第7話 戦闘開始
パキッ
「おん? 誰かいるのか?」
「だっ、誰かいるの!? 誰でもいいから助けて頂戴! お礼ならいくらでもするわ!」
馬車の中からそんな声が聞こえてきた。口ぶりからして若い女性の方なのだろう。しかも良いご身分の。別に俺には助けてやる義理も道理もない。それに追われている身だ。だから最善手はここから一目散に逃げることなのだが……
ここで逃げてしまえば本当に俺は人外になってしまう気がする。体が人ならざるものになってしまったのならば、せめて心は人間を保っていたい。
俺は体を引き止めようとする心を全力で振り払い、道に飛び出した。
「おいおい、本当に助けに来たのかよ。お前一人で? ヒーロー気取りなのかも知れないが、お前には無理だ。せいぜいあの世で逃げなかった自分を呪うことだな。死にやが、ブベッ」
ダラダラと喋ってくれている間に俺は顔面に全力パンチを食らわせた。これでまずは一人目、残りは……合わせて八人か。それぞれ武装しているが、今朝来た騎士団よりかはマシだろう。さっさと終わらせるか。
今の攻撃によって残りの盗賊たちは俺を警戒したようだ。取り囲む対象が馬車から俺へと移行している。以外にも統率はしっかりと取れているようだ。ならばそれを乱すしかないな。
俺は一番近くにいた敵に瞬時に詰め寄り思いっきり鳩尾をぶん殴ってやった。コレで二人目。味方が一瞬でやられていることに動揺している隙にもう一人に近づき、今度は武器を奪った。短剣、というよりダガーだな。
俺は一旦、森の中へと身を隠し、高速で移動した。三人目の背後へと周り、奪ったダガーで首を切った。この時点で敵はかなり戦意を喪失していた。ここからはもう戦わずとも勝てる、そう思った時だった。
「おいおい、こんな人間一人に負けんのかよ! お前ら〜、死ぬ気で戦え」
盗賊の中のリーダー格の男がそう言った途端、残りの四名がまるで命令されたロボットかのように瞬時に俺に向かって襲い掛かってきた。
俺は目を凝らし、先ずは手に持っていたダガーを顔面に向けて投擲し一人を行動不能にした。そして襲い掛かってくる敵に対してこちらから距離を詰め、その勢いを利用してもう一人の方へと投げ飛ばし一度に二人を行動不能にした。
最後の一人は普通に近づいて殴り飛ばした。
「ふぅ……」
やばい。俺強すぎだろ。頭で思い描いた馬鹿みたいな動きを寸分違わずに実行できてしまう。恐ろしい……この体が恐ろしいぞ。
落ち着け、まだ戦いは終わっていない。あと一人リーダー格が残っている。ソイツを倒すまでは気を抜いてはダメだ。
「ほう、人間にしてはやるようだな。だが、ここまでウチの奴らに対して暴れたんだ。しっかりとツケは払ってもらうぜ?」
なんでこうも悪党は喋りたがるんだろうな。俺はその間に先ほどのように近づき思いっきり殴った。
ガッ
しかし、俺の拳は敵の腕によってガードされてしまった。
「は?」
「お前の攻撃なんぞ効くものかよ! 大人しく寝てろ」
バゴッ
こちらの攻撃が効かないどころか、逆に俺が思いっきり殴り飛ばされてしまった。おいおい、俺人外なんですけど、どうなってるの?
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