第2.2話「とても因果なシェアハウス」

明け方、静かな朝焼けが私の体を包んでいく今の私は久しぶりにお酒が完全に抜けた状態になっていた前に抜けたのは半年以上前だった。

「ただいまー」

私は家に帰る、私の家はシェアハウスで、ここでは高校生から私みたいな酒豪(自称)まで様々な人が暮らしている。

「ちょっと待って~」

「なんだよ」

私がそのまま玄関に行こうとするとおっとりした声で誰かに呼び止められる

「ま~た夜中に抜け出したのか」

いま私に声をかけたのはこのシェアハウスの住居人の石張愛花、普段は有名企業でバリバリに働くOL。しかしプライベートになると一転、本性であるショタコンの部分が暴れだす、こいつは土日祝日に公園に入り浸り元気に遊ぶ少年たちを盗撮してるガチもんのショタコンだ。

「こんな夜中に出歩くとか、乙女としての自覚がたりてないぞ~」

愛花は黒くて短い髪を丁寧に整えながらドヤ顔で私に苦言を呈す。まるで私を見習えとでも言いたげなオーラがビシビシと伝わってくる。盗撮してるのに。

「そんなの私の勝手だろ?」

「確かにそうだけどさーほら、私たちって一つ屋根の下で暮らす家族じゃん」

「そう思ってるのはお前だけだぞ」

「そうでもないわよ?」

ほら、と愛花はリビングのほうを指さす

そこにはこのシェアハウスの管理人がいた。ここちよさそうな顔で座りながら寝ている。

「あいつっ」

「ねっすやすや寝てるでしょ?食べたくなってくるわあ」

「お前ショタにしか興味ないんだろ?あいつは男だが高校生だ」

「あら?私は案外行けると思い初めて来たけど?」

愛花はよだれをこぼしながらその管理人を見つめる。目がマジだ、めっちゃ怖い

管理人は長い白髪とアニメの世界にいるのかと疑わしくなるくらい可愛い女顔に中性的いや完全に女の子な声と本人は納得いっていないようだがどこからどう見ても女の子にしか見えない風貌であるその透き通るようにきれいな肌に玄関の薄明かりが照らされている姿を見ると、マジで絶世の美女にしか見えない。

「この子ね?今日こそ最後まで起きて君を捕まえるんだーって躍起になってたんだよ?明日も学校があるのに、ただいまーをいうんだーってずっと言ってた」

「そう?だから?」

私はつんけんした態度を取る。本当はすごく嬉しい、でもここで素直になるとなんか負けた気がして嫌だ、我ながらわがままで子供みたいな理由だ。

私の家は昔からかなり厳しくテストでは常に1位を、成績は常に5を、友達と遊ぶ、ゲームをする、漫画を読む、そんなことは到底許されていなかった。成人し大人になってからでもそうだ親の監視は続き、規則正しい生活を強いられた。親はいつも、あなたはいつか偉大なる祖父の跡を継いで人間国宝になるべき人なのよと私に言いつけていた。

結局、親が求めているのは私、矢吹童花ではない、爺様の跡を継ぎ次の人間国宝になるものだった。お父さんが才能が持ってなかった才能を、得られなかったりそうを勝手に私に求めているだけだ。

そんなある日、道端に落ちていたお酒を拾ったまだ誰も飲んでいない缶ビールだった、誰かが何かの拍子に落としたのだろう、全然飲んだこともないそれに私の好奇心が動かされた。飲んでみたい、飲みたいと体が叫んでいるようだった。

無意識に体がお酒を流し込む。その瞬間今まで体験したことのない幸福感が私の体を包む、飲みたいお酒をもっと飲みたい、飲みたい飲みたい飲みたい飲みたい飲みたいお酒お酒お酒お酒お酒お酒お酒お酒お酒お酒お酒それ以降私は狂ったようにお酒を飲むようになった、だって飲んでいる間は責任を忘れられる、親を忘れられる、重責を、渇望をすべて忘れられる。

私はお酒に溺れていった...そして紆余曲折あってシェアハウスに住むこととなった。

そんな私だ、誰かから家族として矢吹童花として求められ心配されたのが本当に嬉しかった。

「そんなにつんけんしちゃってー本当は嬉しいくせに」

「ふん」

お酒に溺れて、毎日を自堕落に過ごし、挙句の果てに半ば強盗みたいな真似事までしている私を彼らは家族だと呼んでくれている。だから...

「ただ」

「ただ?」

「このシェアハウスに来て後悔はしてないな」

私なりの精一杯のお礼を述べる、これを言うだけで私の頬は夕焼けのごとく赤く染まり、頭にも熱が昇っていく、多分今の頭の温度ならお湯ぐらい簡単に沸かせれそうな気がしてくるぐらい、私は恥ずかしがっている。残念だが我ながらこのレベルが限界だというのが実に腹立たしい、しかしあの家ですっかりしみついてしまったこの性分はすぐに直せるものでもないので、これからちょっとづつちょっとづつお礼を言えるようになっていければいい。そう自分の中で結論づけて、私は急いで自分の部屋に帰った。

因みにそれを聞いた愛花はというと...

「デレた...あのスーパーツンデレな童花ちゃんがデレた...」

「明日はお赤飯かな♪」

否定しようがないのが悔しい、私も自分がツンデレなことは重々承知してはいる。恥ずかしいのだしょうがないだろう。

ただお赤飯はさすがに言いすぎなのではないだろうか、そんなことを悶々と考えながら床に就いた

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