#3 颯太と涼宮の秘密の会議

私は涼宮結衣。高校2年生。

最近の席替えで隣になった新堂悠真さんに避けられています…。

私は何もした覚えがないのですが…

最初は何回も話しかけました。ですが、拒絶されるうちに話しかけにくくなったんです。

何で拒絶するのか聞きたくなって、昼休みに…

勇気を出し、屋上にいた新堂さんに話しかけようとしましたが…

「あっ!ちょっと待ってくだーーー」

見ての通り、逃げられてしまいました。

「追いかけなきゃーー」

ガシッ

青海さんに腕をつかまれた。

「待て」青海さんの声が鋭い。

「えっと…」

「あいつを追うのはやめろ」

「でも…」

「とりあえず話を聞け」

「…はい」

…という感じで、私と青海さんの密談が始まりました…

「まず質問だ。どうしてそこまで悠真に話しかけようとする?」

「それは…実は、喋りかけてくる人がみんな下心丸出しで話しかけてくるんです」

「ほう」

「しかし例外がいました。新堂さんと青海さんです」

「新堂さんは青海さんと仲良さそうで…でもみんなが新堂さんを悪く言うんです」

「あいつらか…」

「だから、本当にそんな悪い人なのかな、って思って。話しかけようとしたんですけど」

「お前、あいつにそんな生半可な気持ちで話しかけようとしたのか?」

「ええ?」

「あいつはそんなんじゃ話しかけられても迷惑がるだけだと思うがな。本当に仲良くなりたいって気持ちがないと無理だろうな」

「俺の経験では、だが」

「そうですか...」

「あいつももう傷つくのは嫌なんだろうな」

「傷つく...」

「ああ」

「あの、青海さん。新堂さんってどんな人なんですか?」

「悠真は…」

「すっげぇいい奴だよ」

「いい人…」

「困ってる奴には必ず手を差し伸べてくれる。それに」

「悠真は俺を助けてくれたんだよ」

「青海さんを?」

「うん。俺さ、小学校の時に結構いじめられてたんだ」

そう話す青海さんは、どこか懐かしそうな表情だ。

「そこに割り込んで、いじめっ子たちをボコボコにしたのが悠真なんだ」

「そんなに強いんですか?」正直言って強いという印象がない。

体格もかなり細いし。

「だけど…俺は後悔もしたんだ」

「後悔…?」

「あいつは確かに俺をいじめた3人をやっつけてくれた。でもさ…」

懐かしそうに語っていた青海さんの顔が、真剣な表情に変わる。

「あの後あいつ、意識ふっとんじゃったんだよ。あいつは自分を犠牲にして、俺を助けたんだ」

「えっ?ええ!?」なんで意識が吹っ飛ぶ!?

「あいつって目がすごくいいんだ」

それと何が関係あるんでしょうか…

「どれくらい?」

「検査で視力8.0くらいって出たっけ」

「は…8.0…」さすがに驚いた。

「驚くよな?」青海さんはニカっと笑った。

「そんなにすごいんですか…」

「でもそれなら、眼鏡をかける必要ないんじゃないですか?」

「まっ、あいつの眼鏡に秘密があるって...あっ」

「どうされました?」

「そういや、話が脱線したな。えーと…」

「あいつがお前に話しかけない理由についてだが…」

「聞きたいか?」

「うん…聞きたいです!」

自分で言うのもなんだけど、私はそこそこ容姿には自信あるし、成績もかなりいい。

それにコミュニケーション能力にも自信があるから。

なのに新堂さんには避けられる理由がわからない。

知っているというなら聞きたい。

「あいつは…人間不信なんだ」

「人間不信?」

「ああ。正直なところさ、お前もあいつのこと陰キャとか思ってるんだろ?」

青海さんの声が鋭い。目も真剣だ。

「ええ…まあ…」

「あいつは陰キャって呼ばれてる。だから…」

青海さんは一瞬ためらったように見える。

「罰ゲーム告白の連続だ。それに、あいつの噂を聞き付けた不良共がタイマンしに来たりとかするから…」

不良?なんでだろう?

「あいつは、精神的に追い詰められた。限界が来ていたんだ」

「それで?」

「俺以外の誰とも話さなくなった。俺はそれが心配なんだ」

「誰とも…」青海さんは選ばれたんだ。

「あいつ、交友関係俺以外いないからさ。将来別の学校、会社に行った時にどうなることか、想像もしたくねえ」

「青海さんは…すごくいい人だね」

「そうか?」青海さんの表情が和らぐ。

「あの…私は新堂さんに対して、どうしたらいいと思いますか?」

「難しいな…」

暫くの間、2人で考えて…

結論が出ました。

「じゃあ…ごり押す、かな」

「本当にあいつと仲良くなりたいなら、な」

「はい。そうですね!」

確かに、押すのが弱かったかもしれない。

なら、もっと押してみるしかないのでしょう。

それに私、新堂さんのことをもっと知りたい。

でも…

「でも…避けられたら?」

「安心しなさんな。必ず俺がいる状態で2人が話せるようにしておくから」

「私は新堂さんと話せるのかな…」

「さあな。でも、やれるだけやってみな」

「…はい!」

昼休みが終わるチャイムが響く。

「そんじゃ、また教室で」

青海さんは私に手を振り、屋上から出る。

私もその後を追い、屋上から出た。

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