第12話 試してみよう

「あれがいいんじゃない?」


 地下室から出てこっそりと師匠が指を差した先に居るのは絵本に出てきそうな可愛らしい幽霊。

 円らなお目々が可愛いです。

 あれを倒すの? 凄く倒しづらいんですか・・・・・・と戸惑っていたら。


「見た目は可愛いけど、人の恐怖心を餌にする幽霊だから餌欲しさに殺しにかかってくるわよ」


 ユエさんから一言。


 前言撤回。

 倒そう。

 殺してくる幽霊は倒そう。

 でも、どうやって近づく? バッタリ会ったら殺しにかかってきそうだし。


「サラちゃん、あの幽霊は視覚以外は全然で目の前に人が現われない限りは反応しないの」

「つまり目の前、あの幽霊の目の前に出ない限りは私達、人間を感知しないという事ですか?」

「そうそう。背後から狙うのが一番ね、いける?」

「はい、いけます!」


 キリッと返事をしてからユエさんのアドバイスに従って、そろりと幽霊の背後に回り、近づいて、幽霊除霊掃除機のスイッチを押すと吸込み口に付いた月光石から。


 にゅい~んと淡い紫色の光りを発光させるスライムみたいなのが出てきて、幽霊目掛けて突っ込んだ!!


「はあっ!?」


 幽霊はギャッ! と小さな悲鳴を上げてゴーストジュエルを残して消えてしまった。


「え? なに? なんなの?」


 困惑しているとにゅい~んと月光石から出たスライムがやりましたぜ! と報告? しに来た。

 円らな目と小さなお口が可愛いです。えっへんとしている所も可愛いです。

 これってスライム化ってやつ? でもスライム化は高濃度魔力を注がないと出来ないから私の魔力じゃスライム化なんて出来ない。

 どうしてスライム化を?


「ん~、スライム化は高濃度魔力を注がないと無理だから・・・・・・。ねえ、ユエ、サラにあげたあのライトの魔力パックに貴方の魔力入れた?」


 呆然としている私に代わり月光石のスライム化の原因に気付いたアーサー師匠がユエさんに聞く。


「ええ、入れたわ。流石に魔力パックを空っぽのまま渡すわけにはいかないし・・・・・・」

「成る程ね。ライトの魔力パックに入ってたユエの魔力と錬成中に注いだサラの魔力で高濃度魔力になっちゃった訳か~」

「ええええええ~」


 元からライトの魔力パックに入っていたユエさんの魔力と錬成中に注いだ私の魔力で月光石のスライム爆誕!! したってわけ!?

 きっと、比率はユエさんの魔力9.5:私の魔力0.5だ。


「そんな事ってあるんですか師匠!?」

「いや、メチャクチャ珍しい事例だよ。流石に相性があるからね~。だけど月光石の魔力浸透率が高いからこそスライム化が容易に出来ちゃったのかも」

「ええええええ~」


 私、驚くことしか出来ません。

 スライムは私の様子にハテナマークを浮かべていた。そんな姿も可愛いね。

 あっ・・・・・・、トラちゃんがスライムを睨付けている。ポッと出がマスコット枠を取るなと思っているのだろうか、そんなトラちゃんの頭を撫でてあげるとにゃ~と嬉しそうに鳴いた。癒やし。


「・・・・・・・・・・・・魔力浸透率によってスライム変化率が変わるとしたら。ふむ、屋敷を出たら実験してみましょう。これで容易くスライム化出来る方法が見つかれば貴族のお嬢様方にペットスライムとして売れるかも」


 師匠がメモを取り出して呟いてるけど、ニシシと笑ってるから良からぬことなんだろうな~。

 ユエさんは月光石スライムを撫でている。どうやら、ぷにっとした感触が気に入った様子。ユエさんって、余り表情を見せないクールな人だと思ってたけど、あんなに柔らかく笑える人なんだ。


 とりあえず月光石スライムって長いから名前を付けよう。

 う~ん、なんて付けようかな~。


「ねえ、サラちゃん。この子の名前はプニルなんてどうかしら?」

「ユエさん、その名前はダメです。怒られます」

「え?」


 名前は安易だけどぷにちゃんになりました。

 ぷにぷにしてるから。


 そうそうゴーストジュエルはちゃんと回収しました。

 攻撃はぷにちゃんに任せて、掃除機はゴーストジュエル吸い込み機として活動してもらいます。

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