第9話 中庭にて
――ユエがサラと合流する数分前。
※ユエ視点。
中庭で見つけた小さな小屋。
そこから恐らく内側から強くドアを叩く音。
もしかして!?
「いい加減に出しやがれ!! このアタシを此処にいつまで閉じ込めておくつもり~!!!!!?」
サラちゃんだと思って近づいたけど、絶対にサラちゃんじゃない。
一体、誰? 叫んでる内容からして、この屋敷の被害者みたいだけど・・・・・・。
「ねえ! そこの貴方! 聞こえる!?」
聞こえるように大声でドア越しの人物に話しかけると聞こえたのは叩く音はピタリと止んだ。
これで静かに話せるかしら。
「誰か居るの?」
「私の名はユエと言います。貴方も閉じ込められているのですか?」
「数日前からね。貴方もって事は貴方もこの屋敷に閉じ込められちゃったわけ?」
「はい、そうです」
ドア越しの返事に閉じ込められた人物は先程の台詞からは想像出来ない程、冷静であるという事は判断した私は言葉を続ける。
「私は雨宿りでこの屋敷に入ったら閉じ込められました。貴方も?」
「アタシも同じよ。雨宿りで入ったら出られなくなっててね。出るために彷徨いてたら此処に閉じ込められたってわけ」
「そうなんですか」
「ねえ、外に居る貴方からドアに何か魔術か何かで施されてるって解る? 壊そうとしてもビクともしないのよ」
そう言われ私はドアを見てみる。
一見、ごく普通の木造のドア。だけど・・・・・・。
「・・・・・・細工されてますね。恐らく盗難防止用の魔術式が組み込まれてます。正規の鍵でないと開かないようになってますね」
魔女、魔力を見る事が出来る私だからこそドアに魔術式が組み込まれている事が解った。
ドア越しの人物は話を聞いて、そっか~と少し絶望したような声を上げる。
「はあ~・・・・・・。つまり、鍵がないと一生出られないってわけね」
「そういう事になりますね。よければ、探してきましょうか?」
「・・・・・・・・・・・・何が望み?」
どうやらドア越しの人物にはずっと怪しまれてたみたいね。
色々と話してくれたけど信頼できるかどうかの確認だったのかしら。
だけど、鍵の件で怪しいと判断したようね。無償で他人のために動こうとする人間なんていないもの。これは失敗したわ。
世の中、サラちゃんみたいに素直な人ばかりじゃないか。
「望みですか? 強いて言うならお互いに協力して屋敷から出てほしいぐらいですかね」
だから、私の要求を素直に話した。
さて、どう答える?
「・・・・・・解った」
「それじゃあ、私は鍵を探してきますね」
※サラ視点。
「それで屋敷に入ったら爆発音が聞こえて見に行ったら襲われそうになったサラちゃんを見つけたの」
ユエさんから中庭であった事を話を聞きながら中庭へ向かう。
どうやら、中庭の物置小屋に閉じ込められた人が居るようだ。
助けられたあと、これまでの話をユエさんにしたとき中庭の物置小屋の鍵を持っている事を話してある。
ユエさんも鍵を持ってきたトラちゃんを怪訝そうに見つめていたけど、にゃ? と可愛く鳴かれて、少しときめいたのか顔を赤らめてトラちゃんから目を逸らしていた。
あの月光石の埋め込まれた首輪の黒猫ちゃん、ユエさんの使い魔なんだって。
ユエさんが呼んだと同時にユエさんの影に入り込んだの見て驚いちゃったよ。
遠距離攻撃するときにはいつも呼び出すんだって。
遠距離攻撃か。
レシピ本に遠距離攻撃できる道具あるか探してみよう。安全地帯から攻撃って大事だよね?
特に幽霊に遭遇することなく物置小屋に着いた。
私は迷うことなく鍵を使い開ける、ガチャリと解錠の音が聞こえるとグイッとユエさんに後ろから引っ張られた。
え? っと思ってたら。
「うおりゃあああああああ~!!!!!!」
ドアが明け放れた途端に閉じ込められた人物が蹴りを繰り出してきた。
もし、あのまま立っていたら蹴られてた!!
怖くなってひぃ~と声を出してユエさんの後ろに隠れる。
「あれ? 居ない?」
「あら助けてあげたのに攻撃するなんて酷いわね~」
ユエさんが嫌みたらしく言うと閉じ込めれた人はギッと睨付ける。
そこでようやく私はその人が私のよく知ってる人だと気付き。
「あ、ああああああ、アーサー師匠!!」
思わす声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます