#10 根も葉もないうわさ…と言いたいところですが
どうやらあの日から俺はずっと眠ってたらしい。
気づいたら2週間経っていた。
「起きたようですね」
医者の顔が俺のまぶたに映る。
「どれぐらい…俺は眠ってたんですか?」
「まるまる2週間...寝ていましたよ」
「そんなにですか...」意識していないが、自然とうつむいてしまった。
颯太に会いたい。そこそこ長く会っていないのだ。
…と思っていると。
「悠真ぁぁぁぁぁあ!!!!」
「おわっ!?」颯太が抱き着いてきた。
「ようやく目を覚ましたぁぁぁぁぁあ!!!!」ギャン泣き中らしい。
「颯太さん…大丈夫ですか…」あまりの驚きに敬語になってしまった。
「悠真が事故で涼宮さん口調になってるぅぅぅ!!!!」うっさいわ。
…涼宮さんか。
颯太に会えたのはうれしいけど…久しぶりに会ってみたい気がする。
「颯太…涼宮さんのほうはどうなってる?」
「…質問攻め」颯太は俯きがちに答えた。
「まぁ…そうなるか」
あの日相当大暴れしたからな…
そのせいで今こうなってるわけだし。
「悠真君、今日は水曜日だが、学校に行く気力はあるかい?」
「ちなみに今は6:41分だとよ」颯太が後付けする。
「…」静かにしているが、心の中では…。
「ああああああああああああああああああああ行きたくないいいいいいいいいい!!!!」
こんな感じ。現実と心の中の差。
「あああ…怖い怖い怖い怖w…」
というわけで教室前に来ました悠真です。
この通り、手ががたがた言っております。
ゆーーーっくりとドアを開ける。
視線が一気にこちらに向いた。
「あっ…お…おはようございます…」
「悠真、声震えてる…」
おっと、手と同時に声も震えてたか。
みんなの視線が痛い。でもいつもの視線じゃない。
…怯えてる…というか、怖がられてる気がする。
「あいつが屋上でみんなをボコボコにした…」
「ああ…間違いない…俺この目で見た…」
「何あの陰キャ…怖すぎでしょ…」
ヒソヒソ話し声が聞こえてくる。
はぁ…あの陽キャ、嫌な置き土産置いていきやがったな。
まぁこれは…根も葉もないうわさ…と言いたいところですが。
事実なんですよ。
昼休み。久しぶりに一人で屋上に来た。
頬をなでる風が気持ちいい。
久しぶりにぼっちになった。
でもこれもいいんじゃないかって思う。
もう二人に迷惑はかけたくない…
僕はそう考えて、屋上で少し眠ることにした。
曇り空は、僕の心のなかと似てた。
今日の空も風も、僕をちっとも慰めてくれないのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます