「うん、やっぱ周りの人が怖いわ」僕はちょっと身震いをした。
「ん-…」颯太のほうを見ると、何か思案している様子だ。
「あーあ、我慢してたけど...」席から立ち上がる。
「おいお前ら」颯太が叫ぶ。
「悠真のこと馬鹿にするのも大概にしろよ」
「青海、こいつ陰キャだろ?」
「だから?」言い返した人を睨みつけている。
「あ、いえ…なんでも…」
「あはは…颯太、僕のためにそこまでしなくていいから」
「悠真を馬鹿にする人達をほっといていいのか?」
「いいんだ。お前の立場が揺らぐかもしれないだろ」
実際颯太はコミュ力お化けで、成績も顔もいいのでみんなから憧れられている。
その立場を僕をかばうことで失ったら、それこそ俺みたいになっちまう。
「私も同意見です」涼宮さんも言う。
「2人共…」
「うっ…涼宮さんがそういうなら…」
「しょうがねぇな…」
「ちっ」
「さ、ホームルーム始まりますよ。座りましょ」
彼女は冷ややかに言った。
そして授業中…
視線が痛い。
嫉妬するやつもそうだが...
いつもと違う視線も交じっている。
涼宮さんから放たれる視線らしい。
俺はとにかくそっちは見ないようにした。
なんか、恥ずかしいというか、痛いというか…
休み時間。
「新堂さん!」
「な。何でしょう…」
「趣味ってありますか?」
「趣味…あっ、颯太」
こっちに颯太が向かってきて、「何の話?」と聞いてきてる。
「新堂さんの趣味を知りたいなーって!」
「あー…僕の趣味?」
「はい、そうです」
「聞いても面白くねーと思う」
「とりあえず聞いてみたいです!」
「強いて言うなら…謎解き?」
「へぇ~!」
「確かに悠真、頭結構いいからな」颯太がうなずく。
「今度、問題出してやったらどうだ?」
「うーん…考えとくよ」
「ちなみに私も謎解きは好きですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。スケルトンとか、クロスワードも好きです」
「涼宮さんもパズル好きならしいぞ、ゆう――」
「あの…視線痛いです、はい」
さっきからいつも通りの嫉妬の視線がくる。
もう、周りの陰口にひとつひとつ突っ込み入れんのもめんどくさくなってきたな。はぁ。
しかも颯太は結構女子にモテてるわけで、女子からの視線も痛い。二重でダメージ。やだ、もう。
こんな感じに、休み時間のたびに質問に遭う日々。
しかも、昼休みは…
「新堂さん、一緒に食べましょう」
「いや、遠慮しておきます…」
「えー?なんでですか?」
「はぁ…いいかい涼宮さん、陰キャは目立たないところでぼっち飯がお似合いなんだ」
「むぅ…」また頬を膨らませている。
「ああ…もうわかったよ…」
一緒に食べることを認めざるを得なかった。
「新堂さんのお弁当、すごいですね」
「悠真、家事得意だからな」ちゃっかりついてきた颯太が言う。
というか、正直颯太がいないと不安だからありがたい。
「そうなんですか?」
「一人暮らしだから、最低限の家事技術は得ているつもり」
「どこが最低限の技術だよ。お前料理すごいうまいじゃねえか」
「そこまででもないと思うが…」
最近こんな日々が続いている。
授業終わりは他愛のない会話をして、昼休みは一緒にご飯を食べる。
だけど、それにも少し慣れてきた。
正直、ちょっと楽しいと思うようになった。
でも、と思い直す。
涼宮さんは、僕をポイント稼ぎかなんかだと思っているにきまってる。
颯太が心配して、涼宮さんと関わる機会を設けてくれるのは嬉しいし、コミュニケーションを図ってくれたのはありがたい。
だけど、僕は涼宮さんをまだ信用できなかった。
もう裏切られるのは、嫌なんだ。
僕はため息を漏らした。
その疑いは…やがて現実になる。
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