#15 公認される。
そんなわけで、僕、彼氏彼女になったわけですが。
絶賛気まずいなう。
とりあえず、なんかこの空間にいづらい(すべて僕のせいだが)。
「そろそろ時間……かな。僕、帰らないと」
「帰るんですか?」
……え?
そんな「泊って行って」みたいな顔しないで……超帰りづらい……。
「泊って行かないんですか?」
……いや、あの目本当に「泊って行って」だったのか。
「うーん……」
腕時計で時間を確認する。
現在午後5時半。
「家でご飯作らないといけない時間だしなぁ……。それに、本当に泊まるなら服とかも持ってこなきゃいけないし」
「服なら持ってくればいいじゃないですか」
そう来ますか。
いや……。うん。
そんな簡単に言わないで!?
こちとら一時間前くらいまで彼女いない歴=年齢の一般的ひねくれ陰キャだったんですけど!?
彼女できてすぐに、こんな圧倒的難易度LvMAXのお泊りイベントが発生していいのか!?
「えーっと。じゃ、じゃあ荷物取ってくる……」
僕は立ち上がると、結衣の部屋を出て階段を下りる。
このまま家に帰る算段。
……のはずだった。
ガチャッ
「結衣、ただいまーっ……え」
バチン
視線がぶつかる……。
目と目が合うしゅんか……おっと。
どこぞのどっかで見たことのあるようなワンフレーズが一瞬頭の中にちらつく。
こんなことがあろうか。
お泊りイベント回避のため逃げようとしたのに、より状況が悪化する予感しかしない人物……「彼女の母親」に遭遇。
お泊まり回避イベント、Lv.MAXより難易度上昇。
某太鼓のゲームで言ったら裏譜面。鬼畜の極み。
「あ……えと」
「そうかいそうかい」
やめてください、結衣のお母さん……。
そのなんか、すごく「子供の秘密みーつけた」みたいな感じでニヤニヤしてる目……。
「結衣、男を連れ込むの初めてじゃない。彼氏さん?」
彼女は、二階にいる結衣に声を掛ける。
「そんな大きい声で言わないで……。恥ずかしい」
結衣が階段を降りてくる。
すこしだけ頬が赤く染まっていた。
「これから帰るの?」
結衣のお母さんが僕に尋ねる。
「あ、ええ、まぁ、は……」
「悠真さんを今日、泊めたいです!」
……あ。
「ええ、いいわよ?」
……親の許可を得てしまったぁぁあ!!!
「いつも結衣と仲良くしてくれてありがとうね」
車の中で、涼宮さんのお母さん……結愛さんが僕にそう言った。
現在僕は荷物を一部取りに行くため、結愛さんの車に乗せてもらっている。
「バスで行くので……」と遠慮はしたものの、彼女が「いいのいいの、私の車に乗ってって。話したいことも色々あるし」とのことでこうなってしまった。
「あ、はい……こちらこそ」
「まぁ、最初は邪険に扱ってくれたそうだけど」
……怒ってるのかな。結愛さん。
「す、すみません」
僕が謝ると、彼女はふふっ、と小さく笑い声をあげた。
「別に、怒ってないわよ。何か、事情があったのでしょう?」
「……しょうもない事情ですけどね」
結愛さんが、一呼吸置く。
「私、実はあの子からあなたの話そんなに聞いてないのよ。”好きな人がいるんだけど、何かの事情があったらしくて、告白したらちょっといろいろ言われちゃって”っていう情報ぐらい」
「そうなんですか?」
「その事情っていうの? 教えてほしいの」
「……はい」
僕はすべて、包み隠さずに話した。
僕の視力のこと。嘘告白の連続だったこと。
僕の好きだった人に嘘告白されたこと。
それで、もう颯太以外の誰も信じられなくなったこと。
でも、なんでだろう。
一つ話していくたびに、心の澱が溶けていくのを感じる。
この人が発する……「安心できる、信頼できる」オーラみたいなものが、僕の心をやさしく解きほぐしてくれているように感じる。
さすがは涼宮さんの母親だな。
二人そろって、優しい雰囲気の人だな、と思う。
「それで……なんだけど」
「なんでしょう?」
なんとなく、言いにくそうなことを今から言う感じの雰囲気を醸し出す結愛さん。
「さっきまで何してたのかと、どんなことがあって付き合い始めたのか、聞かせてくれない?」
たちまち、僕の顔に全身の血液という血液が集まってくる。
「そ、そんなのいうわけないじゃないれすかっ」
噛んだ。すごく噛んだ。
「ふふふ。その反応、キスはいったのね?」
僕のことをからかう結愛さんが、楽しそうに笑う。
結愛さんの運転する車は、夜の街を駆け抜ける。
僕と、たくさんの笑いと、少しの悲しみと、少しの恥ずかしさを乗せて。
人間不信の陰キャが、学校一の美人に溺愛されています。 プニッチのGWL(グッドライトライフ) @punicci_gamer
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