人間不信の陰キャが、学校一の美人に溺愛されています。

プニッチのGWL(グッドライトライフ)

席替え

#1 ひねくれ陰キャの隣の席は、学校一の美人になってしまったのですが

高校2年の朝。

ジリリリリリリリ!!!!

けたたましい目覚ましの音で僕は目覚める。

僕は新堂悠真。学校では陰キャと呼ばれる部類に入る人間だ。

勉強はまあまあできる。定期テストの結果では大抵30~40位をさまよっている感じ。運動もそこそこ。

まあ、そんな平凡な僕なのだけど、一つだけ普通の人と違うことがある。

それは視力が良すぎることだ。

なので、視力を抑えるための眼鏡をかけている。

でも、その視力のおかげで、実はヤンキーとかとの戦いでは優位に立てたりする。

カツアゲしているヤンキーなどをやっつけたこともある。

「んーっ…」ベッドから頭を起こし、大きく伸びをする。

ベッドの上に置いた眼鏡をかける。

午前6:30。ベッドから出て、朝食の準備。

僕は一人暮らしで、母親は実家で介護が必要な祖母と2人暮らし。父親は母が僕を身ごもったと分かったときに蒸発した、とのこと。

僕は前の中学校で、噓告白や、ヤンキーを狩っているという噂が立っていたことでからんでくる輩がいた。だから、僕はこうして遠くの学校に行くことにし、母親に無理を言って遠めの場所で一人暮らしをしている。

朝食と高校へ行くための準備を終え、僕はドアを開けた。

…晴れ。ちっ。

僕はかなりひねくれている。太陽光は大っ嫌い。

日陰者だから、太陽光は天敵。

日光を直視したことを後悔しつつ、近くのバス停でバスに乗った。

「よっ、悠真」明るい声がバスの後ろの席から聞こえる。

「おい、颯太…声大きい」ここはバス内。皆は静かにしよう。

「わりぃわりぃ、取り敢えずここ席空いているから座りな」

そう言って横の席をトントンとつつく。

この陽キャオーラ全開な奴は、僕の友達の青海颯太。

陰キャに冷たい奴と思われがち(実際俺もそう思っていた…)

だが、かなりいい奴だ。

なんとこいつ、俺が遠くの学校に行くってことで、引っ越しまでしてくれたんだ。

俺の心のよりどころであり、一番の親友だ。

「陰キャだ」って僕をからかうやつらからいつも守ってくれる。

「今日って席替えだよな?」颯太がそのことを持ち出してきた。

「うわぁ…席替え…」

席替え。学校の一大イベントとか言っているやつもいるが、正直こんなの苦行だ。新しい隣の人は完全に運。特に、陰キャってバカにされている僕には、かなり地獄だ。だって僕颯太以外友達いないから。僕はため息をついた。

ちなみに今の僕の席は教室の最後列、窓際という陰キャにとっては聖地ともいえる場所だ。

颯太は前後左右全方向から見て中央。陽キャに一番似合ってる席。

「あの席がまだ好きか?」

「まぁね…俺、お前と違ってコミュ障なんで」

「言ってて悲しくないのか…?」颯太が呆れている。

「いや?全く?」

「お前のそのメンタル…どっから出てきてんだ」

「今までの積み重ね」

「ですよね…」颯太は何か言いたげな目を向けてくる。

「あーあ…おまえが隣ならよかったのに」

「確かに、悠真としゃべれんの俺だけだもんな」

「あれも結構奇跡だったよな」

「あの時助けてくれたこと、まだ感謝してるんだぜ」

颯太は満面の笑みを浮かべた。

実は颯太と話すようになったのは、こいつがいじめっ子に絡まれてたのを僕が助けた後なんだよな。

今となっては、少し黒歴史だが。

「次はー…白金ー…白金ー…」

車内アナウンスが、高校に一番近いバス停に到着したことを知らせる。

「颯太、着いたぞ」

「おっけー」

バスを降りる。

「今日も先が思いやられるな」またクラスメイトに馬鹿にされるのかと思うと、学校に行くのがあほらしい。

「安心しな。俺が守ってやるからさ」颯太はちょっと真面目な口調で言ってくれた。そして笑った。

僕も笑みを浮かべた。

階段を上り、教室に入る。

「おっ、席替えの場所の紙が貼られてる」

「ホントだ。僕は…」

よし!場所変わってないぞ!

「颯太、俺まだ席変わってねー」小声で言う。

颯太の席は…ああ、前から二番目。窓際ではあるけど少し遠い。

「あーあ…悠真の近くがよかったのに…あれ」

「ん?どうした?颯太」

「…!」

颯太は固まっている。

「おい、颯太?」

「待てよ…悠真…」

「どうしたんだよ?」

「お前の席…一番目立つかもしれねぇ」

颯太特有の、いつものふざけた口調じゃない。

全身から冷汗が噴き出す。

「えっ…なんで…」

僕は再び張り紙に目を落とす。

そして僕の席の隣の場所に目を向けた。

「…颯太…これって」

「ああ…悠真の隣は…」

颯太が言い終わる前に、僕らが入ってきた時に閉めた、教室のドアが開く。

「おはようございます」可憐な声が教室中に響く。

「涼宮さんおはよう!」

「涼宮さん今日もかわいいよ!」

男子共が騒ぎ始める。

「あー…悠真、これやらかし案件かも」

「うえ…まじすか」察してしまった。

「取り敢えず、いったん席移動しよう。な?」

「あ、ああ…」

僕らはとりあえず席についた。

高校2年生の5月。

僕の穏やかな高校生活は、一瞬にして崩れ去った。

机に突っ伏して頭を悩ませていると…

「貴方は新堂さんですね。よろしくお願いします」

俺はゆっくりと顔を上げる。

隣にいるのは、俺がクラスで一番苦手としている奴。

そして、学校で一番の美人でもある女子。

涼宮 結衣だ。

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