「ええー、怖いよね」のその先

この小説に出てくるエピソードは、生きていれば数回は耳にする話。聞いたことがある話。
 学校の休み時間、帰り道、宿泊訓練。友達同士で話をする。
「こんなことがあったんだって」
「ええー、こわーい」
 そしてお約束のように騒いで、なにもなかったかのように、
「じゃあね」
「またね」
 となる。

 でも、この小説はそこで終わらない。終われない。主人公、碧さんの呟きが入ってくるから。非常に落ち着いていて、まるで日常風景の一部でもあるかのようなコメント。そこで思う。
「なにこれ? もしかして……実体験?」
 そして、どうやらこの碧さん、作者さん、らしい。だって名前が似すぎてる。

 それに気づいた時、全身にぞわっと鳥肌が立つ。変な汗が出る。だってもしそうなら自分の後ろにも、横にも、いるかもしれない。
 ただ、見えていないだけ。


 ねえ、一言言わせて。
「こえええええええんだよおおおおおおっ!」

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