第8話 人外対戦


 その後も俺の攻撃はガードされ続け、反撃を全て食らっていた。おかしい、おかしい。俺は人間じゃないのに。なんで人間相手に負けることが……


 あ、もしかしてコイツも憑依させてるのか?


 俺と同じ堕天使って可能性は低いだろうが、悪魔とかなら全然あり得そうだ。それに、もし悪魔が憑依しているのならば俺がこれだけ苦戦しているのも納得がいく。


 よし、そういうことならもっと集中しろ。敵も人間じゃないんだ、全力で行って良いんだ。目に力を込めて敵の動きを見て、そこからの反撃を最短距離で行


「クハッ!」


 つ、強い。


 そうだ、俺、人外じゃなくなって勘違いしてたけど、元々戦闘に関しては雑魚だったんだ。相手が人間だからゴリ押しでなんとかなっただけで、敵も同じ土俵だとこんなにも俺は無力なのか。


 俺は吹っ飛ばされている間にそんなことを考えた。世界がゆっくり見えるってこういうことだったんだな。思考速度があまりにも速くなることで相対的に遅く感じるのだ。


「人間にしちゃあ骨があったが、ここまでのようだな。ま、俺様に勝てる道理はねー」


 今思えば、この盗賊のリーダーは人間、人間と明らかに人外めいた発言をしていた。それにも気づけなかった俺の完敗だな。まあ、国の騎士団に捕まるよりかは、盗賊に殺された方が幾分かはマシだな。


『おい、諦めるのか?』


「へ?」


『相手に悪魔の力があるからって諦めるのかって聞いてんだ』


「おい、今まで寝てたんじゃないのか?」


『あっ、いやそれは……今起きた』


 絶対嘘だな、コレは。流石に人間の俺でも分かるぞ。


「諦めたくはないが、相手が相手だろう。俺に戦闘のセンスはないし、敵に俺と同じ力があるのならば、アイツが行った通り勝てる道理がない」


『はぁー、全くこれだから人間は。自分の取得した情報だけで物事を完結させ、自分で勝手に結論を出し、すぐ諦める。いつの時代もそうだよな、やってみなきゃ分からないし、そもそも自分の結論が仮説だとも思わない』


「は、何言ってるんだお前?」


『だーかーらー、お前が間違ってるって話だ。確かに敵は悪魔の力を使っているが、それは俺らと同じ状態ではない。それに、戦闘センスが無くても戦いには勝てる』


「そんなこと言ったってどうすれば良いんだよ」


「おい! さっきから何ブツブツ言ってやがる! 今更命乞いか? この俺様に刃向かった時点で貴様の死は確定してるんだよ! さっさと諦めてあの世に行きやがれ!」


 目の前の敵が俺に向かってダガーを振り下ろそうとしていた。まだ、世界はゆっくりと動いていた。


『じゃあ、運命共同体の俺様が勝ち方を教えてやる。今、お前の脳内に勝ち方を送ったからそれ通りに動け。コレは俺とも息を合わせないといけないからちゃんとやれよ?』


 ルシファーがそういうと確かに俺の脳内にマニュアルのようなものが送られ、俺はそれを一瞬で理解させられた。って、コレは合わせるのは俺じゃなくてお前だろ。まあ、良い、いくぞ?


「『天底テンテイ」』


 グシャッ


 俺が手を前に突き出し、振り下ろすと敵は何かに押し潰されるかのように、粉々になった。

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