第4話  最終奥義も異世界では通じなかった。



節約の為に出来るだけ安い宿を探して泊ったが一泊銅貨5枚(5000円)だった。


食事は案外高く、簡単な朝食でも銅貨1枚(1000円)掛かった。


このままのペースでは3か月で無一文になる可能性が高い。


冒険者ギルドに来て相談したが困り果てる事になった。


「冒険者でお金を稼ぐならやはり狩りをするとか護衛とかをしないと厳しいですね! 採取にしても他の方が取りに行けない様な場所にある物が採取出来ないと無理ですね!」


「占いとか予言等で生活出来ませんか?」


「それ専用のジョブをお持ちなら可能性はありますが、そんなレアジョブ持っているならお城を追い出されたりしないでしょう?」


「確かに、死者や霊と交流できたりしたら仕事になりますか?」


「本当なら凄いと思いますが、死霊使いのジョブは人間側で授かった人は聞いたことは無いですね!魔族側の幹部に居るらしいですが…」


「そうですか?」


「そんな夢みたいな話じゃなくて生活基盤を持つべきです!最も商業ギルドに行こうが職人ギルドに行こうが、ジョブが無いんじゃ碌な仕事に就けないと思います」


だが、此処で俺は一つ試してみたい事がある。


『果たして俺の持つ力』が何処まで通用するかだ。


俺の最大の力は守護霊や守護神の力を借りられる事。


その力が通じるかどうかがカギだな。


「討伐、狩りをしたいなら、試験が必要なんですよね」


「はい、ジョブをお持ちの方には必要ないですが、無能の方には受けて貰う事になっています! 最も無能なんて数万人に一人ですし、冒険者になる人なんていませけど…ですがこれは意地悪ではなく『出来ない』という事を知って頂く為です。勝つ必要はありません、相手はB級冒険者です。オーガすら倒せる実力者に何処までやれるか、それを見るだけです。最も、ゴブリンすら倒せない無能には手も足も出ない相手です。それでもやりますか?」


「お願いします!」


恐らくはB級どころかA級ですら異世界人には敵わない筈だ。


そうでなければ召喚などはしない。


「解りました、すぐに準備しますから、横にある修練場でお待ちください」


「解りました」


◆◆◆


冒険者ギルドの横に修練場があり、そこで待つ事になった。


《師匠、俺の技はこの世界で通用しますかね》


《どうだろうか? 対人ならそう遅れはとらない筈だがのう、この世界ではどうも儂の知る範囲を超えた様な存在が多いみたいじゃ。あそこで素振りしておる男等、技は未熟も未熟じゃが、速さだけなら柳生一門でも中位に入りそうじゃ》


《それなら、どうすれば…》


《一撃じゃ、最初に技量を見て、その後は儂が教えた奥義を使って勝負を仕掛ける…それが良い》


《ありがとう》


《未熟も未熟、だがお主は儂の弟子じゃ…まぁ頑張るのじゃ》


俺に沢山の守護神や守護霊が憑いている。


守護神は眷属の可能性もあり今一本来の実力は把握できない。


だが、守護霊は嘘をついてなければ『本物』になる。


俺は折角、歴史的有名人から指導が受けられるチャンスがあるのだからと幾つか教えを乞うていた。


「待たせたな少年、俺の名前はリチャードA級冒険者だ。本来ならB級だが、丁度居なくてなだが、これは何処まで戦えるかの試験だ。寧ろ俺の方が手加減出来るから安心しろ」


「解りました」


《なかなかの強敵と見た!侮っている間に一撃に賭けよ!》


《はい!》


「それでお前は何を使うんだ?剣か槍かナイフか?」


「それじゃ剣でお願します」


「そらよ、いつ掛かって来ても良いぞ」


リチャードは木剣を俺に放り投げ、自らも木剣を構えた」


「黒木仁、参ります! 最終奥義『黒木流霊剣呪振乃太刀』」


俺が師事した守護霊は塚原卜伝。


塚原卜伝の新当流の奥義は『一之太刀』だが、それすら完成形では無いと言われる。


新当流が更にそこから上の技を考え目指したのがこの『霊剣呪振乃太刀』だ。


最もこの技は未完成。


呪術を取り入れて完成を目指すも塚原卜伝ですら完成できなかった技。


何代か後の弟子が完成したという話もあるが本当の所は解らない。


だが、この最終奥義はあてる必要も無い。


ただ振りだすだけで良い。


それだけで勝利が確定する、剣聖と呼ばれた卜伝の夢の剣。


これこそが日本最強の剣だ…最も俺が使っているのは劣化版。


呪術の代わりに霊力を使った物で、体力も精々が剣道部並みの力しか持たない俺じゃ恐らく『一之太刀』にすら届かない。


「何だ!それはー――っ」


俺の体が僅かに輝き、風を纏う。


そしてその風が巨大な風となりリチャードを襲った。


「何だこれは、どんな技なんだー――っ、魔法剣かー-っ」


この技は繰り出したらもう俺にも止める事は出来ない。


リチャードにあたった風はそのままリチャードを巻き込み石壁にぶつかった。


風が止んだ時にはリチャードは倒れていたが、すぐに立ち上がった。


(※かなり作者の妄想が入っています。私も名前位しか知りませんので、すみませんがこの部分の突っ込みは許して下さい)


「やるじゃないか! 合格だ! 俺じゃなくてB級なら勝てたかもな、だが初見じゃなければB級にも通じない。それでもC級並みに力はある。オーク単体なら狩れる。俺が保証してやるよ! 頑張れよ!」


《この技を食らって立てるのか、異世界とは興味深いのう》


《これですらオーク止まり、討伐や狩りで暮らすのは難しいかも知れないな》


「ありがとうございます」


リチャードは手を振って去っていった。


剣聖と言われる卜伝の技が、木剣でとは言え通じなかった。


冒険者として生涯生きる事は無理だな。










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