その旅路は、少女の“生”を変える

自殺したことをきっかけに主人公が地獄へと落とされたところから物語が動き出す異色のファンタジー。序盤は主人公である伊織が地獄にて罰される過酷なシーンが続きますが、とある出来事によって彼女は異世界へと迷い込み、自らの起こした過ち、そして魂の在り方について見つめ直します。
主人公である伊織は序盤では被害妄想が強めで自滅的とも思える立ち振舞いをすることが少なくありません。読んでいて共感出来る部分があまりないというところが非常に斬新で、むしろ第三者として読み進められたので新鮮でした。しかし全く好感を抱けないという訳ではなく、現代に生まれたが故に思い悩む場面も多く、だからこそ行命との旅で心身共に成長していく伊織は応援したくなります。
キャラクターの精神描写だけではなく、作り込まれた世界観や細やかに、そして時には良い意味で容赦のない筆致もこの物語を彩る色彩のひとつだと思います。伊織の歩んだ道のり、そして軌跡が彼女に何をもたらすのか。一度死んだからこそ意味がある伊織の生きざまを、その旅の終わりまで見守りたくなる作品です。

その他のおすすめレビュー

硯哀爾さんの他のおすすめレビュー38