第21話生徒会長・一条紅葉

「君たち、一色兄妹か?」


 眼鏡をかけた長身メイドさんがまず切り出した。


「はい。あなたは、我が校の生徒会長ですね」


 桜花が返す。


「うん。一条紅葉いちじょうくれはだ。いつも妹の真夏がお世話になっている。で、どうして、バイト先の先輩方と一緒に?」


「インモラル兄妹の知り合い?」


 お姉さん達の一人が一条先輩に問いかけた。


「インモラル兄妹?」


「その兄妹とっても仲良しで、とっても尊いからね。……いや。さっきDQNというか、半グレから助けてもらったの。ここに連れて来たのは、そのお礼的な?」


「3人組の半グレをすごいコンビネーションでボコボコにしてた。そういう意味でもヤバいよ、その兄妹」


「半グレをボコボコにしたのか……。いや、バイト先の先輩方を助けてくれてありがとう。でも、一応詳しい話を聞いておこうか」


 紅葉くれは先輩が丁寧に頭を下げつつ言った。


「あ、やば。この子、応習学院の生徒会長じゃなかったっけ?」


「学校の後輩ってことは……この兄妹も応習学院の生徒?」


「生徒会長に認知されてるとか、学校でも有名な兄妹なんじゃ?」


「私達を守ろうとしてくれただけだし、殴りかかってきたのも向こうからだし、正当防衛だからね?」


 お姉さん達は、俺達をかばってくれる。


「ふむ……。私もゆきもバイトをあがる時間なので……とりあえず、シフトに入って貰っていいですか? 先輩方を助けてもらったお礼に私と雪で後輩達を歓待いたしますので。まぁ、事情聴取もしっかりやりますが。“インモラル兄妹”の由来もがっつり聞きますし」



「「「お手柔らかにね」」」

 

 そう言ってお姉さん達は着替えに行った。


 一条先輩は、俺達を席に案内し、水を持って来てくれ、オーダーをとってから着替えに行った。ここは、生徒会長のおごりということで、「なんでも好きなだけ頼んでくれ」とのことだった。ちょうどお昼ご飯をまだ食べていなかったので、少し遅めの昼食。遠慮なく好きなものを注文させて貰う。


(本当は、ここ桜花がリサーチしてた場所で、晩ご飯でよるつもりだったのだけれども)


 ここにはもう一人、冷泉雪れいぜいゆきという先輩が働いているらしかった。


 いや。半グレをボコボコにした件はともかく……“インモラル兄妹”の由来って、何を聞かれるんだ?

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