子猫のお話や、山で出会った不思議な子どものお話など、まだ出だし部分ですが何にこんな惹きつけられるのか…と思っていたのですが、やはりノスタルジーに浸れる心地よさという気がします。
里山と田園に囲まれた地方で幼少期を過ごした者としては、肌感覚で覚えているあの頃の空気感。仄暗い闇の中に何か潜んでいるのでは、と日々ハラハラドキドキしていた頃を追体験する楽しさを感じています。
横溝正史の映画の風景にもオドロオドロしさよりも、最近では泣きたくなるような懐かしさを感じるんですよね。大野雄二さんの曲が流れてくると。
やはり歳のせいかなぁ、と感じてしまいます。
さて、この先どんな追体験ができるのか、楽しみです。
この小説に出てくるエピソードは、生きていれば数回は耳にする話。聞いたことがある話。
学校の休み時間、帰り道、宿泊訓練。友達同士で話をする。
「こんなことがあったんだって」
「ええー、こわーい」
そしてお約束のように騒いで、なにもなかったかのように、
「じゃあね」
「またね」
となる。
でも、この小説はそこで終わらない。終われない。主人公、碧さんの呟きが入ってくるから。非常に落ち着いていて、まるで日常風景の一部でもあるかのようなコメント。そこで思う。
「なにこれ? もしかして……実体験?」
そして、どうやらこの碧さん、作者さん、らしい。だって名前が似すぎてる。
それに気づいた時、全身にぞわっと鳥肌が立つ。変な汗が出る。だってもしそうなら自分の後ろにも、横にも、いるかもしれない。
ただ、見えていないだけ。
ねえ、一言言わせて。
「こえええええええんだよおおおおおおっ!」