第3話 バイト初日にパンツ泥棒

「ふふっふふふーん♪」


午前 6 時 30 分、私の一日は鼻歌交じりに朝食を作るところから始まる。ちなみに朝食は 2人分だ。


「連兎ーそろそろ起きてくださーい!!」


私は大声で連兎を呼び出す。連兎と私は今久遠探偵事務所に住み込みで働いている。本当 はアパートでも借りて一人暮らしをしたかったのだがここの給料だととても家賃を払えそ うになかったので諦めた。因みにここは実家からだとあまりにも遠いので、本当に苦渋の決断である。


「あと 5 分〜」


連兎からいかにもな返事をする。勿論だが 5 分で起きるわけがない、まあなんだかんだ 8 時までにはには起きるので、とりあえず朝食の完成を優先させる。


2 時間後


ぬかった、今日は寝坊の日だ。私は頭を抱える。一応 7 時にも声をかけたのだが 6 時半の 時と全く同じ反応をされた時に気づくべきだった。こうなった連兎はもう言葉では起こせ ない。前は 11 時まで寝ていたこともある。とりあえずこのままだとまたずっと寝たまま になってしまう。今日は大事な日なのだ意地でも叩き起さなければならない。


「これは...久々に殴るしかないのか」


私は拳を振るう覚悟を決め連兎の部屋へと突撃した。


「連兎〜そろそろ起きてくださーい」

「え〜あともう 5 分〜」

「いい加減マジで起きてくださーい〜また殴りますよ」

「今起きるから殴るのはやめてッッ!!」


私が脅すと連兎が凄まじい勢いで起き上がる。流石にあの時のパンチがいい教訓になって いることに私は安堵の気持ちを抱く。


「起きたなら早く朝ごはんにしますよ“あの子“が来るまでに色々準備しなきゃいけないん ですから」

「もお、わかってるよ。」


そうして私たちは張り切って東食を済ませると各々なんとなくかっこいい感じに席に着 く。暫くするとチリリンと鐘の音が鳴りドアが開く、ついに来た!私は急いでドアまで駆 け寄りこちら側からドアを開く、その先に待っていたのは..


「おはよう...ございます?これからよろしくお願いします。」


今挨拶した子が今日からこの探偵事務所にバイトとして入ることになった少女、虹風ルミ アである。彼女はハーフである父と日本人である母の間に生まれたクオータでアイドル級の美貌とスタイルを誇っている。因みに英語はてんでだめらしい。


「そんな硬くならなくていいよ、バイトとはいえここは連兎の事務所なんだから」

「そっか、連姉の事務所だしいいのかな?」

「そういいんだよ、あいつも普段からだらけきってるし」 「えなんで私さらっと馬鹿にされたの?」

「寝起きのこと覚えてます?」

「すいませんでした。」

「ふふっ」


ルミアちゃんが少し笑う、取り敢えず緊張はほぐれたみたいだ。


「それじゃあこれからルミアちゃんの仕事を説明するから、よろしくね」

「はい!」


ルミアちゃんは屈託のない天使のような笑顔を浮かべ私の話を一生懸命に聞いている。正 直めちゃくちゃ可愛い、彼女かの金色の髪が揺れるたびに辺りに漂う香水の香りがまたそ のかわいさを引き立てていてって私はおっさんか!思わずノリ突っ込みをしてしまった。


「取り敢えず..こんなもんかな?」


私はルミアちゃんに大体の仕事内容を教え、一息ついていた。ルミアちゃんは今仕事内容 を復唱しながら覚えている。一方の連兎はなんか面白くなさそうに小説“ノワトール夫人の 隠れ家”を読んでいるあいつは今が仕事中だということを完全に忘れている気がする。いや ただいじけてるだけか、連兎は最後の最後までルミアちゃんのバイトに反対していた。し かしどうしても人手の欲しかった私は何とか説得して納得させたのだ。まあ連兎のあんま り危険な仕事をさせたくないという気持ちもわかるので、ルミアちゃんに危険な仕事をさ せるつもりは毛頭ない。

私たちがそれぞれの仕事を続けていると...


カランカラン


呼び鈴が鳴った、今度は依頼者なのだろう 「こんにちは依頼人さん、取り敢えずお座りください」 いじけて本を読んでいた連兎も切り替えて仕事モードになるこの切り替えの早さどこで手 に入れたんだ..毎回そう感じる。


「それで今日はどのようないら」

「あーーーーーーーー!!さくや!」


連兎の声を遮ってルミアちゃんが恐らく依頼人のことであろう名前を呼ぶ。どうやら知り 合いらしい。


「え?え?ルミアちゃん?もしかしてルミアちゃんのバイト先ってここ?」

「うん、前言ってた姉の探偵事務所がここなの」

「へー名前が久遠だから全然気付かなかった。」

「確かにわかりにくいよね」


二人は仲睦ばしそうに笑い合い談笑している自然と依頼人の緊張もほぐれてきている気が する。


「そう言えばそっちは何でここに来たの?依頼?」

「ちょ、それは私が言うべきこと..」


さらっとセリフを遮られた連兎は餌をもらえなかったペットみたいな顔をする。 前から思っていたが連兎は探偵らしさ的なものが大好きなのだろうか? 「あっそうそう依頼があって、取り敢えず!今から私についてきてください!」 そういうと依頼人、いやさくやちゃんはすごい勢いで事務所が飛び出す、私たち三人も急 いで追いかける。


探偵移動中


さてさて我々は意外と早かったさくやちゃんに何とか追いつくことができた。ただ私と連 兎はともかくルミアちゃんはなんか今にも死にそうな顔をしている。


「それでここは?」

「学校ですよ、私たちの」


連兎が投げかけた疑問にさくやちゃんはすかさず答える。


「ここは西映高校、創立以来ずっと優秀な俳優や歌手を排出し続けている芸能界の名門中 の名門なんですよ。」


ここがあの噂の西映学校なのか、じゃあルミアちゃんもさくやちゃんも芸能界の卵という ことなのか、何か遠いものを見ている様な感覚にとらわれる、それにこういうところに来 ると何か少しソワソワしてしまう。


「それで依頼内容は...」


連兎はすぐ依頼内容を聞き始める、ただそれは..なんとも度し難い依頼だったのだ...


「パンツ泥棒を捕まえてください」


本当に度し難い


30 分後


「いやあ驚きだったねえ」

「いや驚きなんてレベルじゃありませんよ、今時そんなことをしてる奴いるっていうのが 一番の驚きです」


私達はさくやちゃんに案内されながら校内を回っている。あの後詳細を聞いた私達はより 困惑と不快感をあらわにしていた。如何やらここ最近、具体的には一週間前ほどから女子 生徒の下着...まあ包み隠さずいうとパンツが何者かに盗まれている。体育の時間で着替 えがあった後気づいたら紛失しているらしい。何を隠そう咲耶ちゃんもパンツを盗まれたことがあるという。ていうか何で体育の着替えでパンツまで履き替える必要があるのだろ うか?まあいいか、考えても仕方ないしそういうものだとして受け取っておこう。


「とりあえずまずは教室から案内しますね」


さくやちゃんはそう言って私たちを教室へ招き入れようとした..その時


「や”っ”は”て“め“え“か“犯”人”た”ろ”!!!!」

「はあ?変な言いがかりやめてよ!!!!」


扉を開けた瞬間ものすごい怒声が飛んできた...めちゃくちゃビビった..

「大体!最も被害が出ているのは私達俳優科の生徒たちなのよ!絆の深い俳優科の生徒が 大切な仲間たちにそんなことするわけないじゃない!」

「はっどうだかねえ!実際は互いを監視させて仲良しこよしのお遊戯会してるだけだろ! 腹の中では何考えてるかわかったもんじゃない!まあでも演技の練習にはもってこいなん じゃないか?狐の化かし合いは!」

「あらあら私は自分のことしか考えることのできない、自称天才肌のクズ陰キャ音楽科の 皆さんのほうがよっぽど疑わしいと思うのだけれど」

「なんだと?もっかい言ってみろ!」

「何度でも行ってやるわよ!あなた達音楽科の犯罪者予備軍どもの方がよっぽど疑わしい し気持ち悪いって言ってんのよ!」

「なんだとこの売春婦!」

「うっさいこの頭ミトコンドリア!」


あの二人罵り合いがずっと続く


「あーまたやっちゃってますよーあの二人」

「うわめんどくさ近寄らんとこ」


ルミアちゃんとさくやちゃんの反応を見る限りこのやり取りはどうやら日常的に行われて いるみたいである、それにしてもさっきから罵詈雑言がすごい、売春婦だの頭ミトコンド リアだのセンスがあるんかないんかよくわからない言葉が飛び交っている。

「ねえ?あの二人って誰なの?」

「あの二人ですか..それを説明するにはこの学校の力関係というか派閥なんかを理解し たほうが早いと思います。」


そう言うとさくやちゃんは喧嘩してしている二人を指さしながら説明を始めた。


「まずうちの学校にはみっつの科があって、主に俳優業やアイドルになるための立ち振る 舞いや演技指導を中心とした俳優科、次に歌手や作曲家になるための歌のレッスンや作曲 などが中心の音楽科、そしてとくに特徴もなく前2つの科に入れなかった子の受け皿みた いな扱いを受けている普通科があるんです」

「ただその“科”っていうものの扱いがほかの学校とちょっと違っていて、普通の学校だと 科ごとにクラスが分かれるモノなんですけど、ここではみっつの科全てをごちゃまぜにし て一つのクラスとして扱っているんですよ」

「そりゃまた珍しいもんで、ただ専門科目とかはどうするの?」 「専門科目はさすがに分かれるよー」


連兎の質問にルミアちゃんがつながる形で答える


「専門科目は一学年全クラスが同じ時間に行っててその時はクラスもばらばらになるの、 ただこの制度がとある問題を積極的に引き起こしてて」

「スクールカーストや派閥争いでしょ、それであの二人がこのクラスの 2 トップ、もう大体読めた」

「そう正解!さすが連姉!男勝りな口調のほうが音楽科のトップ海上宝理、もう片方のえらく毒舌なほうが俳優科のトップ原美沙羅、因みに私は普通科で咲耶は音楽科だよ」 「まあこの学校については大体わかった...それじゃあ二人とも聞き込みはじめよっか」


学校についてもあらかた聞き終え私達は聞き込みを始めようとしたのだが..


「残念!それには及ばない!」

「あ?」


連兎は睨むように声のした方向を向く..そこには白衣を着ている長身で黒髪の女といか にも探偵らしい服を着た赤髪の少女が偉そうに仁王立ちしながら立っていた。


「お前らは!」


連兎はこの二人が何者なのか知っている...因みに私も、そして私たちがこいつらが大嫌いだ。


「そう私こそ!!探偵事務所“蛍火”のエース!!探偵 S!!」

「同じく探偵助手カニカマ」

「「二人合わせてチーム MM!!参上!!」


二人の名乗りが終わり、辺りは...静まり返っていた。さっきまで喧嘩していた二人まで こちらを向き何かかわいそうなものを見る目で見ていた。

S はゴホンと咳払いをして私達に話しかけてくる


「君たちは来るのが遅かったねえ既に事情聴取は完了済さ」

「いや回れていないところは結構ある」

「シャラップ」


S がものすごい勢いでカニカマの口をふさぐ余程事情聴取が終わったことにしたいのだろ う。蛍火の探偵とは大体こういうやつらなのだ。私たちみたいな弱小探偵事務所に明らか に喧嘩を売ってくる最低な奴らなのだ。


「とにかく!事情聴取ならもうすでに完了してるし、何なら教えてあげよっか?」

「いやいいよ」

「え?」

「私お前のこと嫌いだし、第一信用ならないし、情報は自分の足で稼ぐ派なのさ」



S はまさか情報提供を断られるとはと言った顔でこちらを見ている傑作だ。よくやった連兎


「これだから!弱小探偵は嫌いなんだよ!」

「それで断られたけどどうするの?」

「ふん!もう一回聞き込みを再開するわよ!まだ終わってないとこもあったし」

「でもさっき聞き込みは終わったってw」

「うるさい弱小探偵!」

Sはそう言い残して私たちの目の前から去っていく...カニカマもそれに続いて去ってい くなんかあの人も大変そうだ。


「でも本当に良かったの?Sさん達から聞き込みの内容聞かなくて、なんだかんだ言って あの人たちも結構情報持ってた気がするんだけど」

「あったりまえよ、情報は量より質なんだよいくら量があったとこでその情報がさして重 要な情報じゃなかったら意味がないんだから!それにあいつの勝手な憶測が情報に交じってるかもしれないし信用できたんもんじゃない」


確かに私も静かに同調する。結局のところ連兎と S のそりが合わない理由はそこなのだ、 探偵としてのスタンスが徹底的に違う、連兎はたとえどんなふざけた依頼であろうが依頼 であればなんでも行う主義だ、対して S はかなりの偏食家で面白そうだと思った依頼しか 行わないらしい、それでも依頼が殺到するのはひとえに S のたぐいまれなる推理力の賜物 なのだろう。兎に角あの二人は正反対で馬が合わない..そんなこんな考え事をしながら 聞き込みを開始した。


探偵聞き込み中


ある生徒が語った


「ここは女子の人数が多いので男性が男子更衣室に行って女子は教室で着替えているんですよ。」


ある女子生徒は語った


「出ていくときには鍵をかけるので他のクラスの生徒とかは絶対に入れないんですよ。そ れにパンツが盗まれているのはこのクラスだけで..学校のブランドに傷がつくだのなん だの言って、先生たちは録に対応してくれないし」


ある男子生徒が語った


「しかもこの件でクラスのトップ二人が喧嘩するから解決策として探偵勝負なんて始めるし」

「随分と他人事だね...君も犯人の可能性は十分にあるんだよ?」 連兎がやや脅すよう形で男子生徒に問い掛ける 「そりゃあアリバイがあるからですよ更衣室から教室までは 7 分ぐらいかかるから行って 着替えるだけで精一杯、それに授業中に体育館は出られないので授業中抜けるなんてのも 無理、男子を疑うのはガチで筋違いっすよ」


ある先生は言った



「前に一日だけ教室のカギが無くなったことがあったわね、まあ次の日知らぬ間に置いて あったんだけど手掛かりになるかい?」


ある女子は言った


「まあ個人的に犯人っぽいのは音楽科の盗坂君なんだよね男子更衣室の方が近い癖にいっつも遅れて来てるし」


ある女子は反論した


「あら?妄想を現実と混同するのはよくないわ、劣等種の悪い習性よ、そもそも私たちが 出るときにはもう鍵をかけているでしょう?入る余地なんてないわ」 「ああ!?ふざけんな!!」

「そっちこそ言いがかりはよしてもらいたいな」

そして...ある探偵はこう導き出した

「うん、全く分かんない」


導き出せていなかった


「分かんないってあんな S さんに啖呵切っといて分かんないって...」

「うっさいなー!候補ならある程度しぼれてるよ!」

「というと?」

「まず怪しいのは担任の先生、まあこの学校だと教室のカギを持っているのは先生らしいし疑うのは当たり前」

「でもその肝心の先生は体育の先生なんですよね」

「そう!そこなんだよなー!体育の先生じゃなければほぼ確定みたいなとこあるんだけど ねーだから教室のカギも体育館に置いてるらしいし」

「じゃあ盗坂君は?いっつも遅れてきてるらしいですけど」 「それこそ鍵どうすんだよって話じゃん」

「ですよねー」

鍵の謎さえとければなんとかなりそうなものなのにその謎が全然わからない... そんなこんなで謎が解けないままお昼を迎えることになってしまった。お昼を用意してな かった私達はじゃんけんをして負けた人がお昼を買うことに...その結果

「あ〜めんどくさいーなんで私が」

私は愚痴を吐きながらてくてくと道端を歩いてる..すると 「あ〜だっるこの天才がじゃんけんに負けるなんて」

S がだるそうに歩いていた。どうやら彼女もじゃんけんに負けたようである。

「あっっっ!助手!」

S がこちらを指し大声を出す。なになになに怖い怖い怖い

「やあやあさっきぶり」

「あっはい」

「そっちもお昼の買い出しかな?」

「まあ...はい」

「なんだなんださっきからぶっきらぼうだなあ」

「そりゃ久遠と蛍火はバチバチですよ?こういう態度をとるのが当たり前じゃないです か」

「はあーーわたしはね、徹底的に連兎が気に入らないだけで君は結構気に入ってるんだよ。実際君が来てからは久遠への依頼も少しづつ増えたというじゃないか」

「ただの偶然ですよ、そんなもん」

「つれないねえ」


私達は歩きながらどうでもいい雑談をする。コンビニまではまだ3分ほどかかりそうだ。 帰りも含めれば10分どうやらその間はこのくそめんどいしゃべり方の阿保としばらく話 さないといけないらしい面倒だ。

私がこの現状を憐れみ深いため息をつこうとした時 「うわあああああああん!!やっと見つけたよおおおおお!!」 誰かが泣きながらこちらに走ってきた


「え?え?え?何?」


私が困惑していると


「やっと見つけたああああああ S ううううううううううううう」


ものすごい勢いで S へとぶつかっていった


「だあああああああどうした!急に抱き着くな!」

「あいてっ」


S は急に抱き着いたやつにチョップを浴びせる。


「えっこいつ誰?」


私は困惑しながら尋ねる、その問いに S はすぐさま答えてくれた


「こいつは私の幼馴染もじゅも...いやルームだ」


今一瞬本名さらしそうになったなこいつ、そしてルーム紹介された男?女?は眼鏡を位置 を調節させながら青と黒の混ざった奇抜な髪をぶんぶん振り回す。何してるんだこいつ


「それにしてもかにかま以外にもメンバーいたんですね、全く知らなかった」

「そうか、そりゃそうだろうな、なんたって目立つのはてえんさい探偵の S とその傍らに常にいるかにかまだしなルームは影が薄いしもう一人はちょっと特殊だからな」

「影が薄いって...まあ認めるけどさー」

「それでさっきメールで送ったことは調べてくれた?」 「あ?もちろんだよ君の読み通り 1 時間前には調べ終わってたよ」

「ごくろう」

え?気になること?S とルームの会話に私はわかりやすく驚きすぐさま聞き耳を立てる。 一体どういうことだ?すでに別動隊に調べさせていた?「つまり S はもう犯人に目星がついているということか?」


「って顔してるよ」


私は開いた口がふさがらなかった..「私の思考が完全に読まれてる?」


「って顔してるね今度は」

「勝手に人の考え読まないでください!」


驚いた流石引っ張りだこの名探偵といわれているだけのことはある。まさか人の思考を読 めるとは思わなかった。


「おっびっくりしてるびっくりしてる」

「普通にあんま関わりの無い人考え読むの気持ち悪いからやめたほうがいいとおもう」

「うるさいなあてか 1 時間前に調べ終わってるなら早く来て伝えてよ!お昼までいること なかったかもしれないじゃん!」

「はあ!?そもそも場所がどことかそういうことを何も教えてくれなかったそっちに問題 があると思うんですけどお?僕が方向音痴なの知ってるよね?」

「男のくせに誰かに責任転嫁するんだなっさけなーい」


なんか醜い争いが始まった。てか男だったんだ、なんかどっちともとれる微妙な顔立ちし てて分からんかった...


「コンビニ行くか」


こうして私は静かにその場を去った。

一方そのころ


「遅いなー」


イリスさんがじゃんけんに負け、コンビニに向ってからもう 15 分ほどたった。


「本来なら往復 10 分ぐらいの道なのに..」


今日は土曜日だから購買もない、だからわざわざコンビニまで行かなければならないの だ、勿論まだ 5 月なのにクソ熱い外に出たい奴なんてそうそういない...だから私と連姉 とイリスさんでじゃんけんをし誰が外に出るか決めることになった(さくやはちゃんとお弁当を持ってきていた)


「別にイリスさん方向音痴ってわけでもないでしょーに」


私はもうとにかくおなかペコペコなのだこのままだと死ぬ、その証拠に私の手足はもうプ ルプル震えだしている、まさに麻薬の禁断症状のようだ。もしこの場に警察がいたら麻薬所持の疑いで署までご同行願われていたことだろう


「まーイリスって色々と厄介ごとに出くわすタイプだからねえ」


後ろから連姉が声をかけてくる。


「でも連姉かれこれ 15 分くらいたってるんだよ!いい加減おなかすいたよ」

「本当にそうですよね..私も地味にペコペコです」

「分かるぅー」


・・・・・・誰!?


「え?誰!?」

「あれ?割とかっこよく自己紹介した割には私の存在把握されてない?そんなことあります?」

「わ、訳の分からないことばっかり言うんだったら通報しますよ」

「まってルミアその人よく見て」

「え?」


よく見たら S とかいう人と一緒にいたかにかまっていうひとだずいぶんあやふやだな..私自身でも思っちゃう

「それで何の用なの?」

「何の用か...S を買い出しに向かわせたのですが中々帰ってこず、おなかがすいたので 恵ものを貰いに」

「そんなの私たちが欲しい」

「でしょうね会話を聞いてたらそんな感じします、とはいえ困るんですよこっちも二人分必要なので」

「二人?」


S は買い出しに行ってていないはず、だったらもう一人って


「ありゃ、言ってなかったでしたっけ私達蛍火のメンバーの一人ですあの時は遅刻してま した。」

「おい、飯は調達できたか」

「噂をすれば..紹介します、蛍火の実働担当本名非公開の男イムカトです」


いむかと..黒髪でかなりの長身の男だ、威圧感がある。


「はあ、だから言っただろルームに鍵屋を探らせる余裕あんなら昼飯買いに行かせるべきだったって」

「ちょっと待て今なんて言った」


唐突に連姉がいむかとに迫る


「なんだよ...」

「S は鍵屋について調べさせてたの?」

「ああそうだよ」

「そっかありがとう、これで最後のピースが埋まったよ...」 「あ、ああ、それはよかったな」

「後は...イリスが帰ってくるのを待つだけ」


連姉はかっこつけて一人で納得する...ちなみに帰ってきたのはそれから 10 分後のこと であった。


探偵昼飯中


「皆さんお集まりいただきありがとうございます」 「ここからは事件の真相を私連兎が」

「いやこのSが」

「いや私が」

「どっちでもいいから早くしてください」

「「はい」」


考えうる限り最悪のスタートになってしまった。 連兎もSもでしゃばりすぎて怒られていた..二人ともバカなのか


「取り敢えず!犯人を発表します!犯人は!」

「あんただな!音楽科の盗坂電太!」


連兎が犯人を言おうとした瞬間さえぎって S が犯人をばらす。

こいつらマジで仲いいな


「な、なにを言っているんだ、どうせあれだろ、いつも僕が遅れて来てると聞いて決めつ けたんだろ!残念だけど教室のカギは女子全員が教室を出るまで教壇に置いてあるんだ盗めるわけないだろ!何の証拠もないくせに言いがかりはやめてくれ!」


盗坂は正直犯人しか言わなさそうな言い訳をし始める、それもう犯人は自分ですとばらし ているようなものなんじゃ


「いやー証拠ならあるんだよね」

「え?」


S はここぞとばかりににやにやしながら語りだす


「君鍵屋にスぺアキーの注文頼んだでしょ」

「そんなわけないだろ!教室のカギを外に持ち出せるはずが」

「それがさー」


連兎もにやにやしながら補足を始める


「前に一回盗まれたらしいの、その時じゃないの?」

「あ」

「それで言い訳はなんかある」


二人の推理によりついに盗坂は追い詰められる 打つ手なしかそう考えた瞬間

ざっっっ

盗坂が逃げ出した


「「追え!!」」


連兎とS、二人はほぼ同時に宣言する。もちろんだが私達も追いかける


「はあ!はあ!こんなところで、こんなところで!僕のパンティーロードを止める訳には行かない!」


盗坂はおもむろに懐から何かを取り出す、パンツだす...パンツ!?


「お父さん!!僕に力を!!すううううううはあああああああすうううううはあああああああ」

「はあああああああああああああああああああああああああ」

「すごい!パンツ吸って加速し始めた!きもい!」


連兎が柄にもなく普通に驚く

まあ当たり前だろうな正直私も驚いたし内心ドン引きしてる

だが実際馬鹿にできない事実私たちは今誰一人として追いつけていない


「よしルーム、お前もパンツ吸って加速しろ」、

「できるかあああ!やめろS!おもむろにパンツ脱ぎ始めんな!気持ち悪い」

「ああ!気持ち悪いとはなんじゃ気持ち悪いとは!」


なんか喧嘩してる、馬鹿なのだろうか..


「そうそうそこら辺そうそこ」


連兎が誰かに連絡を入れてる一体誰に


「今だ!いけ!」


盗坂が曲がり角を曲がろうとした瞬間、彼の頭上からパンツが降りてくる


「むっパンツ」


彼はそのパンツをつかんだその瞬間


「変態は死ね!」


前から飛び出してきたルミアちゃんが勢い良くけりを食らわせる盗坂はそのままダウンし その後来た警察に引き渡された。


後日


「大変だった」


私は報告書をその一言で締めくくる


「マジで変態っているんですね本当に」

「ほんとになー」

「まあでも何とか解決してよかったですよ」

「まじでな」

「なんか上の空ですね」

「バレた?」

「なんかあったんですか?

「うーん今回の事件で、あいつらの方が先に事件の解決に受けてたっていうのが」

「やっぱり気に食わないと」

「やっぱりね」

「でもいいじゃないですか...事件は解決したんです。報酬も両社とも貰ったんですし」

「たしかにまあいいか」


まあいいかとは言いつつ少し落ち込み気味の連兎を見てあの日の会話を思い出す


パンツ事件の昼


私はカップラーメン極母柚木と極父辛と自分用のから揚げ弁当を買い学校へ戻ろうとするそのさなか


「イリスさんやイリスさん」

「何ですかSさん」

「久遠探偵事務所の前代所長の話聞いたことある」

「ないですけど」

「やっぱり...あれは話してないのか」

「あれ?」

「まあ少なくとも私から話すような内容じゃないよ」


現在


アレなんて含みのある言い方をされると気になってしまう..でも無理には言及しないよ うにしよう...話したくないことなんていっぱいあるしな.. でもこういう話題ほど案外その内判明するものなんだよなあ この考えが正しかったか間違っていたかそれは..また別のお話

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