超色覚が捉える〈世界〉

オッドアイの青年マコトは不思議な感覚の持ち主だ。彼はいわゆる色弱だが、その視界は常人とは異なる世界を捉えている。彼が撮る写真には、彼にしか撮れない魅力がある。同様に、マコトに師事する少女アーティも、超色覚という独自の視界を有している。彼らの捉える世界は、視覚中心主義と呼ばれる近代以降の社会においても異質の存在となり得るだろう。事実、そうなのだ。この物語は、彼らにしか視えないものが「確かにこの世界に存在する」と証すまでの道のりを辿るものとなるようだ。

デイドリーマーズ。トーキョーを滅ぼし、いまはパリを侵食している不可視の生態系との対峙が、この作品の主要なモチーフとなっている。視るものと視られるもの、視えるものと視えないものとの対比が幾重にも折り重なる。物語がどのように展開し、冒頭へと結びつくのか、固唾を呑んで見守りたい。

それにしても、視覚を主題とする作品なだけあって描写が鮮やか。まずは第一話、水没都市トーキョー。朽ち果てた都市と自然の絡みつきが見事に表現されている。そのまま引き込まれて読み進めれば、マコトとアーティの微笑ましいやり取り、軽快な個性に続いて、迫真のパルクールを拝むことができる。身体の躍動、流れゆく街並み、そして時間の伸縮が活写され、物語世界は四次元の迫力をもって読者の想像力を追いかけるだろう。大きな流れに身を委ねつつ、細部に目を凝らすのが楽しい作品だ。





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