リスクを避けてたら少し愛が重い彼女に溺愛されました

加糖のぶ

リスクと恋

プロローグ 勘違いは日常から

第1話 ラブレター




 月曜日の朝。


 学生、社会人関係なく憂鬱になる日。

 そんな朝、自分の下駄箱を開けたとある高校指定の制服に身を包む男子生徒はいた。

 男子生徒は下駄箱の中にある物を見て思考を停止する。

 

「……」


 制服はしっかりと着こなしている。

 ただその表情はどこか覇気がなく。

 表情が皆無な様に見える。



 唐突だが、この男の名前は身延みのべりく。


 名前をよく間違えられたり忘れられたりするが普通の公立高校に在籍している高校二年生の学生だ。

 そんな身延は今絶賛に困惑している。


 その理由は朝学校に登校した際、自分の下駄箱を開けたらピンク色の便箋にラベンダーの香りが仄かにするもの……所謂「ラブレター」と呼ばれるブツが入っていたからだ。

 相手の名前や場所も指定して書いてあるのがまたいやらしい。


 そんなものが自分宛に入っていたら嬉しい? 馬鹿を言ってはならない。嫌に決まっている。それも相手の名前を見る限り……ただ返事は決まっている。


 そう、俺は……ただちょっと待ってくれ。下駄箱この場所で長居するのは得策ではない。後から来る生徒から奇異な目で見られるがあるからな。



  ◇閑話休題ということで移動



「……」


 ここなら安全だろう。


 下駄箱から移動した身延は一階にあるあまり使われていない職員用トイレの便器に跨っていた。

 もちろんトイレをしているわけではない。

 しっかりと制服のズボンは履いたまま便器に腰を下ろしている。


 ならなんで声を出して話さないのか? 


 決まっている。

 トイレ内で一人話している奴などただの頭がおかしい奴だからだ。まぁそんな話はどうでも良いだろう。今は先の話だ。


 テイク2


 そう、俺は……なによりもリスクを恐れ、重んじる性格なのだから。


 黒髪、黒目。顔も普通。

 身長も平均的な168㎝前後。

 学業も運動も普通。

 性格も普通と言う「普通」という言葉が相応しい人間だ。


 家族構成も父親と母親と俺の三人家族で兄妹は愚か、幼なじみと言われる七不思議に数えられそうな生物など存在しない。

 言ってしまえば親しい友人も生きていてこの方いない。


 俺は何もない中、特に寂しいと思ったことはない。俺が常日頃思っていることはということだけだ。



 リスク


 みんなも何度か耳にしたことや経験をしたことがあると思う。

 

 実際に『リスク』を辞典等で調べてみると、「危険」「危険度」「予想したとおりにうまくいかない可能性」「失敗したり損をしたりする危険」と出る。


  一般的には『リスク』は「危険」を表す言葉と定義されている。


 じゃあそんな「リスク」と「ラブレター」になんの関係性があるのかと言われると……「ラブレター」なる物を貰った相手への返答次第のリスクがついてくる。

 なので関係ありありだ。


 一つ、俺がもしも相手からの「告白」を断った場合のリスク。


『……すまない』


 そして相手は不登校になる。

 もしかしたら飛び降り、自殺をするリスクがあるかもしれない。


 そんなことはない? 一概に言えるのかな?

 

 相手は俺に勇気を出して告白をしてきたのかもしれない。そんな気持ちを踏みにじった俺の行為に耐えられなかった相手は心に盛大な負荷を感じてしまう恐れがある。


 二つ、俺がもしも相手からの「告白」を受け入れた場合のリスク。


『……同意しよう』


 返事は気にしないで欲しい。


 ただ俺は相手からの「告白」を受け入れた。そしたらどうなると思う?


『……ハァ? 嘘告なのになに本気になっているの? 気持ち悪ぅ……晒してやるから』


 そして俺はSNS等に顔写真付きで晒されて学校から居場所がなくなり……。


 ん? そうはならんやろ?


 わからんぞ? 俺宛に来た「ラブレター」なるものが本当に「真・ラブレター」なのか「嘘・ラブレター」なのか現時点で確認する術などない。


 それにソースは俺。

 俺は中学三年の時に一度「ラブレター」を貰ったことがある。その時は俺もまだ幼かったのか当時は喜んだものだ。

 だが実際箱を開けてみれば待ち合わせ場所にいくら待っても待ち人は来ず。最悪な苦い思い出となった。その時から理解したさ「ラブレター」と言うものはこういった「リスク」を重なうと。

 

 いや、本当に本当の告白の場合もあるが……俺はよく知っているから慎重に行う。

 それに俺に「ラブレター」を出した相手をよく知っている。というかこの学校の生徒なら誰でも知っている人物だ。だから嘘告は無いと信じたいが……。


 ただ返事は決まっている。







 

 

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