寄りどりみどり

扉を開けるとそこは異様な世界だった。
薬品と花の混じった匂い。
できたての建築物の香りと、ちぐはぐで統一性のないこの空間が、これからの新しい生活と風変りな二人の関係性を示しているようだった。


◇人物紹介◇
一番の秀才であるのにいつも怪しげな装置で薬の開発に夢中な冬摩。
紫苑のことをある特別な存在として思っていることを恥じ、名前の付かない関係性について自問している。

塞ぎがちなドイツ人の母を持ち、父からは当主争いに圧力をかけられている駆。
家を避けながらも自分だけが冬摩たちと楽しく過ごしていることに負い目を感じ始める。

女性より美人な顔立ちの嘘つき、紫苑。
過去に自分のせいで母を傷つけ、それによって自分も深く傷ついた。冬摩の側にいることで毎日が確実に進んでいることを感じ、彼の安全な生活…続きを読む