第14話 お金とレイス 



「礼二様、貴方は一体何者なのですか?」


受付嬢が凄い目でこちらを睨んでくる。


今、俺は冒険者ギルドに居る。


まだ、明け方なので立ち寄ってオークの換金をお願いしていたら、驚いていた。


まぁ、この世界で俺は無能だ。


それがA級冒険者や今の段階では勇者達を除く異世界人でも出来ない事をしたんだ驚くのも当たり前だ。


ちなみにサリーちゃんは交代制なのか居ない。

「それは秘密だ」


冒険者である以上、自分の秘密は教えない。


そういう選択もありな筈だ。


「冒険者である以上、切り札は教えたくなく、まぁ当たり前ですね、了解しました。それじゃ査定が終わるまでの間はギルド内で寛いでいて下さい」


「解りました」


俺はそう答えるとギルドに併設された酒場で、コーヒーモドキをオーダーした。


暫く待つと査定が終了したようで声が掛けられた。


「査定が終了しました。結構な金額になりますよ。凄いですね! オークキングが1体、こちらが金貨20枚になります。オークナイトが一体辺り金貨1枚ですので3体で金貨3枚、オークアーチャーも同じく金貨1枚ですので4体で金貨4枚、オークメイジは金貨3枚2体で金貨6枚、オークが1体銀貨1枚で24体で金貨2枚と銀貨4枚 合計で金貨35枚と銀貨4枚になります」


凄いな!日本円で約350万円位だ。


これで1年、倹約すれば2年間は生活が出来る。


「オークが銀貨1枚なのに、キングもそうですがナイトやアーチャー、メイジは随分と金額が高額になるのですね」


「ハァ~?!あっ礼二様は異世界人でしたね。う~んこの世界じゃ当たり前の事なのですが…そうだ! 普通のオークが村人や町人だと考えて下さいね! ナイトは人間で言うと騎士、アーチャーは弓の達人、メイジは魔法使い。一般人と戦闘職の差です。一般人ならナイフで充分殺せますが、相手が戦闘のプロだと普通の人じゃ倒せません。そしてキングは強い王様でそれら全てを束ねている存在。そう考えて下さい! それにナイトクラスのオークは一人でいることは少なく、必ず最低でも数人の部下を従えていますので、難易度が高くなりますから危険度が違うのです」


「確かにそうだな」


「あと、礼二様は折角収納魔法が使えるのにオークの肉は諦めたのですか?」


肉だと!


「肉に価値があったのか」


「言って置きますが腐りやすいのでもう腐っていると思います。収納魔法で収納すれば、その中は時間が止まっていますので充分

売り物になりますよ、随分と勿体ない事しましたね。これ程の数の肉ならきっと金貨20枚位はなった筈です。次回からは気をつけましょう」


「解ったよ」


失敗した。


恐らく、次回は無いな。


とりあえず、暫くの生活には困らない。


俺は受付嬢にお礼を言ってギルドを後にした。


◆◆◆



「何処に行っていたのよ! 私を放って置いて!」


家に帰ると令嬢が起きていた。


確かに、あんな事の後だし、確かに俺が悪いのかも知れない。


良く見ると涙ぐんでいるから、文句はやめておこう。


「眠っていたようだからな、冒険者ギルドに行ってきたんだ」


「そう、なら仕方ないわね」


用意して置いた食事は食べ終わっていた。


たらいのお湯はどちらも腐った下水並みに汚れ異臭を放っていた。


その2杯のたらいと毛布を含む寝具を廊下に出した。


「悪い、話の前にちょっとこれの処理をしてくる」


「解ったわ」


令嬢は服も俺の着替えに着替えていた。


「この服はどうする?」


「あんた馬鹿なの! そんな服二度と着るわけないじゃない!」


まぁオークの気持ち悪い匂いのしみついた服なんて普通の女の子が着る訳ないな。


「解った、これも処分頼むわ」


「少しは察しなさいよ」


デリカシーが無いのは解る。


彼女の関係者の霊はあそこに居なかった。


もし、あそこに彼女の関係者の霊が居たら、気になり俺になにか聞いてくるはずだ。


だが、どの霊も俺に彼女の事を聞いて来ない。


またあくまで憶測だが死んだばかりの死体が無かった。


恐らくは『彼女は見捨てられた』のか『罠で捨てられた』そのどちらかの可能性が高い。


多分、彼女もその事に気がついている可能性が高い。


今は…何も聞かない方が良いな。


「そうだな、俺が悪かった」


それだけ伝え、俺は処分に取り掛かった。


俺は3往復して全部受付まで運び込み処分を頼んだ。


「何となく理由は解った、聞かねーよ! オーク絡みだな…そのなんだ、優しくしてやるんだぞ!全部処分してやるよ、部屋の方も気にするな!あとこれは特殊な臭い消しと一応うちの嫁さんの服も用意した。着せてやりな」


「ありがとう」


「いや、商売だ気にするな! 全部で銀貨2枚、負けておくよ」


普通に考えたら、あの部屋は臭くて使えない。


散々迷惑を掛けて、処分から服まで用意してくれて銀貨2枚。


これは優しい。


決して商売じゃない。


「それでも、ありがとう!喜んで払わせて貰うよ」


俺は銀貨2枚に気持ち銅貨3枚のチップをつけて渡した。


部屋に戻り令嬢に服を渡した。


「随分と地味な服ね」


「明日には侯爵家に送っていくから、それまでの我慢だ」


「そう…解ったわ」


消臭剤を使ったらかなり匂いは薄れた。


前の世界でいう所の公衆便所位にはどうにかなった。


「そう言えば名乗ってなかったわね、私の名前はレイス.ホワイト.トンプソン 由緒あるトンプソン侯爵家の次女よ!貴方多分平民よね?だけど助けてくれたから特別にレイスと呼ぶ事を許してあげるわ! 光栄に思いなさい!」


「ご丁寧にどうも、俺の名前は黒木 仁、こっちの名前で言うなら仁、黒木になります、宜しくな!」


「へぇ~その名前からすると異世界人なのね?! 優秀な筈だわ!」


「いえ、俺は無能だから追い出されたクチです、優秀じゃないですよ」


「そう? 隠しスキルがあってそれは内緒にしているのね? まぁ良いわ内緒にしてあげるわ」


確かに俺の霊能力は、スキルに見えなくもない。


どうせ数日で別れるんだ。


態々説明する必要も無いな。



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