第2話 幽霊狩り(ゴーストハント)とは?

「この地下室に居た幽霊は全て退治したから安全よ」

「はあ・・・・・・」


 黒づくめの女性に助けられた私は安全地帯だという工房だった地下室に連れてこられた。

 彼女は数時間前、雨宿りする為にこの屋敷に入ったところ閉じ込められ、自力で脱出しようと地下室を探索し、幽霊を倒しきった所で嫌な予感がして上に行くと襲われてる私を見つけたそうだ。


 蝋燭のせいか地下室は明るく、ほんのりと良い匂いがする。

 どうやら、お香を焚いてるらしい。


「それ、幽霊避けのお香なの。これがある限り幽霊は寄ってこないわ」

「へえ、そういうのがあるんですね。とても良い匂いです」


 このお香のおかげか心が落ち着いてきた。

 私は先程、助けてもらった御礼を述べ、名を名乗ると。


「サラちゃんって言うのね。私はユエ、幽霊狩りゴーストハントを生業にしてる魔女よ」


 黒づくめの女性は名乗った。


「幽霊狩り?」


 彼女、ユエと名乗った魔女から聞き慣れない言葉、幽霊狩りに私は反応する。


 この世界において幽霊ゴースト魔物モンスターと同じような存在、人を襲う怖い存在という認識だ。

 魔物と違う点は退治が出来ない事。


 実体を持たない幽霊は退治できない、遭遇したら絶対に逃げろ。そう言われて育った。

 それに錬金術師は幽霊より魔物の方が関わりが多いし。ほら、錬金術に使う素材とか。

 だから、幽霊狩りという言葉を聞いたことなかった。


「まあ、魔物と違ってメジャーじゃないから知らないわよね」


 私の反応にユエさんは朗らかに笑う。

 きっと私みたいな反応、何度もされてきたんだろうな。


「幽霊って倒せるんですか?」

「倒せるわよ。この月光石で実体化させればね」


 疑問にユエさんは淡い紫色の光を放つ石を取り出し見せてくれた。


 月光石。

 その名の通り、月の光を浴びせることで一週間だけ光り続ける石だ。

 綺麗な光を発するだけで、貴族のご令嬢の間では動物や神話や恋愛物語に出てくる英雄に石を象って飾るぐらいのもので錬金術においても重要視されてない鉱物だからかマイナーの部類に入る。

 その石が幽霊を実体化させる力を持っているなんて知らなかった。


「貴方を襲っていた幽霊もこれも実体化させたのよ。あの幽霊は目を合わせた相手を呪い殺す力を持ってるから実体化させた後に目を潰してからね」


 そう言ってクルクルと愛用の武器だと思われる二丁拳銃を回すユエさん。

 私を襲った髪濡れ幽霊、そんな恐ろしい幽霊だったんかい!!

 ユエさんに助けられて良かった自分!!


「あの時は本当にありがとうございました!!」

「あら、別に良いわよ。私は自分の仕事をしたまでだから」


 改めて御礼を言うとユエさんはクスクスと笑いながら今度は手に持っていた宝石をクルクルと回す。

 回る度に蝋燭の火があたってキラキラと光る宝石に目を奪われる。

 この宝石、何処で手に入れたんだろう。


「この宝石が気になる?」


 見ていた事に気がついたのかユエさんが私に話しかけてきたから素直に頷くと。


「この宝石が私が幽霊狩りをしてる理由よ。幽霊を倒すことによって手に入る宝石、その名もゴーストジュエル」

「ゴーストジュエル・・・・・・」

「倒された幽霊の感情が宝石になったものらしいけどよく解らないものなの」


 倒された幽霊の感情が宝石化したもの。

 そう教えられるとあれだけ綺麗だと思っていたものが禍々しく見える。

 だって、私を呪い殺そうとした幽霊のだぞ? 嫌な感じ持つの当たり前じゃん!!


「どうして、そのゴーストジュエルをユエさんは集めてるんですか?」

「集めてないわ。物好きの貴族に売ってるのよ」

「売ってるんですか?」

「幽霊を倒すことでしか手に入らない宝石だからこそ、これを欲しがるコレクター気質の貴族達が高値で買い取ってくれるの。だから、絶対に手に入れないと」


 高値で売れる。

 高 値 で 売 れ る。


 その言葉を聞いた私は。


「あの~、ユエさん?」

「なにかしら」

「私に幽霊の倒し方教えて下さい!!」

「はい?」


 ユエさんにそう切り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る