草原の風に二人の心が揺れる 恋愛要素多めの美しいファンタジー

この物語を読んでいるときはいつも、草原を揺らす風を感じる。
その風の中に、揺れ動くタリヤとカザクの心があり、毎回胸を騒がせる。

幼い頃から一緒にいた二人。二人の願いは「これからもずっと一緒にいること」。同じ願いなのだが、カザクはタリヤよりも一歩先を歩いており、そこに男女の愛を求める。だがタリヤはまだ幼い。あと少し大人になれば受け入れられる筈の心の変化に翻弄されてしまうのだ。そんな二人のやり取りに、読者はヤキモキしつつも温かな眼差しを向けてしまうのだ。

二人がお互いの心だけに気持ちを向けていれば良いわけでは無い。彼らの暮らしを支える泉は枯れ、それが足元にある「平和」を揺さぶろうとしている。様々な思惑が渦巻く中で、彼らの運命も翻弄されるのだろうか。二人はどこへ向かって行くのだろう。物語は今、佳境を迎えている。

ここまで心を動かされるのは、心理描写と情景描写が丁寧だからだろう。美しい言葉で表現された舞台の中で、移ろう心情が繊細に描かれている。

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