第7話 中庭へ

「中庭の物置小屋の鍵?」


 と書かれた名札が付いた鍵をトラちゃんから渡された。


「トラちゃん、何処で見つけたの?」

『にゃ~』

「そっか~、覚えてないか~」


 トラちゃんの返事に適当に答えながら中庭、温室の男を思い出す。


 奇妙いや悍ましい姿の男、追われた時の恐怖を思い出し身震いする。

 でも、温室から出られないから温室に入らなければいい話。

 よし!


「トラちゃんが持ってきたし行ってみるか」

『にゃ~!』


 そう言うとトラちゃんが嬉しそうに鳴いた。




「さて、どうしようか・・・・・・」


 私はドアを少し開けて外の様子を伺っている。

 理由は。


「あのメイド達、どうしよう」


 廊下に手に掃除道具ではなく刃物や尖った木の棒を持った顔がない、いや顔がまるで刃物か何かでそぎ落とされた殺る気まんまんのメイド、命名・デスメイドが四人くらい彷徨いていた。


 セバスチャンさんにこの部屋まで案内してくれたときは居なかった、きっとセバスチャンさんの力で押さえ込んでいたのかもしれない。

 ん~、レシピでこういう時に役に立ちそうな除霊道具を探してみよう。


 レシピ本をペラリとめくり最初の1ページに目がとまった。


「幽霊退散ボール・・・・・・?」


 幽霊避けのお香に使われる薬草、火薬、スライムの中心部と言われているスライムコアで作るボール型の道具。幽霊を一時的に行動不能にさせられるらしい。

 月光石がなくても倒せる除霊道具を作る目的で作ったものらしいけど月光石で実体化させなければ幽霊は倒せないと解りお蔵入りしようとしたが幽霊を一時的に行動不能にさせる事は出来るからレシピに載せたと書かれていた。

 これなら戦わなくても済むし、ユエさんから貰った月光石ライトは魔力が切れれば使い物にならないからライトの節約にもなる、これを試してみよう。


 師匠から何でも入るマジックバックと共に持ち運び式の錬成セットがあるから、これで作れる。でも持ち運び式だから小さすぎて大量に作れない、一個か二個が限度。

 火薬は攻撃用の錬成道具を作るのに使うから常に持ってる、スライムコアは解体屋のバイトをしたときに解体屋のおっちゃんから頑張ったからとオマケとして貰ったのがある。ありがとう、解体屋のおっちゃん!

 問題は・・・・・・。


「幽霊避けのお香の薬草、ヒノシズクは持ってない」


 薬草、ヒノシズク。

 朝日を浴びると甘い蜜を出す事からヒノシズクと名付けられたこの薬草は回復力を向上させる力を持つ。乾燥させハーブティーにすることも、甘く心安らげる匂いは女子に人気だ。

 聞いた話だけどとある地域ではお盆の最終日に乾燥させたヒノシズクを焚き、帰ってきたご先祖様に天国に帰る日だと知らせる風習があるとか。

 錬金術においても回復用の薬に使うポピュラーな薬草で簡単に手に入るが。


「基本、錬成道具しか作らないから薬草は持ってないんだよね~」


 薬作りはダメって訳じゃないけどCランクぐらいの薬しか作れないのよね~。薬は最低でもBランクでないと売れない。

 逆に道具は上手くいけばAランク作れて高値で買ってくれるから道具中心に錬金術師として生計を立てている。

 でもね世間じゃあ、錬金術と言ったら薬だからか道具の依頼が少ない、だから余り儲けてないのが現況なのですよ。


『み~』


 やれ困ったぞと思ってたらトラちゃんが紅茶の袋を咥えてきた。

 この子、また何処から持ってきたの? と疑問に思いながら受け取ると。


「ヒノシズクのハーブティー?」


 トラちゃんが持ってきたのはなんとヒノシズクのハーブティーの袋だった!!

 しかも中身はまだある!!


「トラちゃん様~!!」

『みゃ~! みゃあ~!』


 感激してトラちゃんに抱きつくと止めろと怒られました。

 すまぬ。

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