第6話 初の人生相談



お客来ないな。


「ほらやっぱり、お客さん来ないじゃないですか?」


俺をそら見た事かという顔で話しかけてくるサリーさんがうざい。


だが、本当にそうなのだから『ぐう』の音も出ない。


「確かにそうだけど、まだ2日目だから、これからだよ!」


そう言ってみたが、素性も解らない人間に、自分の人生を相談したいとは思わないだろうな。


前の世界ならWEB、その前はチラシ集客でお客を集められたが、この世界は『紙』すら貴重なのでチラシを入れる事も出来ない。


『集客』で躓いている。


そんな所だ。


「人生相談? なにそれ?」


冒険者の女性がからかい半分に声を掛けてきた。


年齢は20歳位、赤毛のショートカットでスレンダー。


皮の軽装鎧にショートパンツに皮のブーツを履いているなかなかの美人だ。


「占いみたいな物かな?何も言わなくても過去をある程度当てて、困っている事の相談を受けてどうすれば良いかアドバイスをする、そんな感じだ。もし困っている事がなければ、将来どうすればより良い生活が送れるか教えられるよ」


「信じられないけど? まぁ無料ならいいよ、暇つぶしに聞いてあげるよ」


「ありがとうございます」


「それじゃ、宜しくね!」


「解りました」


《霊視、霊話開始》


この人に憑いているのは見た感じ傭兵か冒険者って感じだな。


《貴方がこの娘の守護霊ですか?良かったら貴方の事教えてくれる》


《あたい?この子を守っている、まぁ祖先にあたる…ミーシャだよ!死ぬ前は傭兵をしていた 》


《見ていて解ると思うけど、この人の人生相談をしているんだけど、この人について色々教えて貰えるかな? それと貴方が今後彼女に望む事を教えてくれる》


《なんだい?あたいの言いたい事を伝えてくれるのか!いいぜ教えてやる》


この人の名前はレッカ。


冒険者もしているが、傭兵もしている。


ミーシャはレッカについて詳しく教えてくれた。


「貴方の名前はレッカ…冒険者をしているが傭兵でもある」


「へー凄いね! だけど、それ位は顔見知りなら皆知っている事だよ? 調べたのかな?」


「初体験は遅くて15歳の時…相手は同じ傭兵をしているクルーガー、場所は戦場で好きだったから押し倒されてそのまま受け入れた…」


「なっなっなっ」


「半年程付きあったがクルーガ―の浮気が原因で破局、その後年下の職人と付きあうも同じく浮気され破局した。しかもその際に『お前みたいなガサツな女は元から好みじゃなかった』と言われついカッとなり殴った」


「おおい!おいなんで知っているんだよ!」


ミーシャが教えてくれるからな。


「ガサツな様に見えるけど…本当は乙女な部分も沢山あり、家事が得意。特に裁縫と料理が得意で、豆と肉を作った料理が得意料理。部屋には裁縫で作ったレース品が幾つもある。人恋しさから部屋でお酒を飲みながら泣いて….」


「やめろよ…なんで知っているんだよ! やめてくれ! というかやめろよ…ヒクッ」


レッカが涙ぐみながら、俺をガクガクと強く揺らしていた。


「あっゴメン!」


「全く、周りに誰も居ないから良かったけど、恥ずかしいからやめてくれ!」


「申し訳ない、つい読み取るのに夢中になって、それでレッカさんは今現在、何か悩み事とかありますか?」


「悩みごとかぁ~もう解っていると思うけど、男関係かな? 私ももうそれなりに歳だからね、そろそろ身を固めたいんだ!」


守護霊という者は霊格や性格は兎も角、自分が憑いている存在には幸せになって欲しい。


そう思っている。


だから、自分が憑いている人間についてのアドバイスは適格だ。


「それなら、レッカさんには昔からの付き合いの幼馴染が居るでしょう?」


「ああっ、確かにいるよ」


「その方は恐らくレッカさんに恋心を抱いています。異性としてレッカさんは見られないかも知れませんが、相性は最高、もし付き合うにしても結婚するにしても恐らく破局になる可能性は少ないと思います…以上です」


「マジか? 確かにそれは考えて無かったけど、言われて見ればそうかも知れない…納得したよ! 本当に金は要らないのか?」


「ああっ、今は知って貰う段階だから、無料です」


「そうか、ありがとうな!」


「どう致しまして」


手を振ってレッカさんは出て行った。


横でミーシャさんも手を振っているからこれで良かった筈だ。


後はこれをどうお金に繋げるかだな。


◆◆◆


「仁さん、貴方本当に無能ですか? 遠巻きに見ていましたが、あんなの鑑定のスキル使っても解らない筈です。どうして人の過去迄解かるのですか?」


「ジョブもスキルも無くてもこれ位は出来るよ、ただどうして出来るかは秘密だけどな!真似られたら困るから」


「そうですか…」


「冒険者は自分の情報を口にしない、それと同じだ」


「確かに」


まぁ、この世界に『霊能力者』が居ると聞いたこと無いから他の人間には出来ないだろうけどな。









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