第9話 放課後の密会
「それで、何かあるのか? 俺もこの後用事があるから早めに済ませたいのだが」
身延はレナと会うと早々早く帰りたいアピールをする。
レナは特に気にした様子もない。
「大丈夫だよ直ぐに済むからさ〜。それよりもそんな所に立ってないでこっち来てよ〜」
何故かレナが座る副会長席の隣に置いてある椅子。
その椅子に身延を触れと言うようにぽふぽふ叩く。
「……はぁ、わかった」
「うん!」
自分の言うことを聞いてくれて隣に座ってくれる身延にご満悦。
「それで話って? メールじゃダメだったのか?」
「ダメじゃないけど……身延君と校舎でこうやって話したくて……いやだった?」
「いや、ではないが……わかった。俺が悪かったから用件を言ってくれ」
「うん!」
素直に椅子に座ったは良いが完全にレナのペースに乗せられていた。
身延は上目遣いで問われてしまい負けを認める。
「実はね私聞いちゃったの。身延君が今週中に何か部活に入らなくちゃいけないと」
「……それは、誰が。そもそも俺の話など流れるのか……」
自己評価の低い身延は悩む。
「うん、一年生の頃から結構有名だよ? 部活動に励まない生徒がいる、と。それが身延君のことだとは知らなかったけど」
「なん、だと……」
友人のいない身延はその話は初耳だった。
学校内で自分が知る情報などたまたま聞こえてきたモノぐらいだ。
全ての隠蔽は須藤先生任せだった為自分は上手く逃げれていると思っていた。
どうやら詰めが甘かったようだ。
「私が知っていたのは噂って言うか……今朝須藤先生と生徒会長が話しているのを盗み聞きしちゃって」
「そう、か……須藤先生からはさっき直接言われたから知っている。だが、あの生徒会長までも既に知っているとは……」
生徒会長という単語を聞いた身延は座ったまま頭を抱える。
「あはは、身延君は生徒会長……
「一応、知り合い……だ。ただ俺は好かん。俺が遅刻常習犯だからか何かと目を付けられていてな。遅刻をする俺が悪いのだが……チッ」
身延は自分の失態の数々を思い浮かべ舌打ち。
身延の姿を見たレナは苦笑い。
「それでね身延君。今からが本題なんだけど」
「今のが本題じゃないのか……」
この世の終わりという様な顔を作る。
レナは落ち着かせる様に優しく話す。
「大丈夫、大丈夫。今から話すのは身延君の部活入部危機を救う方法だから」
「俺を救う方法? そんなものがあるのか?」
「うん。というか私が作ります」
「は?」
自信満々にそう言うレナの言葉を聞いた身延は困惑した様な顔を作ると胡散臭そうな目を向ける。
「安心して身延君。今すぐには詳細は話せないけど君を救うために私頑張るから。ただ上手くいったらその、で、でで……私の言うことを一つ、聞いてくれる?」
「……上手くいったらな」
「やったー!」
今も嬉しそうに満面な笑みを浮かべるレナを見て身延は苦笑いを作って安請け合いをしていた。
その言葉を信じて良いかわからなかった。
でも自分のために動いてくれると言うなら、お願いしたい。何をグリーンが要求してくるかは定かではないが……なんとかなるだろ。
「本当に大丈夫だよ。身延君……恋人が危機なんだから
「程々にな」
「うん! じゃあ、今日はありがとね。私もあと少し
「そうだな。悪い」
「ううん、私の方も何かあったら……何もなくてもまた連絡するね」
「了解」
レナと別れの挨拶をした身延はレナを残した生徒会室を後にする。
「……さて、どうなることやら。一応自分でも保健のために入る部活は幾つか見積もっとくか」
そんなことを言うと用事に向かうために早足で校舎を離れる。
「本当は既に身延君を救う方法は決まっているんだけどね〜。でも驚かせたいからなぁ。身延君、喜んでくれるかな……」
身延が出て行き、一人だけになった室内。
身延が喜んでくれることを願いながら机の引き出しを開けるレナはある紙を取り出す。
そこには「新規部活申請書」という言葉が綴られていた。
「それにしても、私って……大事なところで言えないとか……はぁ」
自分自身が嫌になったレナは溜息を吐いた。
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