第6話 アリシア・ローランドのレシピ本
一冊の古い本。
本の表紙にはアリシア・ローランドという名前が書かれているだけ。
私は恐る恐るレシピ本を受け取った。
ズシリと私の手に本の重さがのし掛る。
「錬金術師と言っても私はまだ新人で、それに知り合って間もない私で良いですか?」
本の重さからアリシア・ローランドが多くの錬成薬や錬成道具を開発してきた事が伝わって、新人のしかも知り合って間もない信頼できる存在なのか解らない人物に渡して良いのか思わず確認してしまった。
「貴方様で良いのです、いや、貴方様だからこそアリシア様のレシピ本を受け取って欲しいのです」
真剣な顔でそう言われた。
でも、私だからこそってどういう事?
そんな私の疑問を言う前にセバスチャンさんの体はキラキラと光り出した。
「どうやら、私の心残りは解消されたようです。私の勝手な願いですが、アリシア様の意思をどうか繋いで下さいませ」
フワッと光り、そしてセバスチャンさんはカランとゴーストジュエルだけを残し成仏すると綺麗な部屋は一気に煤だらけの部屋に変わった。
これがこの部屋の本来の姿なのだろう。
取り残された私は。
「ど、どうすればいいの?」
困惑しながらも私は考える。
セバスチャンさんはアリシア・ローランドの研究が心残りだったと言っていたのに私にレシピ本を渡したときに。
――どうやら、私の心残りは解消されたようです。
そう言った。
どういう意味で言ったの?
本当は研究が失敗に終わった事を知っていて、その研究を私に?
でも私だからと言っていた。
私とアリシア・ローランドに何か関係があるというの?
解らん。
全然解らない。
だって、私は錬金術師の両親の間に生まれたごく普通の女の子ですよ?
両親が二人とも錬金術師だったぐらいしか特筆するのないですよ?
解るわけないじゃん!!
解らない事は放っておいて、このレシピ本を見てみよう!
変に意気込みながら表紙をめくると。
――この本は私、アリシア・ローランドが幽霊を倒してゴーストジュエルを手に入れる為に発明した除霊道具のレシピである。
最初の1ページの出だしにはそう書かれていた。
「除霊道具?」
――除霊道具だけじゃなく、幽霊を利用して使う道具や幽霊と意思疎通を可能にする道具のレシピとかもあるよ! ふふ、幽霊を知るために除霊するだけじゃなく利用したり会話出来る道具作れるなんて、私ってば本当に天才!!
うん、あれだ。
アリシア・ローランドって人は私の師匠みたいな人だ。
50年前にも居たんだ、師匠みたいな人・・・・・・。
勢いよく読み始めたら冒頭で力がへにゃ~と抜けていく感じがする。
でも、除霊道具か。
戦う術がない私でも除霊道具を作れば幽霊に対抗できる。
レシピの中に作れる除霊道具あるかな~?
レシピ本を読み進めようとしたら。
『みゃ~!』
ニャンドラゴラことトラちゃんが何かを咥えて持ってきた。
「トラちゃん、何を持ってきたの~? これは・・・・・・、鍵?」
トラちゃんが咥えて持ってきたもの、それは中庭物置小屋の鍵と書かれた鍵だった。
※第三者視点
「此処にも居ないわね」
手足の長い黒い影を倒したユエは何処かに連れ去られたサラを探しに屋敷内を彷徨いていた。
「屋敷全体に何か仕掛けを施したのか人探し用のクリスタルが無反応で使い物にならないし、虱潰しに探すのは時間がかかる。さて、どうしたものか・・・・・・」
独り言を言いながら彷徨っていながらもユエは中庭に通じる扉を見つけ中庭へと足を踏み入れる。
中庭の中央にはドーム型の大きい温室、その温室だけ廃墟の中にあるというのに綺麗なままの状態にユエは違和感を感じ、顔を顰めた。
「嫌な感じね。早く、サラちゃんを見つけないと。先ずはこの辺りを探してみましょう」
ユエは温室に入らず、温室の周りの探索を始める。
そこでひっそりと林の中に隠れるように木の小屋を発見した。
「小屋? 物置小屋かしら?」
気になり近づくと。
小屋の中からドンドンと扉を叩く音が聞こえた。
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