第2.5話「アイドルとアルバイト」

「あああああああお金が無いよおおおおおおおおおお」

私は屋上で叫ぶ、今は昼休み、私は普段から屋上に行くタイプではないのだが、今回はどうしてもストレスが溜まり叫びに来てしまった。

「あーもううるさいなあ、ネットアイドルとして稼いでるお金じゃいかんのか」

私の友達、富谷飛鳥[とみたに あすか]がやや切れ気味に私に喋りかけてくる。

「いやさー欲しい服とかー食べたいものとか!そんなので使い果たしちゃうの」

そう、私は今をときめくネットアイドルグループ「虹星くるせいど」のメンバー、星空のスターライトこと、「いるみあ」だ。ちなみに本名は虹風ルミア[にじかぜ るみあ]、父がアメリカと日本のハーフなので私もその名残を受けたのだ。そんな私だってほしいものはたくさんある、服にゲームにグッズにご飯、特にご飯。この私のロリポップなかわいいお顔と小柄な背格好、金色に輝くショートヘアー、それらを維持するためには当然、すべて必須級のものなのだ。

「マジでお金が足りないよおおおお!!!」

「あーだからうるさいっての!」

私は再び天に向かって叫ぶ、それをまた飛鳥が怒る。あれ?無限ループかな?

「あのうぅ」

か細い声が口論していた私たちの後ろから通り過ぎる。

「バイトシタライイノデハ(小声)」

「え?」

「バイトしたらいいのでは!」

よく聞こえなかったため聞き返すと大声で返されたのでちょっとびっくりした。

今大声を出したのは私の友達柊咲耶[ひいらぎ さくや]、青色の長髪と胸にあるあのでっかい凶器が特徴だ。

Fはある、あれに関しては本当に羨ましい、私はAだぞA、因みに飛鳥はC中途半端な奴だ。

「アイッター!なにすんだよ!」

急に飛鳥がぶっ叩いてきた。

「あっごめん、なんか馬鹿にされた気がして」

確かに心の中で馬鹿にしたけどなんでばれてるんだよ。

「...でバイトかあ考えたこともなかったなあ、二人はしてるの?」

私が質問すると真っ先に飛鳥が元気に答え始めた。

「そうだなあ、私は中華屋でアルバイトしてるぞ」

中華屋か、うん髪をわざわざオレンジに染めてる飛鳥には結構天職かもしれない、顔つきもなんとなく中華っぽいし、何よりチャイナドレス来てそうだし。

「でも飲食店だとさ身バレとか怖くない?私達ネットアイドルじゃん」

そう実は私だけでなく飛鳥も、そして咲耶もネットアイドルグループ「虹星くるせいど」のメンバーなのだ。飛鳥は星明のサンライトこと「えくれあ」、咲耶は星夜のムーンライトこと「おりびあ」である。因みに二つ名は命名は私がした思春期特有のイカしたセンスの賜物である...今になって恥ずかしい。しかしもうここまで有名になったからには今更改名なんて許されない、もう後戻りはできないのだ。

「あ~それなら大丈夫、ほら私って意外とメイクするから...」

あ~と思わず相槌を打つ。飛鳥はメイクが異様にうまいのである。飛鳥程のメイクセンスなら案外身バレなんて怖くないのかも。だって普段はジト目的なかわいさを持つ飛鳥がえくれあになるとストレートな強気イケメン女子に早変わりするのだから。

「じゃあ咲耶はなんかバイトしてるの?」

私の質問に咲耶は恥ずかしそうに答える

「はい...一応、身バレは怖いし私は明日香さんみたいなメイクセンスはないので顔をさらす必要のない、牛乳配達や新聞配達なんかをしています」

こちらもかなりイメージどうりだった。咲耶は極度の恥ずかしがり屋で、アイドル活動も私があそこまで根気強くお願いしていなかったらきっとOKはもらえなかったのだろう...それと咲耶はすごい力持ちだ。この前も自販機を持ち上げて下に入っていたカードを子供のために回収してくれていたらしい。だから体力と力仕事の配達業は彼女の気質に合っているかもしれない。

「へえーみんないろんなところでバイトしているんだねー」

そういいながら私は自分がやるバイトについて昼休み中、いや午後の授業も放課後もずっと考えていた。そして帰り道。

「まず身バレしなくて、自分の気質に合ってるバイトかー難しいなー、そもそも私はいろんな格好が似あうのが取り柄だし(自己申告)、やっぱアイドルが天職!みたいなところあるしなあああああ」

こんな感じで悩みながらとある事務所を取りすぎようとする。そこで私はとあることに気づきふとあしを止めていた。

「まてよ、いろんな格好ができて身バレの心配がほとんどない...っていうか事情が事情だから関係無い...私のやるべきバイトってここでは!?」

そう考えると興奮が止まらなくなり私は猛ダッシュでその事務所へ突っ込んでいった。


やり過ぎた...さすがに反省している。流石に連兎をいじめすぎた。私は今その罰として...

「イリス!ちょっと力強い」

「はい」

連兎の肩もみをしていた。メイド服で...

「それにしても連兎、なんで貴方はメイド服なんて持ってたんですか?」

「それは内緒♪」

はぐらかされた仕方なく私は肩をもみ続ける。すると...

ガチャ!

「すいませーーーーん」

金髪の小柄でかわいい女の子がやって来た。

「やあ依頼...ってルミア...」

いつものようにすぐ仕事モードに入った思ったらそれがすぐ崩れだした。

「ヤッホー連姉!早速だけどお願いしていい?」

その態度から私はすぐ彼女がだれか理解した。彼女は多分虹風ルミア、虹風家の末っ子であり、ITubeで活動中の人気アイドルグループ虹星くるせいどのメンバー「いるみあ」らしい。正直酒に酔ってた連兎の口から出た発言だからあんまり信用してない。

「私‼ここでバイトしたい‼」

「はあ!?」

連兎が身を乗り上げて驚く。確かにネットアイドルとして活動中の彼女ならかなりがっぽり稼いでいるはずである。動機が分からない

「そんなの!ダメに決まってるでしょ!」

「いやだ!お願い!一ヶ月だけ!一ヶ月だけでいいから!」

「そんなこと言ってもダメなものはダメ」

連兎がかたくなに否定するのも無理はない連兎はここ一ヶ月程で2回も入院しているのだ。探偵が危ない仕事なのも誰より理解しているからなのだろう。

「第一探偵業がどんなに危k...」

「危険なのはわかってるもん!だから、別に危険な仕事は望まないし、給料も最低賃金以下でも文句言わないから!」

「いいや!全然わかってないよ!」

連兎とルミアちゃんの口論が激しさを増していく、このままだと一生終わらないな、私は悟り連兎に小声でとある提案を行う。

「でも連兎、ルミアは有名なネットアイドルですよ、ネットアイドル雇えば良い宣伝になりますよ」

「どこの世界にネットアイドルで客釣る探偵がいるんだ、あほか貴様」

不確、ここが探偵事務所なのを忘れていた。

「それに、私は死んでも妹たちに危ない真似してほしくないの!」

確かにごもっともだ。しかし私とてここだけは引けない理由がある。

「いいですか?この事務所は今圧倒的に人が足りてないんです!だから何としてもあと一人は確保したいんです!危険な目に合わせたくないのは重々分かります。でも給仕や聞き込みなど危険ではない仕事だってあるんですよ?それにここでの体験は確実にルミアちゃんを成長させてくれます!」

「むっむううう、わかったよ!イリスがそこまで言うなら...」

連兎もしぶしぶだが了承する。とにかく何とか説得できたことに胸をなでおろす。

「というわけで危ない仕事には参加しないこと!しっかり学業と両立させること!これを守れるなら、バイトすることを許可します。」

「うよっしゃあああああああ‼」

本当に嫌そうにバイトができる旨を伝える連兎とできると聞いて思いっきり喜ぶルミアちゃん、こう見ると両者とも感情豊かでまさしく姉妹だなあと思う。

「ありがとう!イリスさん!連姉!」

ルミアちゃんの純粋無垢なお礼にさっきまで不服気味にだった連兎もまんざらではない顔を浮かべている。やっぱり何だかんだ妹がかわいいのだろう。いや妹がじゃないか、ルミアちゃんがかわいいのか、私の頬が紅潮していく感覚を肌で感じながら私はそう結論ずけた。



だが、私たちは思ってもみなかった。ルミアちゃんの初出勤の依頼内容があんなことになるなんて...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界一下らない探偵談 タカメイノズク @takamei2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ