第12話天は……

 ご飯のあとは、動画配信サイトで映画鑑賞会となった。うちはテレビも大きく、音響もいいのだ。


 真夏おすすめのホラー映画とか見たのだけど五感が敏感な俺と桜花がホラー、苦手だと思ってないんだろうな。なんとなく苦手と言い出せず色々見たけど、地味に大ダメージを受けた😣


「どうしたの? 2人とも顔が真っ青だけど」

 勇太が心配してくれた。


「ホラー、苦手だったかなっ?♪」


「「音とかがちょっと……」」

 内容は、大丈夫なんだ。幽霊なんか非科学的だし。ただ、音とかカメラワーク(?)とかが本当に駄目で。



 そんなこんなで、ホラー鑑賞会はお開き。男女に分かれて、寝る流れとなった。



「大丈夫?」

 勇太が俺を気遣った。


 ベッドも俺に譲ってくれて、勇太は率先して床に布団をしいて寝てくれる。


「いや、気持ち悪い」


「ホラーで気持ち悪くなっちゃう人、いるってことは知ってたけど……配慮が足りなかったかな?」


「いや、俺達が五感が過敏で繊細すぎるだけだ。こっちこそ、なんかごめん。俺の一族、なんかこういうことが多くて」


「大変なんだな」 


「まぁ。この特性は有効活用すれば、勉強やスポーツや仕事の知識や技術の習得するのに大きなアドバンテージになるんだけど」


「ふうん。じゃあ妹さんもその特性を利用して学年トップでこの学校に入学できたわけか」


「受験勉強も鬼気迫る感じでやってたけどね。俺が引くくらい。まさか、俺と同じ学校にトップ合格するためとは、思わなかったけど。トップ合格を目指さなければ、そんなに頑張らなくても余裕で受かったはずなのに」


「その口ぶりだと君、そんなに必死に受験勉強せずにうちの試験にパスしたわけか?頑張らなくても余裕で受かるとか、天才?」


「目と耳がいいからだろうな。授業を聞いていたらだいたいの内容は、頭に入る。勉強はその確認をするだけの、【作業】って感じかな?」


「あー、なるほど」


「うん?」  


 何が「なるほど」なのか、話しの流れから分からなかった。



「妹さんがついて来た理由もなんとなく分かってきた。君、この学校で放っておくと、ダメになるタイプだ」



「なんで?」



「大学までエスカレーター式だからさ。喜んで怠け放題するだろ、君」



「うん!」



「胸を張って、断言するんじゃないよ! あと、応習学院の色に染まらないように気をつけなよ」


「応習学院の色?」


「“天は応習学院生の上に人を作らず”って感じ」


 ん?


「元ネタは……“天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず”だったか? 人を応習学院生に変えただけで、意味が真逆になってないか?」


「まぁね。学校の教育方針からしてそんな感じだから、幼稚舎組だけでなく、高校入学組や大学入学組までその思想に染まる人が続出するのさ。“応習学院生にあらずんば、人にあらず”とも言うね」



「平家か!?」


 なんだか、滅びそうな思想である。


 俺も気をつけよっと。


「ま。君は妹さんのためならば努力を惜しまないってことくらいは、今日みててわかったけどね」


「シスコンと言いたいわけか?」


「いや……いいお兄さんだなとは、思った。妹さんから慕われるわけだ」


 “桃矢はお兄ちゃんなんだから、妹のお手本にならないと”、小さいころから両親に言われ続けた、呪言じゅごん

 その呪縛からも自由になりたかったのだが……。“桜花のお兄ちゃん”であることは、もはや俺の根幹を成してしまっているらしい。


「……もう寝ようぜ?」


「照れた?」


「うっさいわ!」


 そんな感じで、部屋の電気を消した。

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