第5話 騎士団の報告


「はぁ、はぁ、ご、ご報告があります」


 私は王様直属の騎士団の団長、本日は堕天使ルシファーと接触したと思われるギルド職員の連行、という任務が課せられている。


 そこまで難しい任務でもないため私は王都で実務をこなしていたのだが、


「おぉ、お前か。それで首尾の方は……って、それはどうした。何かあったのか?」


「はっ。堕天使ルシファーの逃亡に関与していると思われる小野翔太郎を今朝、冒険者ギルドにて発見いたしました。しかし、返り討ちに遭ってしまいました」


「返り討ちだと? 被害はどのくらい出ているのだ」


「私以外全滅致しました。


「ぜ、全滅!?」


「それが、どうやら堕天使を憑依させていたようでして……」


「なっ!? そ、それは本当か?」


 憑依、コレはとても恐ろしい現象である。偶に悪魔が人間に取り憑くと言う事件が発生することがあるのだが、それはそれはとても恐ろしいことになる。


 ただでさえ凶悪な悪魔が人間という依代と生命エネルギーを獲得することによって更に凶暴になるのだ。この状態になった悪魔を止めるのは並の騎士では到底不可能だろう。


「まさか、一晩でそのような事態になるとは……もう一度聞くが本当なのだろうな?」


「はい。あの力は一介のギルド職員から出せるものではないと思われます」


「そうか……それならば今回の敗走は仕方ないと言えるだろうな。むしろこの情報を持ち帰ってきてくれただけでも大きな成果だ。この件に関しては聖統騎士様のお力添えが必要となるかもしれん、宰相様には私から話しておこう。ゆっくり休んでくれ」


「か、かしこまりました」


 それにしても恐ろしいことになったな。このまま憑依された人間を捕らえることができなければ、この街が、いや国が崩壊するやもしれん。


 私は急いで宰相様の元へと駆けつけた。王様直属の騎士団よりも更に強い力を有している聖統騎士団を統括しているのはこの宰相様であるのだ。


「ほ、報告があります!」


「団長様ですか。落ち着いてください、話は聞いております」


「えっ?」


 もう宰相様はこのことについて知っておられるのか? 私が先ほど報告を受けたばかりだというのに、宰相様の耳が早いというのは本当のようだな。


「確かにこの件は騎士団の手には余るようです。ここからは聖統騎士団が引き継ぎます。貴方たちは以後、このことは内密に王様の護衛を行なってください」


「え、で、ですが。私の部下どももやられております。私たちにも反撃の機会を」


「その者よりも弱いから負けたのでしょう? ならばまた同じ結果が繰り返されるだけでしょう。貴方たちにできることはありません。通常業務に戻ってください」


「はっ。失礼いたしました」


 パタン


「ふぅ、全く意固地な方ですね。ですが、聖統騎士団だけでも万が一というものがあります。ここは七十位までを解放して様子を見てみるとしましょう。さて、ルシファー、貴方はどこまで抗うのですか?」

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