#13 甘えたい私と悠真さん
……好きな人を、家に呼んでしまいました……!
私、涼宮結衣は同じクラスの新堂悠真さんの事が好きです(本人にもバレてます)…。
今日の帰り、少しいろいろありまして……勢いで家に誘ってしまって…
……で、でもまだ付き合っていませんよ!?
私は早く付き合いたいのですが……。 はい…
「……?」
悠真さんが困惑してる……。 「なんで僕呼ばれた?」って顔…
「とりあえず、上がってください」
「……あ、はい」
ちなみに、私の家は木造建築の小さな二階建ての一軒家です!
「お、お邪魔します」悠真さんがおずおずと入ってくる。
「いらっしゃい、悠真さん」
「あの……何気に颯太以外の人の家に入るの初めてなんだけど」
「女子の部屋に入るの、初めてですか?」
「まぁ、うん」
顔が少し赤くなってる悠真さん、可愛い……。
じゃなくて!
とりあえず、2階の私の部屋に案内する。
「ひとまず、ここに座ってください。お茶持ってくるので」
そう言って、私はソファーをつつく。
「……」
「悠真さん?」
「……いきなりハ―ドル高くね……?」
「??」よく聞き取れなかったけど、それ以上追及するのはやめておこう、と思った。
「お茶、どうぞ」私はルイボスティーを沸かして持ってきた。
それをソファーの前にある小さなテーブルに置き、しれっと悠真さんの隣に座る。
「あぁ……ありがと」悠真さんが軽く微笑む。
「部屋……しっかり手入れされてる」
「はい!いつでも人を呼べるように、です」
「母親は?」
「その……今日は仕事、です」
「じゃあ、帰るね」
「ふえぇえ!?」
せっかく家に連れ込……誘ったのに!?
「いや、親いないんじゃ、僕らが何かしでかすかもしれないじゃん」
「ぎくっ」
「だから、親がいるときにまた……」
「…………、です」
「?」悠真さんが首をかしげる。
「嫌、です……せっかく二人きりになれたのに」
「……そっか……」
悠真さんが少し考え込む。
「……まぁ、何もなければいい、かな」
「やった……!」
……何だかんだで、悠真さんは優しいんだよなぁ。
噓告白(私にとっては本気だった告白)の日も、「気を付けて帰れ」って言ってくれた。
次の日も。私のことを、本当なら放っておけばよかったのに助けてくれたし。
……そういうところ、私は好きなんだよ。
まだ言葉にはできないけど……いつか言葉にして伝えるから。
私はそんな思いを抱えながら、一番気になっていた事を聞こうとする。
でもその前に、今のうちにしかできないことをしようっと。
「悠真さん」
「……何?」
「私を……私を、甘やかしてください!」
「……」
あっ。悠真さんの脳内処理が止まった。
意表を突かれたような表情の悠真さんを、私はじっと見つめる。
「……えっと」30秒ほどして、悠真さんがようやく口を開く。
「一つ確認。僕ら、付き合ってないよね……?」
「はい、付き合ってません……」
「いいのか? 付き合ってない状態で甘やかすのって……」
「……でももう、私は悠真さんに抱き着いちゃってますし……まぁ、私が妹だと思って甘やかしてくださいよ、悠真さん」
「妹だと思って……かぁ」
悠真さんが微笑む。
「なんか、涼宮さん図々しくなったね」
「仕方がないでしょう……好きなんですから」
少し膨れたように言う。
「ほら、おいで」
悠真さんが、自分の太ももをつんつんとつつく。
私が「そこに寝ていい」という合図らしい。
「し、失礼、します」
「どーぞ」
頭を悠真さんの太ももに乗せ、横になる。
あったかい……柔らかい……。
「うん……すごく、いい……です」
うぅ……でもちょっと恥ずかしい、かも。
心臓が跳ねる。トクトク、トクトク……と、鼓動が速くなっていく。
聞こえてないかな……この音。
「すごいな……これ。ぬくもりが直に感じられる」
そう呟いたのは悠真さんだった。
「なんだろうな……すごく、安心できるぬくもり」
悠真さんをちらっと見ると、顔がほのかに赤くなっている。
私も……いま、すごく顔が熱い。このままだと、湯だって死んじゃいそう……。
それなのに。悠真さんは更に、私の頭に手を置いた。
そして、毛並みに沿って撫でてくる。
「ぅぅうう……」だめだ。私、今日で死んでしまいます……。
「……恥ずっ…これ」
悠真さんが恥ずかしがってる。
それを見た私は、ついクスクスと笑ってしまう。
「……笑うな……っ」
「可愛いですよ?悠真さんっ」
からかうように言うと、悠真さんはもっと顔を赤くしてうつむいてしまった。
いじりすぎちゃったかな。
「…………いよ。…………も」
しばらくして、ボソッと小さな声が聞こえた。
なんて言われたかはわからない。
でも。なぜか心臓が、期待するかのように跳ねた。
この鼓動、なんだろう……。
「今、なんて……?」
「もっかい言わせる?それ」
悠真さんが少し息を吸う。
私たちの空気を舞った言葉は、私にもはっきり聞こえる声だった。そして聞こえたのは、多分……一生の中で、私を一番ドキッとさせた言葉。
「可愛いよ、結衣も」
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