013 かくれんぼ

 かくれんぼという遊びがある。複数人の中から一人のおにを選び、そのほかの人がどこかに身をひそめる。おにが全員を発見することができればおにの勝ち、見つからなければおに以外の勝ちという遊びである。子供のころにやったことがある人も多いのではないだろうか。

 前述したとおり、かくれんぼには複数人必要である。やって楽しいかどうかはさておき、少なくとも隠れる側、探す側の二人は必要である。よく言われるひとりかくれんぼという遊び、もとい降霊術があるが、あの儀式であってもぬいぐるみが必要であるし、探す側として霊が降りてくるのだと理解しているので、人であるか否かはさておき、やはり探す側と隠れる側の二者が成立する。それゆえに、厳密には一人ではない。

 最近であるが、一人で行うかくれんぼというものが少しずつ広まってきているらしい。先述したひとりかくれんぼではなく、ひとりだけで完結する遊びなのだそうだ。遊びとして広まるだけであればさして問題ではないのだが、その実はというとやや問題がある遊びであることも知られているらしい。危険な遊びというものは時として若者の心をとらえるもので、危ないからこそやってみたいという心理が働くのだろうと思う。そして、準備の難易度が低いならなおさらのことであろう。なんといっても体一つあれば十分なのだ。

 手順も簡単である。まず出発地点を決める。次いで、隠れる場所を決める。この時、実際に身を隠す必要もなく、「自分は隠れているのだ」と言い聞かせるだけでも良いとのことだ。そして、いくつか数えた後に目を閉じて、出発地点から自分を探す自分を想像して、自分を探す。見つかれば安全に終了できるらしい。このように非常に単純であり、誰でも行うことができてしまうゆえに、実際にやってみる人が出るのだそうだ。

 ただ、先述したようにこの遊びにも問題点がある。その一つは、自分を見つけられなかった場合である。いわゆる自分を見失う、ということであり、自分の在り方を忘れてしまう場合がある。このかくれんぼに失敗した結果、次の日から性格が変わってしまった、などという話を聞くことがある。

 問題点はもう一つある。出発地点を玄関とし、家の中を一周してしまった場合である。よく知られるものではあるのだが、想像の中で家の中に入り、家を一周して出てくるまでに誰かに出会ってしまった場合、その家には霊がいるというものである。別の説では霊感を目覚めさせる儀式ともいわれる。意図してこれを行う分には霊を見つけるだけで終わるのだが、意図せず行ってしまった場合、かくれんぼの途中で不意に人、もとい霊に出会ってしまうことになる。出会うということは、相手側、つまり霊にも認知されてしまう恐れもある。ひどい場合には、霊に驚き自分を見失い、その隙に霊に憑かれてしまうことがあるのだ。

 ひとりかくれんぼほどはリスクも難易度も高くない遊びなのだが、やはり軽い気持ちで遊ぶものではないだろう。

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