第8話 中庭へ②
持ち運び式錬成釜に錬成液――錬成品を作る際に必ず必要な液体(毒がありそうな色だけど無害だから口に入れても平気)を入れ、コンロに火を付ける、液が温まったところで火薬、スライムコア、ヒノシズクを入れ、液が無くなるまで混ぜる。
液体が無くなると材料が溶け合った状態で現われ、更にそれをやや固くなるまで混ぜ、丁度良い固さになったらボール形状にする。
これで幽霊退散ボールの完成!!
投げると爆発してヒノシズクの匂いが充満する仕組みになっている。
これならあのデスメイド達を一時的に行動不能にして通り抜けられる・・・・・・ハズ。
どうやって、一気にデスメイド達に退散ボールを投げつけようと全く考えてなかった事に気付いた。
複数作れれば良かったんだけど、持ち運び式の小さい錬成釜じゃ一個が限度。
たった一個の退散ボールでどうやって四人いるデスメイドを行動不能にするか。
『にゃ~』
考えてたらトラちゃんがドアノブを回して自ら出て行った。
「トラちゃん!!」
慌てて追いかけるとトラちゃんはデスメイド達を前に動じることなくポンッ! と頭上の双葉から臭いのか良い匂いなのか不思議匂いをする花を咲かせた。
あの花はマンドラゴラの花だ。ニャンドラゴラはマンドラゴラを品種改良して生まれた歩行型植物だから咲かせることが出来るのか。
でも、なんでそんな事を? という私の疑問はすぐに消えた。
デスメイド達がフラフラと匂いに誘われるようにトラちゃんに近づく。
トラちゃんはデスメイド達を誘い出すためにマンドラゴラの花を咲かせたのか。
どうしてそれを知ってるの? という疑問は置いといて、私はタイミングを狙って物陰から退散ボールを投げた!
――ボンッ!!
という音と共に飛び散る火花と充満するヒノシズクの匂い。
ヒノシズクの匂いのせいかデスメイド達は何かに怯えるように消えていった。
「はあ~、ありがとうトラちゃん」
『にゃ~♪』
頭を撫でてあげると喜ぶ姿が可愛い。
色々とトラちゃんに関して不思議に思うことはあるけど今は中庭を目指そう。
デスメイド達が彷徨いていた廊下を抜け、中庭へと通じる扉に向かおうと走る。
ちょうど階段を降りようとした時だ。
物陰から鉈が振り落とされた。
「うわっ!!」
スレスレに振り落とされた鉈により私は思いっきり尻餅をつき、座り込んでしまった。お、お尻が痛い!
物陰からぬぅ・・・・・・と現われたのは鉈を持ったデスメイドだった。
隠れてたの!?
動かぬ私にデスメイドは鉈を振り下ろす。
トラちゃんがデスメイドに体当たりをするけど実体を持たない体には効かない。
もうダメかもしれない。そう思うと体が動かなくて振り下ろされる鉈は見ている事しか出来なかった。
お父さん、お母さん、師匠、そして、あの高慢ちきのネロの顔が過ぎりながら目を閉じる。
――にゃ~ん。
目を閉じる瞬間。
澄んだ鈴の音のような猫の声が聞こえると鉈を持っていたデスメイドの手が吹っ飛んだ。
驚愕で目を見開くと。
小さな月光石が埋め込まれた首輪を付けた黒猫が私を守るようにデスメイドとの間に立っていた。
デスメイドは吹き飛ばされた自身の腕を見てワナワナと震えると無事な方の手で鉈を持つと黒猫に振り下ろした。
黒猫は鉈を華麗に躱すと首輪に埋め込まれた月光石が光り、デスメイドを実体化させると黒猫は五匹に分裂しデスメイドを切り裂く。
デスメイドは黒猫の攻撃に奇声をあげるとカランとゴーストジュエルを残して消えた。
黒猫は五匹から一匹に戻ると毛繕いを始め、私は色々とありすぎて黒猫ちゃんの毛並み綺麗だな~とアホなことしか考えてなかった。
「ノワール! 良くやった!」
そんな私の耳に凜とした聞いたことのある声が。
コツコツと靴音を響かせてやってきたのは。
「サラちゃん、大丈夫?」
あの時、離ればなれになったユエさんだった。
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