ゆかし妙なる風来坊、その旅路の一端

 風流を愛し諸国を遍歴する主人公、清十郎と彼が雨宿りに留まった名もなき桜の古木を巡る一幕。
 人ならざるあやかし、その悲哀を前にしながらも美しさを見出し寄り添う清十郎の生き様はまさに粋で鯔背と言うべきでしょう。作中は風情あふれる場面の他に荒事も繰り広げられましたが、戦闘描写も爽快で、軽やかに立ち回る清十郎の様子が目の裏に思い浮かぶよう。
 妖しく怪奇なる雰囲気もありながら、勧善懲悪による爽快感や義理人情の温かみもあり、晴れやかな読後感の一篇でした。機会があれば、風雅を愛でる清十郎の旅路と再び見えたいな……とひっそり願っております。

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