世界一下らない探偵談

タカメイノズク

シーズン1『こうして探偵は好きになる』

本編

第1話 探偵はタイヘン?

「...て」

「...きて...さい」

「起きて下さい!!」

午前11時先程まで静かだった事務所に私の怒声が鳴り響く

「うぇ、あと 5 分だけ...」

「いいから起きて下さい‼」

「誰にだって寝る権利はあるはずだ!」

「残念ながらその権利は失効しました‼」

「そんなあ~」

甘ったれたことを吐くこの女がうちの事務所の所長兼探偵だと思うと結構悲しくなる。

そんな感じで私たちが言い争いをしていると

チリリン、ドアに取り付けられていた呼び鈴が静かに鳴り響き依頼人の来訪を伝える。

彼女はソファーから起き上がって依頼人の前を向く。

「やあ依頼人さん、取り敢えず向かいに座って」

彼女はややぎこちない笑顔で依頼人に話しかける。

こうしてみると真面目なんだけどなあ、やっぱりこの人は良く分からない

依頼人は彼女の呼びかけに応じテーブルで隔てられた向かいのソファーの座る。

「私は久遠探偵事務所所長兼当事務所の探偵虹風連兎です」

連兎は落ち着いた雰囲気で自己紹介を行う。

「私はイリス・結城・スレイド、連兎の助手です。それで本日はどのようなご用件で?」

私も続いて自己紹介を行い、依頼人から事情を聴きだす。

「私の名前は当麻千恵、KIMI ジャーナルっていう会社でネットニュースのメインライターをやっています。ドラゴンナイトって言えば分かりますかね?」

「KIMI ジャーナル!?それにドラゴンナイトっ て言えば今一番勢いのあるニュースサイトじゃ!?」

「えへへ、ありがとうございます」

「確かこの前、警察上層部の汚職隠蔽の件もいち早く報道してましたよね」

「それ書いたのも私です」

「ええ!?」

千恵さんの意外な素性に私も連兎も驚く。

「それで、千絵さんはなんでこの事務所に?」

「実は私ここ数日誰かにストーカーされている気がするんです」

「警察には相談を?」

「いえ...それが」

「もしかして相談...」

「してはいるんですけど、この前の記事のせいかまともに取り合ってもらえなくて」

「はあー警察器ちっさ」

警察のあんまりな対応に連兎も思わず悪態をつく

それにしてもストーカーか、確かに千恵さんはスレンダーな体に整った顔さらさらの黒髪、そして大きな胸...少し嫉妬が入った、とにかくストーカーがつくのも無理はない気がする。

「それで依頼内容は身辺の警護及びストーカーの撃退ということで?」

「はいその通りです」

「それじゃあこれから尾行の準備するので少し待ってて下さい」

そう言って連兎は荷造りを始める、それにつられて私も荷造りをする

「これいいなー、おっこれも入れよっかな」

横からとてもこれから尾行する人とは思えない声がする。

「あんまり変なものは入れないでください遠足じゃないんです」

「ごめんごめん、つい楽しくなって」

「はあーあんまり油断しないで下さいね」

「あっこのマジックハンドもってこーあとおもちゃの手錠」

「いったそばから」

この人はなっから遊ぶ気だ。

さっきこの人がまじめだとかなんだとか考えた自分が馬鹿みたいだ。

そうこうしてるうちに荷造りも終わり、実際の尾行が始まる。

「あー暇―」

「ほんと油断しないで下いよ」

実際暇なのには変わりない尾行...もとい人知れずに警護するのは相当大変だ

かなり根気がいるし連兎が愚痴を言いたくなる気持ちもわからなくない。

正直きつい

「ふわあああ」

「あくびしてんじゃん少し休みなよ」

「大丈夫ですよ、それにマジックハンドだとかおもちゃの手錠だとかを持ってきてる人一人にはできませんから」

「そんなこと言わないでよー、ほら戦場カメラマン裕介のプロマイドあげるからさ」

「誰ですかそいつ」

「各国をまたにかける伝説のカメラマンだよ今は消息不明だけど」

「ほんとに誰だよ!これだから信用ならないんですよ!」

「失礼だなーこれでも依頼は絶対に達成するものっていう教示は持ってるんだけど」

「ほんとか今一信用なりません」

「はあーマジなのになあ」

今思えばその言葉には確かな覚悟が宿っていた。

でも、私がその言葉の真の重さを理解するのはもう少し後のことであった。

千恵さんは結構多忙で結局家に帰る頃にはもう既に午前0時を過ぎていた

「やっと家に帰るみたいですよ」

「やっとかーなんて浮かれてられないね」

「まあきっとここからが本番でしょうから」

私達は依頼達成のために互いに気合を入れなおす、ふとその瞬間フラッシュの光が千恵さんのバックを照らす。その時私達はすぐに確信したついに来たのだ。

ストーカーが

「取り敢えず私がとりおさせに行く!」

「分かりました、こっちは千恵さんにこのこと伝えて避難させておきます‼」

「そっちは頼んだ」

そう言い連兎は素早くフラッシュがたかれた場所へとむかっていく

「私も伝えに行かないと」

私も急いで走りだそうとした瞬間

横から凄まじい勢いでナイフが振り落とされた、私はそれを紙一重でよけみぞおちにけりを叩き込むそして蹴りによる連撃を浴びせ落ち着いて距離をとる、見たところあいては4,50 代で小太りの中年男性で身長は大体 172 ㎝ほどだと思われる多分連兎が向かったほうがダミーで本物のストーカーはこちらなのだろう。

「まさかナイフを持っていたとは驚きですね」

しかし、ストーカーは先ほどのけりがよほど効いているのか悶絶したままで動かない、例え何とか体勢を立て直せたところでこの距離ならナイフでの攻撃は簡単によけられる。

「簡単なお仕事でしたね」

私は少し早い勝利宣言を行った、油断ともに...

少し時間を遡る

「待て待てえーい、止まらんかーい!」

私こと虹風連兎は必死に盗撮したストーカーを追っている。

「ぜえぜえどこまで追ってくるんだこの女!」

相手はもう息絶えで捕まえるのも時間の問題っぽい

「畜生!うわっこけた!」

「よっしゃ!ラッキー!確保!」

ガチャ

「さてさてストーカーのお顔はどんなのかな?」

私は倒れたストーカーに馬乗りになりおもちゃの手錠をかけ、顔を確認する、すると

「戦場カメラマン裕介⁉」

そこには私も知ってる世界的に(1 部の人)に大人気な戦場カメラマン裕介がいた。

「ちょ、なんで裕介が?」

「俺だってやりたくないさ!でも当麻千恵の最期を写真に納めろって銃で脅させれて」

「最期⁉銃⁉」

次々と不穏なワードが飛び出してくる

「つまり、真のストーカーは千恵さんを殺そうとしてて、しかもそいつは銃を持ってるってこと⁉」

「ああそうだよ!早く俺を逃がしてくれ!じゃないと俺も殺されちまう!」

やけくそ気味に裕介言う

「千恵さんとイリスが危ない!」

事態は思ったより深刻なようだ、私は急いで先ほどまで走っていた道を戻る、頼むどちらも無事でいてくれ...そう願うしかない

そして現在

「はあ、はあ、はあ」

完全に油断した。

「まさか銃を持っていたなんて」

脇腹に一発もらってしまった。

「ははこりゃ大ピンチなんてところじゃないな」

体に全く力が入らない。いや恐怖で力を入れることすらままならない。

「ひどいなあ、急に蹴ってくるなんて野蛮じゃないかあ」

「銃打ってくる奴がなにほざいているんですか」

「ん?」

ストーカーは銃を向けてくる

「ッッッッ!!」

私はひどくおびえてしまう

「君は面白いねえ、千恵ちゃんもこれぐらい怯えてくれるといいんだけど」

「千恵さんに何をするつもりだ!」

「それはお楽しみ♪」

「ふざけるな!」

「生意気な口きけるの?」

再び銃口を向けられる

「ひっ」

体がすくむ

「じゃあ死んでもらおっかな」

ストーカーが銃を撃とうとしたその時

誰かがストーカーに飛びかかる

「いったあ、よくないなあこういうのは」

「それはどっちだ」

助けに来たのはなんと...連兎だった

「イリス...油断するなっていったのはイリスじゃなかった?」

連兎は意地悪く私に行って来る

「それに関してはすいません」

私は謝ることしかできない。

「まあまあ、銃弾はどうやらわき腹を少し貫通しただけっぽいね、それでも馬鹿にできないケガだけど」

「相手が素人で助かったねープロだったら一発で即死だよ」

「本当にすいません」

ただただ謝ることしかできない

「そんな謝らなくていいよ、とにかく後は任せて」

そういった連兎のせなかは大きくかっこよく見えた

「なにごちゃごちゃ話してるのかなあ?」

「君を倒す話」

そういうと連兎は素早い身のこなしでストーカーに殴りかかる

ストーカーはその素早さに銃を構えることすらままならない様子

その攻撃は真っ直ぐストーカーの顔面にあたり吹き飛ばされようとするその時連兎は腕を捻りそのままストーカーごと拳を地面にたたきつける。

「あっけないな」

「なんだとォ!?」

ストーカーは立ち上がり銃を拾おうとする、しかしその瞬間を逃さんとばかりに連兎はストーカーの首を掴み壁に向ってたたきつける。

「さて警察じゃないけど一つ聞いておこうか、その銃どこから仕入れてきた」

首を掴みろくに動けないストーカーに連兎は尋問を始める。

「言うわけないじゃないか」

ストーカーは自分の状況がわかってないとしか言いようのない不遜な態度をとり

「お前自分の状況がわかってないのか!」

連兎はより一層言葉に覇気を込めて言い放つ

「わかってないのはそっちだ、今僕と君の距離はゼロなんだよ?」

「何が言いたい」

「つまり、とっておきは最後に取っておくものだということさ」

ストーカーがそう告げた瞬間銃声があたりを包んだ。

次の瞬間...連兎は腹部から出血して倒れていた。

「連兎!?」

「あっけないものだねえ」

倒れ込む連兎を尻目にストーカーは冷淡に告げる

「さてと、そろそろ千恵ちゃんを殺しに行こうか」

ストーカーは千恵さんのいるほうへ歩き出す...まずい千恵さんはこのことを知らない。

逃げる間もなく撃ち殺されてしまう。

私はまだ比較的軽症、止められるのは私しかいない

「まて!」

私は走りだそうとする...しかし、足が全く動かない心が完全に折れている、あいつにはかなわないと体に教えこまれている。

やばいこのままじゃ、私がもう終わりかと思ったその時!ストーカーの足を何者かが掴んだ...それは連兎だった。

「もう少しなんだ...逃がさないよ...」

連兎は地べたを這いつくばりながら必死に足にしがみついている。

「邪魔なんだよ!」

銃口が連兎に向けられ再び銃声が鳴り響く

「連兎!」

思わず叫んでしまう

もう既に連兎はゾンビかのようなむごい状態になっていた。

「まだまだ、依頼は死んでも守る!」

それでも連兎はしがみつく

「いい加減離れろよ!」

さらに銃声が響く

「アアアアアアアアアアアアアアアアア!」

とても聞いていられない叫び声があたりを包み遂に連兎が力尽きようとしたその時!

サイレンの音がなる、警察が来た?

「なんで警察が?」

動揺するストーカーの周囲をパトカーと警官が包む

「警察、呼んでたんですか」

「110 番ならすぐ駆けつけてきてくれるし」

「現行犯なら...上層部とか関係ないでしょ...」

しおれた声で連兎が喋る

「本当に何から何まで...」

私は愕然とする

本来は撃たれた私用に手配したであろう救急車は急いで連兎を運びストーカーは警官たちに取り押さえられた、すべての事件が収束していく...

「一夜明けちゃったのか...」

静かな朝焼けが大地を包んでいく...連兎は千恵さんの変わらぬ明日を守り抜いたのだ。


数日後


「すいません!まさかこんなことになっていたなんて!」

まず病院に駆けつけてきた千恵さんが謝まって来た

「いや別にいいですよ悪いのは全部ストーカーのほうですから」

連兎のいう通り今回千恵さんは全くの被害者で何も悪くない。しかしそれでは自分が納得いかないからと治療費の半額をなんと負担してくれた

その後私は 1 週間で退院、連兎の退院は 1 ヶ月後になるらしい

それとストーカーがなぜ銃を持っていたのかそれも二丁も...まあそこらへんは警察が調べてくれるだろう。

「っと、今回の事件私は結局何もできませんでした...」

私は報告書を書きながら今回のことを思い出し反省する。

すると連兎が

「そんな気にしなくてもいいって無事解決したわけだしこれから頑張ればいいよ」

っと励ましてくれた...

「それに私めっちゃ元気だし」

「いやあなた今入院してますからね?」

「確かに」

「にしてもよく何発も打たれたのに生きてますね」

「まあー相手はど素人だし最初の一発以外は大した傷じゃなかったよ」

「それでももうあんな無茶しないでください。」

「ダイジョブダイジョブもうしない」

「なら良いんですけど...」

あの時の連兎が見せたあの執念、私は一回撃たれただけで恐怖で体が動かなくなった...

なのに連兎はなんど撃たれても動いた。依頼を守るためといえば聞こえがいいが普通そのためにあそこまで命をかけることができるだろうか?

私には彼女のことがよくわからない...

そう感じざる負えなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る