第17話秋葉原デート2

 桜花がジト目で掲げる2つのワンピース。


 1つは、一見清楚なセーラー服のような感じ。 


 だが、桜花が着たところを想像すると……






 均整のとれた優れたボディラインが強調されそうな気がして、清楚からやや離れたイメージが浮かんだ。



 例えるなら……清楚系ビッチ。



(あれ?)


 桜花を表わすに不適な表現が頭に浮かんで困惑する俺。


 清楚系ビッチは言い過ぎかも? “童貞を殺す服”とでも評しておこう。


(とりあえず、この服は却下かな?)


 妹を大量殺人犯にするわけにもいくまい。秋葉にどんだけ童貞がいるか知らないが。



 もう一つの服は、胸元に刺繍が入った茶色のチェック柄を基調とした英国令嬢風クラシックワンピース。


(これを着た桜花は、文学少女といった感じになるか?)


 着こなしによっては、ダサくなりそうで万人におすすめできる服ではない。


 だが……桜花なら着こなすだろうという確信もある。


「桜花の普段の好みからどちらもやや離れていて、選ぶのが難しいけど……どちらかといえばこっちかな? 秋葉を歩くならこっち。 でも、着てみて貰っていい? 似合うかどうかは、着て貰わないとわからないかも」 


 俺が指差したのは、英国令嬢風クラシックワンピースの方。





「さすがは、お兄様。こちらの一見清楚な感じに惑わされませんでしたね。 でも、一応両方着てみます♪」


 “童貞を殺す服“”も着るんかい!


 もしかして……俺を殺す気? 妹が童貞を殺す服を着ても、兄(童貞)は殺せないと思うが。




 試着室に入った桜花。


 俺の優れた聴覚は、シュルシュルと衣擦れの音を捉えている。


 試着室の前で男が一人で待つのなんか、恥ずい。





 シャッとカーテンが開いた。


 姿を現したのは、一見清楚だが、ボディラインが強調された桜花。ガーター付きの白タイツも履いている。



「どうですか?」



「うん。スタイルも素晴らしいし、絶対領域も素晴らしすぎるので、却下」 


(ふっ、やはり俺は殺せないようだな)


 内心勝ち誇った。



「言葉と反応が一致しておりませんが……。まぁ、これは家で着る用に買いましょうか」



「なんで?」



「メイドカチューシャとメイドエプロンをつけたら、メイドさんみたいだからですわ」



 メイドさんみたいな格好をして家事をする桜花を想像してみる。




(あれ、なんか…いい。いや……無茶苦茶、いいぞ?)


 困惑する俺。

 


「さすがは、メイド萌えのお兄様ですわ!

属性を足すと妹でもいけるのですね」




「「「おおっつつつーーー!」」」


 背後から謎の歓声。


 さっきから、大学生のお姉さん3人組がこっちの観察をつづけているのだ。 


「くうっ……もう一着の方も着てみて」


 謎の敗北感に打ちのめされる俺。



「はーい♪」


 上機嫌で、着替えに戻る桜花なのだった。

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