第4話 初っぱなから大ピンチになった
戦う技術がない私は落ち込みながらランタンを持ったユエさんの後に続いて地下室から出る。
師匠が戦う錬金術師だけど私は戦う術を学んだことがない。
師匠も私に戦闘術を教えることなんてなかった。師匠が戦えるのは自ら素材を得るため、副業として新人の頃はダンジョンに潜り冒険者活動していたからだ。
今は昔ほど潜らなかったらしいけど偶にストレス発散目的で潜ってたよ。
そんな師匠を見て、あの高慢ちき男に。
――もう少しマシな人に師事してもらえなかったのかい?
と言われたな~。
殆どの弟子募集の錬金術師がお前ばかりに注目しすぎて誰も相手してくれなかった所を気に入ったと手を差し伸べてくれたのが師匠だったんだよ!!
あ~、またムカついてきた。
もう彼奴とは合わないだろうし早く忘れなきゃ。
「ちょっと待って」
もうすぐ階段を上り終わるというところでユエさんが制止した。
「どうしたんですか?」
「さっき見た時と内装が変わってる。家具の位置も違ってるわね」
え? と思ってユエさんの背後から覗く。
探索する前に髪濡れ幽霊に襲われたから変わったかどうか解らないや。
でもユエさんがそう言うなら変わったのだろう。
「これは厄介ね・・・・・・。屋敷の内装を変えてしまう程の力を持つ幽霊がいる」
「ええ!?」
それってヤバい幽霊が住んでるって事ですか!?
無事にこの屋敷から出られるの!?
「サラちゃん、絶対に私の側から離れないで。何が起きるか解らないから」
ユエさんが頼もしい!!
今の私に出来る事は出来るだけユエさんの足を引っ張らないこと。
気になる事があっても変に行動しないで大人しくしてるかユエさんに話してから動こう。
「先ずは私が様子見で踏み込むから此処で待っていて」
「はい」
ユエさんは拳銃を構えると一歩、足を踏み入れる。
シーンと静まりかえる室内にユエさんの足音だけが響く。
くるりと辺りを見渡し。
「・・・・・・大丈夫そうね。上がってきて大丈夫よ」
「はい、解りました」
安全が確認され、上がろうとした瞬間。
後ろからグイッと強く引っ張られた。
「サラちゃん!! くっ!!」
ユエさんが手を伸ばすけど、それを何かに遮られて掴むことが出来なかった。
そのまま私の意識は暗闇に飲み込まれていった。
「・・・・・・・・・・・・よくもやってくれたわね」
一人残されたユエはポツリとそう呟き、サラを助けようと伸ばした手を遮ったもの、手足の長い黒い影を睨付ける。
「おかげさまで機嫌が最悪よ。覚悟しろ」
月光石で黒い影を照らすとユエは拳銃を発砲した。
※サラ視点
ペロペロと頬を舐められ、私は目を開ける。
後ろから強く引っ張られて、それからどうなったんだ?
『みゃ~?』
猫の鳴き声が聞こえて、私はそこでハッキリと目を開けると目の前には丸々太った茶虎の猫いや頭に双葉があるから只の猫じゃない。
ニャンドラゴラっていう猫型歩行植物だ。
錬金術師の間ではペットとして人気がある植物、どうして居るんだろう? きっと、私の頬を舐めていたのはこの子に違いない。
ゆっくりと起き上がり、辺りを見渡す。
「此処は温室?」
私が今居るのはドーム型の巨大な温室の中だった。
温室からあの屋敷が見えたから、屋敷内にある温室なのだろう。
廃墟にあるとは思えないほど緑に溢れた温室に不気味さを感じながらも起き上がり散策する。
私の側にいたニャンドラゴラもなぜか付いてきたけど一人で散策するよりマシ。
日の光が照らす温室は屋敷内とは違い、明るく暖かい。
だけど、人が一人もいない空間で綺麗に整えられた温室は異様に見えた。
歩き続けると温室の中心に着いた。
其処には一人の男が居た。
「あ、人が居る。声をかけて・・・・・・・・・・・・」
安堵したのも束の間。
私は男の姿を見て硬直する。
男の顔は半分崩れ、脳が露出しており。男の右手は巨大な園芸ばさみと一体化していた。
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