俺の手で厨二病に染め上げた超ハイスペック妹から逃げたら、「【婚約破棄】ですか?」とデレ始めたのだが💦
ライデン
第1話入学式
「暖かな春の光に誘われて桜のつぼみも膨らみ始めた今日の良き日、私達は私立の名門・応習学院に入学出来たことを心より誇らしく思っております…」
体育館の壇上で、朗らかな声が響く。
俺は、その声を耳の端くらいで捉えながら本を読んでいた。
くしくも、読んでいる小説と同じシュチエーションでびっくりだ。
ていうか…我ながら、なんでこの小説を選んだのか…
その小説は、妹が「さすがは、お兄様です」と年子の兄を褒め称え恋したうことで有名なやつだ。
妹は兄を褒め称え、恋したうなどしない。
そして……【魔法】がおとぎ話の産物で実在しなくても、“兄よりも妹の方が優れていること”の方はこの世にありふれていることだろう。
♠️桃矢視点
なんとも言えない清楚なオーラ。
壇上にいるのは、とてつもない程の美少女なのだ。俺以外の人間は、魅入られたように壇上を眺めている。
一色桜花。年子で同じ学年の妹だ。
妹が入学生代表の挨拶をしてるのを素直に聞けるか? いや、別に妬んでいるわけではないのだが…
(あいつは、俺の平穏を乱す。だから…)
俺の名は、一色桃矢。
こいつも俺も、地元の静岡では名家とされる出だ。
なぜに妹までこの高校を受けて、首席で入学しているのか?
この妹、容姿端麗・才色兼備・スポーツ万能。おまけに、性格まで素直(?)で純粋(?)で面倒見までいい。家事もできるときてる。中庸とか平凡とかいう言葉をどこかに置き忘れできたとようなバグキャラなのだ。
(過ぎたるは、及ばざるがごとし!)
〝出る杭はうたれる〟。〝能ある鷹は爪をかくす〟。
15年の人生で俺はそれを学んだ。
(新入生代表の挨拶なんて、愚か者のすることさ)
知る人ぞ知る超名門校にいながら、真ん中より少し上くらいの順位。うん、調和の取れた美しい立ち位置! これぞ完璧なる調和。【
【中庸】こそ美しく至高という考えは、強がりでもなんでもない。だが……年子の妹より下の立ち位置というのは、なんかこう、歯がゆい。矛盾しているようだが、そういうものなんだから仕方ない。
結論、
(俺より目立つ妹のいない所で、平穏に暮らそう!)
ささやかな願いは、妹が何故か俺に内緒で俺と同じ高校を受験していて受かり、一緒に通うことになった時点で完膚なきまでに砕かれた。
そんなことを考えているうちに、我が妹は頭を下げて挨拶の紙を綺麗に畳んで楚々と階段を降り…当然のように俺の隣まで歩いてくる。
座りぎわ、俺の耳元で
「お兄様、こんな時に小説を読んでいらっしゃるなんて壇上で挨拶している方々に対して失礼です。帰ったら、お説教ですっ! というか…なんで新入生代表の挨拶がお兄様ではないのですかっ!?」
と囁く。
(いや。なんで、しれっと同居してるの)
まあ、親のマンションがこっちにあったし、3LDKだし。同じ学校に行くんだから一緒に住むのは当然といえば当然だろう。
(でも普通、親元を離れたら1人暮らしを謳歌したいと思うでしょ?)
そして新入生代表の挨拶なんて華やかなもの、俺に縁があるとでも?
真っ直ぐ家に帰る気を無くした俺は、妹をふりきって寄り道するにはどうすれば良いか考えを巡らせるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます