第18話秋葉原デート3

 シャっと出てきた桜花。


「その姿は」



 身につけるは、茶色の英国令嬢風クラシックワンピース。


 そして、赤縁眼鏡に帽子。三つ編みに赤いリボン。



「かわいい〜!」


「文学少女!」


「完璧!」



 だから。後ろのお姉さんたち、なんなの?


(まぁ、言いたいことは分かる)


 よく少女漫画とかで地味な格好をした野暮ったい女の子が実は、超人気アイドルだったりすることがあるが……。

 俺からしてみれば……超人気アイドルが地味で野暮ったい格好をしても、隠せないのだ。そのオーラまでは。



 桜花の場合もそれは同じ。どんな服も桜花の魅力を制限できない。



「お前、マジですごいな」


 思わず感嘆した。


「普段と違うファッションがしたかったのです。……なんで?と聞いて下さいませ」


 俺の感嘆を得意気な雰囲気で受けて、胸を張って言う桜花。


「なんで?」


 律儀に聞いてやる俺。


「兄妹や幼馴染が恋愛対象になりにくいのも、長年連れ沿った夫婦の関係が冷めるのも、マンネリ化という現象のせいだからです。つまり、飽きるのですわ」



「マンネリ化ねぇ」


 


「ならば……マンネリ化を防ぐ為に常に新しい趣向を取り入れ続けるべき! このファッションのコンセプトは、“脱マンネリ化!”なのです」 

 

 それで、メイド服風の格好をして家事をするという発想に至ったわけか。確かに想像したら、なんかグッときたけど。




「「「おおっつつつーーー!」」」


 後ろのお姉さん達、合いの手いらんねん。


「なるほどねぇ」


 桜花の高説に全然興味を示さない俺。


「いや、他人事のような顔をされていますが……お兄様もやるのですよ」



「え?」


「おじいさまからいただいた2人分の入学祝いがあるのです!一人あたま……なんと……10万円」


「そんなの貰ってない!」


 今月のこづかい2万円と合わせて予算が12万円もあるだと? いや、今日だけで使い切るのは、アホだろう。だが、6万円くらいは使えるか?





「わたくしがお預かりしていたのですわ。おじい様いわく……お兄様に渡すとろくなことに使わないだろうから、と。使う時は、2人でよく吟味して有意義に使え、と」


「あの、クソじじい!」 


 12万円あったら、6万円を貯蓄する俺がろくな金の使い方をしないとは、どういうことだ?


 いや、半分を秋葉原デートで散財するのもどうなの、って感じだが。脱マンネリ化ってそんなに大事なことなの?? 




「と、いうわけでお兄様コーディネート大会開催ですわ!」




 このあと。10 万円の入ったご祝儀袋を渡され、無茶苦茶いろんな店に連れ回されて着せ替え人形にされる俺なのだった。ついでにスマホで「きゃー。素敵です、お兄様」とかって、カメラマンよろしく写真もいっぱいとられた。

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