影ある月は美しく、そして愛おしい

ドラッグストアで働く主人公の日芽子が、男性の心と女性の体を併せ持つ月彦と出会ったことで動き出す物語。
拒食症や性の認識といった、遠いようで手を伸ばせば届きそうなところにある、私たちにとってもリアリティーのあるテーマですが、流れるような文体と美しく透明感のある情景描写によって美術品のように感じながら読み進めています。
日芽子と月彦の関係性は儚く、ともすればあぶくのように弾けてしまいそうな危うさを孕んでいますが、それ以上に培われる愛情は深く、そして温かい。不器用ながらも距離を縮めていく二人に、どのような形であれ幸せになって欲しいと願ってやみません。
美しいものを感じたい、と願う人に、とびきりの『美』を与えてくれる作品です。是非ご一読ください。

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