――その男は、筋肉(マッチョ)だった。

それは、召喚獣というにはあまりに筋肉すぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして筋肉すぎた。
それは正に、”筋肉(マッチョ)”だった。


――以上の前振りは本編とは九分九厘関係ありませんが、ともあれそんな感じのネタをレビューという場においてぶち込んでみたくなる筋肉コミカル異世界ファンタジーが本作です。

古来より筋肉とは力の象徴でした。
たとえば日本における異世界ファンタジーの草分け的な存在である「グイン・サーガ」の主人公グインは、豹頭にパンツ一丁の全裸マントマッチョでした。豹頭であるのを別とすればマチョダさんと同じカテゴリの存在であると言って過言ではないでしょう。筋肉だから。いや本当にそうか?

閑話休題。

古来より筋肉とは男の象徴でした。
男くささが鼻先まで漂ってきそうなめくるめくグイン筋肉の描写に眩暈にも似た感覚を覚えた遠い日が思い起こされます。本作で描き出されるのは思うにそういうのとはちょっと違う感じの筋肉なんですが、まあ、それはそれとしまして。
つまるところ、この辺りの文言は九割がた蛇足なのですが、こういうネタをぶっこみたくなる愉快な筋肉異世界ファンタジーが本作です。面白いよ。


――異世界より召喚されたる男・黒髪のスポーツ刈り・白いタンクトップにデニムのショートパンツ・そしてマッチョである町田元気あらためマチョダ・ゲンキはペンチプレス中に現れた謎の魔法陣に吸い込まれ異世界へと召喚された。
本来、召喚者に強大な魔法の力を授けるはずの召喚獣。しかしマチョダは、あろうことか「魔力ゼロ」の大ハズレ。まあ、タンクトップでマッチョなだけのおじさんだからしかたないですね。魔法や不思議とはこの世で最も縁遠そうな存在ですもん。古典ファンタジー的にはMP0の「せんし」みたいなアレですもん。

しかし、「ハズレ」であるはずのこのマッチョ。ただのハズレでは終わりません。
その筋肉の力であらゆる問題を筋肉的に粉砕してゆきます。筋肉 is パワー。パワー is 筋肉。難しく考えるべきことなど何もありません。筋肉があればだいたい負けない。

筋肉ってそういうものだっけ? といった類の突っ込みは棚上げしつつ、魔法と幻想満ちる異世界を少女と共に旅するマッチョの雄姿にお願いマッスルしましょう。
さっきから筋肉の話ばかりしてますが、ヒロイン担当の魔法使いモカをはじめとする周りのキャラもみんないい感じのいい子が多くてほっこりできます。

気軽に愉快に読んで笑って、時々ちょっとしんみりできる。
楽しいライトファンタジーです。

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