職員室から始まる、本格派・異世界サバイバルストーリー

日本からはるかかけ離れた異世界へ。
職員室を含む小学校校舎の一部ごと飛ばされてしまった、教師・児童・教育実習生ら23名の日本人。
彼らの手元にあるものは、諸共に飛ばされた校舎に残されていた備蓄品のみ。
話し合い、ルールを定め、力を合わせて、これまでの日常や文明社会からはるかかけ離れた未知の異世界で生き残る術を模索し、少しずつその足場を広げてゆく。
そうした中、やがて彼らは異世界の住人達と遭遇し――

――と。
本作は斯様に、本格的なサバイバルファンタジーです。
端的に言って、とても面白いです。特に状況が大きく動く局面になると本当に先が気になって仕方なく、深夜まで延々読み勧めて翌朝ひどいことになるなどしていました。自業自得ですが。

そして、本作の舞台はきわめて本格的な「異世界」です。まず言葉すら通じないので、異世界人との遭遇後は丹念にコミュニケーションを重ね、少しずつ言葉を覚えていっています。アイヌ語が研究されてゆく過程など想起させられました。
また、異世界ファンタジーらしく魔法なんかの要素もありますが、正直あまり都合のよいものではありません。
使えればそこそこ便利そうなものではあるのですが、魔法で困難を切り抜けるといったシチュエーションは見当たらず、現状、物語を動かすギミック的な存在として俎上に上がっているといった状態のように感じます。23名の異世界転移者は魔法を使える者と使えない者とではっきり分かれており、これが何を意味するのか、魔法が今後どういった使い方をされるのかなど、気になる点は多くあります。

そして、そもそもの「異世界」。
果たしてこれが真実、「異世界転移」であるのか? というところにすら、大いなる疑問符が存在し……

と、ひとつひとつ触れていくと本当にキリがないのですが、異世界でサバイバルしつつ元の世界への帰還を目指す――という筋立ての物語として、間違いなく良質の一作であると思います。
異世界の物語は主人公たちに都合よくはありませんが、決して都合悪く酷薄でもなく、時に和気藹々としながら一定の緊張感を常にはらんで進行してゆきます。このバランスがとてもよいと思うのです。

この物語が、果たしてどこへ辿り着くのか。とても楽しみです。私が。
もしお時間ご都合よろしければ、是非ご一緒に。彼ら23名の異世界サバイバルの行く末を、追ってみてはいただけないでしょうか。

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