第14話 セバスチャンとメイドさん
今、私の目の前に居るセバスチャンさんは少し痩せこけていて顔色も悪い、そんな状態なのにせっせとトランクに荷物を詰めている。
それをセバスチャンを心配そうに見ながら手伝っている若いメイドさん。
二人とも近くに居る私に気付くことなく作業を続けていた。
『ふ~・・・・・・』
『セバスチャン様、少しお休みしますか?』
『いや、大丈夫だよ。早くしないと迎えが来てしまうよ』
『顔色が優れません。この後はワタクシがやりましょう』
『ビクトリア、本当に大丈夫だから。せめて、最後は自分でやらせてくれないかい』
ビクトリアと呼ばれたメイドはセバスチャンさんに不服そうな顔しながらも解りましたと答えていた。
セバスチャンさんの様子を見る限り、セバスチャンさんは病気なのだろう。よく見るとベッド近くのテーブルの上に薬。
・・・・・・・・・・・・セバスチャンさんは病気で亡くなったと言っていた。もしかして、私が見ているのは過去の出来事!?
もしそうだとしたら、二人が至近距離に居る私に気付かないのも納得がいく。
『あのセバスチャン様、その時計は持って行かれないのですか?』
もうすぐ終わるという時にビクトリアさんはベッド脇にある時計――あの光っていた時計を指差す。
セバスチャンさんは大事そうに時計に触れると。
『これは此処に置いておくことにしたんだ』
『良いのですか? これはアリシア様がセバスチャン様にと錬金術で作ったものですよ?』
『だからだよ。アリシア様から貰ったこの時計は私の半身みたいなものなんだ。私の代わりに見守って貰おうかと思ってね』
『・・・・・・セバスチャン様』
『そんな悲しい顔をしないでくれ、アリシア様を悲しませるような事はしない。絶対に元気になって顔を見せに行くから』
悲しげな表情を隠さないビクトリアさんにセバスチャンさんは優しく語りかける。
まるで親子のようだと思った。
セバスチャンさんとビクトリアさんもまた長い間、共に過したんだろう。
『ビクトリア、君にお願いがある』
『アリシア様の事ですね?』
『ああ、研究が上手くいかず最近は引き籠もってばかり、ディビット様も心配なされている』
おおっと! 此処で新たな人物名が!
ディビットさんね。私、覚えた。
『勿論ですよ! アリシア様はしっかり支えていきます!』
セバスチャンさんに元気よく答えるビクトリアさん。
大人しそうな見た目に反して元気な人だな。
『それと非常に言いにくいんだが・・・・・・』
『彼女の事ですね。最近、ディビット様に色目を使っている』
『ああ、ディビット様の事だから彼女の誘惑に乗らないと思うがアリシア様の今の精神状態を思うと何があるか解らない』
『解っております。メイド長を始め、彼女に関しては厳しい監視下に置いております。本当は辞めさせた方が良いのですかハッキリとした理由がないので仕方ないですね』
ん? どうやら問題児ならぬ問題メイドが居たようだ。
二人の会話からしてディビットという人はアリシア・ローランドの恋人なのかな? で、問題メイドは主人の恋人に色目を使っていると、これはヤバいね。
確かに辞めさせた方が一番良いけど辞めさせる理由がないって事は仕事はちゃんとしてるっぽいね。問題あるけど仕事はそれなりに出来る人って厄介。
――サ・・・・・・ラ。
ん? 誰か呼んでる?
――サ・・・ラ。
誰か呼んでるの?
「サラ!!!!!!」
思いっきり揺さぶられた事で私を呼んでいるのがアーサー師匠だという事をようやく理解した。
顔面スレスレの距離に師匠の顔があってビビる。
「え? あ? 師匠?」
「師匠? じゃないわよ!! アンタ、ボ~としてて目の焦点もあってなくてビビったんだからね!!」
「落ち着きなさいって、サラちゃん、何があったの?」
「えっとですね・・・・・・」
信じてくれるかどうか解らないけど私は有りの儘、起きた事、見た事を伝えた。
師匠は本当に? と怪訝な顔したけどユエさんからは。
「サイコメトリーね」
そう言われた。
サイコメトリーってなんですか?
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